鳥に纏わる掌編～空想の街にて／冬の目覚め編

chi-suke @ChiKomiya

@asimox330 全く困ったもんだ。この酒が美味いのは俺も同感だが…まあのんびり楽しむさ、と鳥屋は帽子を取り上げる。代金をカウンターに置き、機嫌のいい囀りを響かせる籠を片手に戸口を潜る。 #空想の街 #オトトイ食堂 #鳥に纏わる掌編 ご馳走様。また来るよ。

莢豆（藤房） @asimox330

@ChiKomiya 酒についてはそこにいるネバの坊にお礼をいうんだね、こんな美味しいと慣れててもつい飲んじゃうよ。二日酔い、ならないといいねぇ #空想の街 #オトトイ食堂 #鳥に纏わる掌編 はいよ、これからもご贔屓に！お休みね。

chi-suke @ChiKomiya

食堂を出ようとしていた鳥屋は一度足を止めた。そして猫を抱える青年の後ろに歩み寄って肩を叩く。 #空想の街 #ルグッグ蜜蜂の巣箱 #オトトイ食堂 #鳥に纏わる掌編 @waikeita ――美味い酒をありがとう。やっぱりこいつまで気に入っちまったみたいだ。また飲ませてくれ、な。

和伊啓太 @waikeita

@ChiKomiya 「ありがとうございます。気に入ってもらえて僕も嬉しいです」ネバが笑い、褐色の肌から白い歯が覗く。 #空想の街 #ルグッグ蜜蜂の巣箱 #オトトイ食堂 #鳥に纏わる掌編

chi-suke @ChiKomiya

@waikeita あんたのところの酒に「雫」って名前がついたときのこと、よく覚えてるよ。愛嬌のある青年の笑顔に鳥屋は眼を細めてみせた。 #空想の街 #ルグッグ蜜蜂の巣箱 #オトトイ食堂 #鳥に纏わる掌編 しっかりな、と言い残し、ちらりと手を振って鳥屋は店を出た。

和伊啓太 @waikeita

@ChiKomiya 「ありがとうございます」ネバは店を去る鳥屋の背中に頭を下げた。 #空想の街 #ルグッグ蜜蜂の巣箱 #オトトイ食堂 #鳥に纏わる掌編

空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

おはようございます。ゆひ…こほん、雪です。ゆうべは随分冷えましたね。足元滑りますので通勤通学の際はお気をつけください。てぶくろはいてね。雪焼け対策もわすれずに。いってらっしゃい。（情報窓口　佐々木類）　#空想の街

chi-suke @ChiKomiya

何か軽いものが落ちるような音がして目が覚めた。それに続く慕わしげな囀りの声。眠い目を擦ると窓から薄明かりが差し込んでいる。布団に半身を突っ込んだまま鳥屋は大きく背伸びをした。――おはよう。枕元からちち、と返事が返って来た。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

chi-suke @ChiKomiya

この街で投宿するのは初めてだったが、この孔雀荘という宿は中々気に入った。ひんやりと冷えた畳を足の裏に感じながら窓へと歩み寄る。かたん、と軽い音を立てて開いた障子の向こうに、鳥屋は鮮やかな色を見た。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

chi-suke @ChiKomiya

それは一輪の椿の花だった。一輪、というより一枝という方が正しいのかもしれない。綺麗に手折られた椿の枝が、そこに落ちていた。鳥屋は辺りを見回す。見渡すかぎりに椿の木は一本も無い。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

chi-suke @ChiKomiya

――椿の花の落ちる音で目が覚める、っていう場面で始まる小説があったっけ。じっくり見てみれば霜枯れもしていない、まさに今花開いたばかりというような鮮やかな紅色の藪椿だ。ちち、と背後で鳥が鳴いた。蜜を欲しがっているのだと思い至る。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

chi-suke @ChiKomiya

籠の戸を開けて中にその枝を差し入れてやると、小さな鳥はまるで大きな鉢でも持つかのように椿の首を受けとった。嬉しそうな顔をして、そして蕊の中に顔を埋める。――おいおい、顔が花粉だらけになっちまうぞ。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

chi-suke @ChiKomiya

鳥屋は開けたままの窓の外を見遣る。椿がこの時期咲くことは別段珍しいことではない。けれど、椿は名前に春を持つ花のはずだ……。薄曇りの空からはちらちらと白いものが舞い落ちている。今日の天気を伝えるアナウンスの声が聞こえていた。#空想の街 #鳥に纏わる掌編

