鳥に纏わる掌編～空想の街にて／冬の目覚め編
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chi-suke
@ChiKomiya
@rullino_s 海呼鳴ひとつと、こいつに丁度いいくらいの雨合羽を、と鳥屋は少年を指さす。少年はリヤカーに積まれた商品たちを興味深そうに眺めている。覆い布の隙間から鳥も顔を出して、興味深々と言った様子だ。 #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編 この街での商売は楽しかろうね。
2014-01-27 15:54:17
すなお＠創作
@rullino_s
親子、なんだろうか。「はい、雷呼鳴と雨合羽…これで合うかな。ちょっと羽織ってみてくれ」少年に合羽を着せかけようと近寄った時、布の隙間から覗く小さな目と目が合った。小鳥か鼠でも入っているのかと思ったが、「え。妖精さん？」 #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編 @ChiKomiya
2014-01-27 16:03:46
chi-suke
@ChiKomiya
@rullino_s いや、鳥だよ。これが俺の商品さ。こいつは中々賑やかな奴でね。商売の相方にどうだい？と笑う。 #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編 まあこいつも元は鳥なんだが……前街に来た時に放して行ったらこんなにでかくなっちまって。少年を指さして鳥屋は肩を竦めた。
2014-01-27 16:13:58
すなお＠創作
@rullino_s
「へえぇ、鳥」呟くと鳥籠の中で答えるようにちいと鳴いた。なるほど鳥だ。しかし商品というよりは旅一座、に見える。「俺は娘を貰うよりまず嫁さん探しですからねぇ。…坊主、雨合羽大きめのサイズにしとくな。まだでっかくなるんだろ」 @ChiKomiya #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 16:49:40
chi-suke
@ChiKomiya
@rullino_s はは、頑張って嫁さんを見つけるといい。世の中にはいい女がいるもんだからね。と言いながら鳥屋は代金を払う。少年は肩に掛けてもらった合羽が嬉しいらしく、手をばたばたさせている。それじゃ、いい商売ができるといいね。 #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 17:17:42
chi-suke
@ChiKomiya
波音の聞こえない海というものは不思議なものだと鳥屋は思う。どこまでも遠く凍りついた水面を、合羽を翻しながら少年が身軽に滑って遊んでいる。その頭の上に、籠から出してもらった鳥が留まってしきりに囀っていた。危ないからそろそろ止めろよ、と鳥屋は声をかけた。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 17:41:52
chi-suke
@ChiKomiya
厚い氷とはいえ鳥屋はその上に降りようとは思わない。その上を滑ることができるのは、少年がやはり見えない羽を持つ鳥だからなのだろう。ふと立ち止まった少年がしゃがみ込んで水面の下を窺っている。魚の影でもちらついたのかもしれない。鳥屋は海呼鳴を一つ齧る。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 17:47:07
chi-suke
@ChiKomiya
遠雷がだんだんと近くなる。鳥と少年がそわそわとし始めた。鳥屋もざわざわとする心を抑えながら、海上を眺め続ける。鳥が忙しなく囀ずり、少年が鳥屋にしがみつく。雷が落ちる一瞬、鳥屋は目を閉じた。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 21:24:58
空想の街公式アカウント
@humptyhumtpy
（海呼鳴の言い伝え、ご存じですか）（光っている水面に触れると旅路の安全が保障されるという言い伝え）（でも、気を付けて）（割れた氷の破片は鋭利）（鋭利）（無暗に触れたら怪我をしますよ） #空想の街
2014-01-27 18:24:16
chi-suke
@ChiKomiya
雷が落ちる前までは不安げだった鳥と少年は、今では移り行く光に目を奪われている。鳥屋はそっと水辺に近寄って、輝く水面に手を伸ばした。――っつ。そのまま指先で水に軽く触れる。これで帰りも安心だ。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 22:02:11
chi-suke
@ChiKomiya
鳥屋も少年も鳥も、ほぼ無言のまま時計塔まで戻ってきた。桜並木に飾られた写真達の中にある、見た顔や、見なかった顔達。その顔に微笑み返しながら、鳥屋は足を止める――で、お前はどうする？ #空想の街 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 23:40:34
