第三回リトバスリレーSS

ぷりてんだー @pret_m

肌寒い時期のとある深夜。西園美魚は自室で一人、本を読んでいた。普段校内で読む本とは異なる、薄くてサイズの大きな本。それをじっくりと読む美魚の頬は非常に緩んでいる。十分堪能したのか、ゆっくりと本を閉じ一息吐いた。「また、素晴らしい本との出会いがありました……」 #リトバスリレーSS

ぷりてんだー @pret_m

薄い本を人目に触れないところに片付け、時計を見る。足元にある段ボール箱内の未読の本に手を出したそうな様子であるが次の日も授業がある。「仕方ないですね、そろそろ寝ることにしましょう……ケホッ」美魚は軽い咳をしつつ部屋の電気を消し、ベッドで目を瞑ることにした…… #リトバスリレーSS

しま助feat.中村由香里 @sakemasu0235

意識が浮上する。まだ薄暗い部屋の天井を認識したと同時に、美魚は激しい頭痛を覚えた。「っ……！」うめき声を出しそうになったが、今度は酷く腫れ上がったであろう扁桃腺の疼きが声帯の震えを邪魔していた。体が熱い。心なしか呼吸も浅くなっているのが解る。　#リトバスリレーSS

ぷりてんだー @pret_m

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しま助feat.中村由香里 @sakemasu0235

(風邪……ですね)　体を起こそうと試みるが、起きたばかりであることも手伝って、思うように体が動かない。　（とりあえず薬……）転がるようにしてベッドから抜け出て、風邪薬を探す。（授業は休んだ方よさそうですね…）　水で強引に流し込むと、美魚は再び眠りに落ちた。　#リトバスリレーSS

月屋 @tsukiya0

(どうやら…ただの風邪ではないようです…）再び目覚めた時、美魚は全身に痛みを覚えた。（インフルエンザ…でしょうか。それにしても…）（まだだよ…）（！）（まだあの世界は終わってはいないんだよ、お姉ちゃん…）美魚は朦朧とした意識で枕元の携帯電話を手に取った。 #リトバスリレーSS

月屋 @tsukiya0

「西園さんっ！」理樹が部屋に飛び込んできた。「よく簡単に女子寮に入れましたね…」そんな冗談を言う余裕もなく、美魚は弱々しく理樹の顔を見上げるだけだった。「ひどい熱だ…一体…」「美鳥が…また…」「みどり…？それは」「虚構世界にいた、もうひとりの西園女史だ」 #リトバスリレーSS

ゆきゆき❄冬コミ12/31(日)東X54b @myyukiproject

「きょこうせかい…？」「ああ、理樹君はあまり覚えていないのだったな」唯湖が薄く笑う。「薄情だな。おねーさんとあんなことやこんなこともしたというのに…」む、という顔で美魚が睨む。「ふふ、熱に浮かされた西園女史も可愛いものだ。特に寝乱れて胸元が開いている様は…」 #リトバスリレーSS

ゆきゆき❄冬コミ12/31(日)東X54b @myyukiproject

(動けないのをいいことにこの人は…)恨みがましい目でサインを送ると「で、美鳥君が現れたんだね？」とようやく本題に入ってくれる。「それは実体を伴っていた？」ふるふる、と首を振る。「おわってない、と…」無理やり声を絞り出す。「それは…」唯湖が窓の外に目を向けた。 #リトバスリレーSS

ジオ @zeon_1st

理樹はすっかり話から置いてけぼりとなっていた。二人の会話をただ外野として聞くことしか出来ない。自分の力不足ならぬ記憶不足に少し苛立ちを覚えた。「…直枝さん？」神妙な面持ちで名を呼ぶ彼女に、理樹はいつもの様な顔つきへと戻した。その様子を細目で見る唯湖もいた。 #リトバスリレーSS

二色＠コミケ二日目東Ｘ52a @2syoku

（終わってない？　何が？　それに来ヶ谷さんの態度もおかしかった。弱ってる西園さんの手前、引き上げてきたけど……）寮の自室に戻り一人理樹は考え込む。こういう時に限って真人は留守だ。電気ストーブの熱で少し暑いくらいの部屋。ふと理樹が窓の外を見ると、雪が降っていた。#リトバスリレーSS

二色＠コミケ二日目東Ｘ52a @2syoku

瞬間、脳裏にフラッシュバックする光景。放送室。降るはずのない雪。ピアノ。涙。そして……美魚は日傘を持っていた。「い、今のは？」理樹は自分の中に湧き上がる、懐かしいような、それでいて思い出したくないような記憶に戸惑う。ちょうどその時、部屋のドアが、静かに開いた。#リトバスリレーSS

棗大和 @natsume_yamato

「理樹」「恭介？」ドアを開けて恭介が部屋に入ってくる。「どうしたの？」「遊びに来たんだが、真人がいないようだな」「うん、多分走りにでも行ってるんじゃないかな？」「そうか」「それよりも恭介、相談したいことがあるんだけど・・・」「何だ？」#リトバスリレーSS