空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

花の目覚め、楽しんでいただけているでしょうか。春の気配に舞い散る花々と白の雪、どうか寒さに気を付けながら、見てみてくださいね。　#空想の街

空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

こんばんは！旅人の皆さん、花の目覚めはどうだったでしょうか？今年は雪と花がとても綺麗で、思わず見惚れちゃいました。花の目覚めは明日中続きます。お天気の方は夜の間に回復して、明日は晴れになるそうです。青空の下の花も楽しみですね！（情報窓口　堂坂みかこ）　#空想の街

chi-suke @ChiKomiya

空はもうすっかり夜の色になっていた。鳥屋は流石に泣き言をいいはじめた腹を抑える。その音を耳にしたらしい鳥が明るい声を上げた。笑われているのか何なのか。 @sarukotonagara #空想の街 #さるカフェ #鳥に纏わる掌編 ――すまない、ちょっといいかな？

さることながら @sarukotonagara

夕食の時分になり、店も混んできた。2日目でこれとは、大繁盛だ。花と海の目覚めの時期だし、旅人が多いせいもあるのだろう。いらっしゃいませ。お二人様ですね。ストーブの側のテーブルへどうぞ。何になさいますか。 #空想の街 #さるカフェ #鳥に纏わる掌編 @ChiKomiya

chi-suke @ChiKomiya

忙しいところ悪いね。俺には何か体が暖まるものを。香辛料の香りがするものがいいな。 #空想の街 #さるカフェ #鳥に纏わる掌編 @sarukotonagara それと、こいつに何か甘いものを頼む。花の蜜とかが好物なんだ――その言葉を肯定するような囀りの声。

さることながら @sarukotonagara

いえいえ、こちらこそバタバタしてまして。香辛料の温かいものと、お連れ様に甘いものですね。花の蜜でしたらいいのがあります。少々お待ち下さい。 #空想の街 #さるカフェ #鳥に纏わる掌編 @ChiKomiya さあ混んできた。楽しいぞ！こうなったら少々待たせるのもご愛嬌。

さることながら @sarukotonagara

お待たせいたしました。『清らかな囀り』のキノコをソテーし『手折った椿』スパイスを効かせたカレーです。お連れ様には、先程 #原料屋 さんから仕入れた、春に一番に気付いた蓮の花の蜜を。カステラもお口直しに。 #空想の街 #さるカフェ #鳥に纏わる掌編 @ChiKomiya

chi-suke @ChiKomiya

ありがとう、――その前に、と鳥籠の口を開けた鳥屋は花の蜜の器とカステラを中に入れてやる。全く、とんでもなく口を肥えさせちまったよ。 #空想の街 #さるカフェ #鳥に纏わる掌編 @sarukotonagara じゃ、頂きます。本当にお誂え向きのメニューだ。嬉しくなっちまうね！

chi-suke @ChiKomiya

一口目で口の中で何かが花開くような気がした。甘く、芳しい――それに軽やかな茸の味が重なる。こいつは素晴らしい。思わず顔が綻んだ。ニヤつきながら飯を食う姿は気恥ずかしいが、まあいいだろう。 @sarukotonagara #空想の街 #さるカフェ #鳥に纏わる掌編

さることながら @sarukotonagara

その蜜は、さすがに口が肥えるかもしれません。お連れ様のお口に合うのなら、ボトルにお入れしますよ、少しお持ちになりますか？なに、また仕入れますから。いい仕入先があるんですよ。 #空想の街 #さるカフェ @ChiKomiya #鳥に纏わる掌編 籠の中から清らかな囀りが聞こえた。

chi-suke @ChiKomiya

お、そいつは有り難い。何、ほんのちょっとで構わないよ。 @sarukotonagara #空想の街 #さるカフェ #鳥に纏わる掌編 蓮の蜜に感激しきりの鳥に、しっ、口に人差し指を当ててみせる。あちらさんの迷惑にならないようにな――とはいえ、小耳に挟んでしまうのが人の性だろう。