chi-suke
@ChiKomiya
鳥籠からの答えは無い。代わりに少年が鳥籠をぎゅっと抱きしめた。鳥籠の口を開けてやると、おずおずと出てきた鳥が、鳥屋の顔を窺いながら、それでも少年の肩へと収まった。いいのか、という言葉を寸での所で呑み込む。雛が巣立ったなら干渉しない、それが鳥だろう。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 23:42:01
chi-suke
@ChiKomiya
少年の手から空の鳥籠を受け取ろうとした時、少年が鳥屋の顔を真直ぐに見上げた。その口が何かを紡ごうと――駄目だ。そいつは言っちゃいけない。言ったら俺は、お前らを置いては行けなくなっちまうから。鳥屋は肩を竦めて苦笑した。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 23:48:12
chi-suke
@ChiKomiya
桜並木の写真達を僅かに揺らし、時計台の方へ、そしてもっと高いところへ――姿が見えなくなった頃、澄んだ鳥の鳴き声が二声、重なって聞こえた。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 23:55:56
chi-suke
@ChiKomiya
そら、行きな。お前らはこの街の季節を歌う鳥になれ。軽く地を蹴った少年がばさりと合羽を翻し、鳥もまたふわりと羽ばたいた。少年は短い言葉を、鳥は明るい囀りを、それぞれがそれぞれの言葉で何かを鳥屋に囁き、楽しげに笑って、夜空へと舞い上がる。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編
2014-01-27 23:53:58
chi-suke
@ChiKomiya
鳥屋は暫く時計台の方を見つめていた。ややあって小さく息を吐く。――それじゃあ俺もお暇しよう。鳥籠の覆い布を解いて首にふわりと巻き、着物の包みを胸に抱いて、帽子を取り上げて軽く頭を下げる。ばさりと黒い二重廻しを翻したとき、そこに鳥屋の姿はなかった。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編
2014-01-28 00:04:01
空想の街公式アカウント
@humptyhumtpy
街は夢の中へ、夢はあなたの中へ、あなたは街の中へ。時計塔の街での５日間、本当にありがとうございました。 #空想の街
2014-01-28 00:01:29
chi-suke
@ChiKomiya
――今帰った。鳥屋は家の戸を開ける。そのまま廊下を奥に進んで、その先の部屋へと踏み入る。温室仕立ての部屋の中は温かいけれど暗い。寝ぼけたような鳥達の声が、一つ二つ、鳥屋を出迎えた。その闇の中に、こちらに背を向けて影がひとつ、立っている。 #鳥に纏わる掌編
2014-01-28 02:56:59
chi-suke
@ChiKomiya
そっと後ろから近付いて、細い肩に着物を着せかける。着物の中の白い花々に、雪が降り積もっては消えて行く。彼女の目は窓の外に降る雪へと注がれていた。――よく似合っているよ。着物の上から肩を抱く。ただいま。答えはないけれど、肩を抱く右手に、そっと白い指が添えられた。 #鳥に纏わる掌編
2014-01-28 02:59:08後書キ及覚書。
chi-suke
@ChiKomiya
開催の後に気付いて涙を呑んだ前二回を経て、初回以来の参加となった鳥屋でした。放した鳥との再会を軸に、沢山の方々と絡ませていただきました。最終日はバタバタしてリアルタイムとはいかず、締めでもいくつか書き落とした事があるのですが、とりあえずこれにて。 #空想の街後書き
2014-01-29 01:11:09
chi-suke
@ChiKomiya
前回にも勝って書くのも読むのも楽しい企画でした。参加された方々、コラボして下さった方々（色々失礼があったら申し訳ありません）、読んで下さった方々、そして運営の方々、本当にありがとうございました。また機会があれば空想の街を訪れたいと思っています。 #空想の街後書き
2014-01-29 01:13:19
chi-suke
@ChiKomiya
鳥屋周辺の一連の流れは、こちら→ http://t.co/ZqUS3kKS1J にまとめさせて頂きましたのでよろしかったら御覧下さい（街から帰った鳥屋のワンシーンを付加しております）。お疲れ様でした。それではまたお会いできることを祈りつつ… #空想の街後書き
2014-01-29 01:16:15
chi-suke
@ChiKomiya
そういえば元ネタでは「鳥には雄しかいない（一部例外）」ということにしてあったのですが、こちらではどっちにも取れる様な感じの方が相応しい気がしました。 #空想覚書
2014-01-25 23:09:30