【実話】ブルースと俺まとめ【誰得】

さいま @sayma_k

話をしよう。あれは今から５年前…いや６年前だったか…俺がニュージーランドに留学していた頃の話だ。彼には何通りかのあだ名があったが、最初にあった時は…そう。ブルースという名前だった。

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彼には香港人留学生の親友がいた。彼自身アジア人が大好きで、よくアジア人グループに突撃しては色んな奴に声をかけていたのだ。そう。俗にいう、面倒な奴だ。

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その学校はハリポタの寮のように縦割りでHRクラスが振り分けられていたのだが、たまたま同じクラスになったこの俺に、ブルースは容赦なく話しかけてきた。英語が他の留学生よりは出来ていた俺でも、現地のスピードやNZの訛りについていけず、最初は面倒な奴だとしか思わなかった。

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更に言えば俺は１１年生でブルースは１３年生…学年も違うので授業も重なる事がない。それでも彼は仲のいいカンボジア移民のリアも誘って取り巻き女子を追いやってまでHRの度に俺の隣に座り、色んな話をしてくる。移動時間はどんなに遠くても俺を見つけると「サイマ〜！！」と叫んで手を振ってた

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そんな事をしているうちに俺は彼らの英語スピードについていく事が出来る様になった。特にリアの英語は早口で何言ってるか意味が分からないとブルース自身も言っていたが、リアの推薦で俺は生徒会に入ったり、ブルース以外にも仲のいい友人は増えていった。

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丁度今くらいの時期だったか、他の留学生と先生との通訳を任されたり、異例の生徒会入りと何かと忙しくなったオレにリアとブルースは「日本の学校やめてNZに戻って来いよ」という様になった。

さいま @sayma_k

「それはできないよ。何より君たち今年卒業だろ。」と笑って誤摩化したが、正直な話、そうしたいのは山々だった。ステイ先の家族もオレを大切にしてくれたし、教師からも生徒会本部役員にならないかと言われたり、入学手続書を渡されたり。彼らの「それでも会う事は出来るよ」の言葉が切なかった

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彼らは卒業した。ブルースはバトミントン部の表彰を受け、リアは生徒会本部の感謝状やら学科首席賞を受け、オレは年度末優秀生徒賞を３教科分貰った。式典のあとに人込みをかき分けて２人をはじめ友人らがオレに駆け寄ってきてくれた時は泣くかと思った。

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式典のあとにも在校生は授業がある。卒業した２人は昼休みの時間をみて学校に遊びにきては俺を見つけてからかってくれた。そんな事している間にあっという間に俺は帰国の日を迎えた。

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その日は別に登校しなくてもいい日だったから、留学生棟は静まり返っていた。他の日本人留学生もみんな一時帰国でいなかった。俺は世話になった先生にお礼を言いたくて学校へ来て、誰もいない留学生棟で昼飯を食べていた。

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ガラスを叩く音がして振り向くとブルースがいて、慌てて教室を出た。ブルースとリアと、友人がみんな集まってた。「他の日本人に聞いたらサイマたち今日が最後だって聞いたから来たよ」と挨拶代わりにハグをされた。

さいま @sayma_k

他愛のない話をした。久々だった。卒業式典からすぐはよく遊びにきていた彼らだったが、大学入学準備もあって本当に久々に顔を合わせた。日本のアニメの話やNZ観光地での話、新しい大学の様子…それから一人の友人が「どうしてサイマにはチンコついてないの」と聞いてきた。ジェレミーだ。

さいま @sayma_k

ジェレミーはそのとき以前からよく問題発言をする奴だった…「サイマは俺の超好みなんだよねでも女の子だからな〜」俺はたびたび己の身の危険を感じたものだ。

さいま @sayma_k

話を元に戻そう。

さいま @sayma_k

時間は過ぎ、下校時刻になった。彼らにクラブに行こうと誘われたがそんな事をしたら退学騒ぎなので遠慮した。次々と去る友人たち。何人めかとのハグが終わり、ブルースに近づいた。

さいま @sayma_k

ブルースの瞳は限界水量領域に達していて「俺やっぱりサイマとサヨナラ(ココだけ何故か日本語)するのやだよ。また会いたいよ。みんなでまた遊びたいよ。帰ってきてよ。他のみんなとはまた会えるのにどうしてサイマにはもう会えないんだよ。」言い切った瞬間ぽろぽろと泣き出した。

さいま @sayma_k

リアが「サイマにはサイマの都合があるんだよサイマだって戻ってきたいけど出来ないって言ってただろ。」となだめた。普段クールで落ち着いているリアなのにその時は彼も泣いてた。俺も泣きそうだった。でもここで泣いたら本当に帰りたくなくなるという確信があった。耐えた。

さいま @sayma_k

「ずっと会えなくなる訳じゃないよ。お金貯めて遊びにくるからね。」と俺は言った。人形みたいにきれいな顔を涙と鼻水と何故かよだれで汚すに汚したブルースがこれまた品のいい黒のジャケットの袖で顔を拭いた。「俺たちもお金貯めて斉間に会いにいくからね。」ブルースのハグはすごく長かった。

さいま @sayma_k

「サイマの制服が君の涙と鼻水で汚れるんだけど」とリアに引きはがされたブルースは俺の両手をとって「サイマ、Keep'n touchだよ！俺もメールするからサイマもメールしてね。手紙も出すよ。」彼は見えなくなるまでずっと大きくてを降ってくれていた。

さいま @sayma_k

そして彼が見えなくなって俺はある事に気付いた。

さいま @sayma_k

「俺、ブルースの連絡先知らんし。ブルースにも俺の連絡先教えてねーし。」

さいま @sayma_k

彼とはあれ以来なんの接触もしていない。おしまい。