メアナ @meana_hmb

「西園さんが弱っている。それなのに僕は見ているだけ･･･どうすればいいんだろうって思って。」俯向く僕に恭介は口を開く。「なんだ？そんなことで悩んでいるのか？」逆に問いかけられる。「単純なことじゃないんだよ･･･。」肩を震わせる僕に恭介はこう言った。#リトバスリレーSS

メアナ @meana_hmb

「お前はお前がしてやりたい事をしてやればいい。そうだろう？理樹。」当たり前の事を苛立ちのせいで忘れていた。「ありがとう恭介。もう大丈夫。」肩の震えはもう止まっていた。「そうか。」（考えているだけじゃ駄目だ･･･。）僕は寮の自室を後にする。#リトバスリレーSS

ぷりてんだー @pret_m

廊下を駆け抜け、寮から出て、急いで美魚の元へ向かう。答えはまだ見いだせていないが、今はとにかく美魚のためにできることをしたい、その一心で。しかし――どこまで走っても、薄暗く白い景色から女子寮が見えてこなかった。何もない空間を目前にして、ついに足を止めてしまう #リトバスリレーSS

ぷりてんだー @pret_m

雪に囲まれて進むべき道を見失った理樹の心は一層焦り、同時に不安も掻き立てられた。理解が追いつかないことばかりで心の整理がつかない。「いったい何が……？」無人の世界に放たれた言葉が誰かに届くことは……「閉じ込めちゃったの、私が♪」あった。理樹の背後に立つ人影に #リトバスリレーSS

ゆきゆき❄冬コミ12/31(日)東X54b @myyukiproject

「みどっ…」「どうしたの？理樹君」振り返るとそこには小毬が立っていた。「み…」(あれ？)「誰かと間違えてる？」小毬はにっこり笑って小首を傾げる。(いや、さっきの口調は小毬さんだっただろうか？今、僕は違う誰かを…)理樹は廊下と同じように靄のかかった頭を振った。 #リトバスリレーSS

ゆきゆき❄冬コミ12/31(日)東X54b @myyukiproject

「閉じ込めた、って…？」ぼんやりした頭でもさすがに聞き捨てならないと理樹は小毬に訊ねた。「私ね、理樹君のことが大好きなんだよ。なのにみおちゃんのところになんて行かないでほしいな」「えっ…いや、西園さんは病気なんだよ？好き嫌いの話じゃ…」「んっ…」唇が重なる。 #リトバスリレーSS

月屋 @tsukiya0

（こ…これは…）「美鳥っ！」「あはは、思い出してくれた？そうだよねえ。ここはもうあの時の世界だもの」小毬の顔が、美鳥に変わる。「西園さんの体は一体…」「この世界を維持するには、とても大きなエネルギーが必要なんだよ。美魚一人じゃ支えきれないくらいのね」#リトバスリレーSS

月屋 @tsukiya0

「じゃあ、このままだと西園さんは…」「どんどん生命力を奪われて、やがて…。でもね、この世界にいれば、現実の時間は経たないんだ。だから、ずっと二人でここにいればいいんだよ。あたしは、誰にでもなれるんだよ」「残念だが、そうはいかない。我々にも理樹君が必要なのだ」 #リトバスリレーSS

しま助feat.中村由香里 @sakemasu0235

「あなたは……！」「美鳥君、すまないが君の好きにはさせんよ」来ヶ谷さんが僕と美鳥の間に立ちふさがった。「どいてよっ！」「できない相談だな。どうしても、というならば……力ずくでくるがいい」「この……お邪魔虫ッ！！」　#リトバスリレーSS

しま助feat.中村由香里 @sakemasu0235

美鳥の攻撃を来ヶ谷さんは軽やかに受け流す。「なんでアンタが邪魔するのよ！」「邪魔とは心外だな。私はか弱いヒロインを悪者から守っているだけだが？」「アンタたちはもうとっくに諦めてるじゃない！まだ諦めてない私を邪魔しないでよ！！」　「ほう……？」　#リトバスリレーSS

二色＠コミケ二日目東Ｘ52a @2syoku

「諦めていないのは私もだッ！」来ヶ谷がハイキックを繰り出しながらそう叫んだ。間一髪、美鳥がそれを避ける。「諦めきれるものか！　私だって、他のメンバーだって、諦めてなどいない！　苦しんでいるのは自分だけだと思うな！」余りにもハイレベルな戦い。理樹は手が出せない。＃リトバスリレーSS

二色＠コミケ二日目東Ｘ52a @2syoku

それでも理樹は動いた。目の前で女の子が戦っている。いつの間にか二人共泣きながら。それを見過ごすほど彼は器用には出来てない。「やめるんだ！」理樹は二人の間に飛び込んだ。美鳥の拳と、来ヶ谷の脚を体で受け止める。衝撃が走った。そして……彼もまた、悲痛な顔をしていた。＃リトバスリレーSS