#完全ノープラン艦これ与太話 【ファックアップ・ザ・ヴェイル・オブ・イノセント・ホワイト】　#4

春魔解丼 @vespiking

「多聞丸、見てる？」鎮守府の窓を広げる。冷たい冬の夜風が頬を撫でた。「なれるかな。私も」大きく息を吸い、窓を閉じた。 #KZNPLN

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ノックの音がした。続いてガチャリと、ドアが開く音。小さな影。磯波だ。「飛龍さん……あの……」磯波は車椅子に小さく座り、口の中でなにかの音を咀嚼した。「コレ……飛龍さんに……渡す……」磯波を代弁するかのように、車椅子の後ろからもうひとつ影が現れる。弥生。 #KZNPLN

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弥生は飛龍に、小さな箱を手渡した。「あ、あの……今日ってその、2月14日ですし……ず、ずっと準備してて……弥生ちゃんと……あの……わあああ」磯波は泣き出した。 #KZNPLN

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「ひ、ひりゅうざんの、はなし、その、じまがぜざんの、ぜながで、つうしんで、わあああ」涙がぼたぼたと溢れる。「あああ、ひりゅうざん、しずんじゃって、わああ。それで、これ、わだぜないっで、わあああん。でも、わだぜで、あああ。よがっだ。わあああ」飛龍は磯波を抱き締めた。 #KZNPLN

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「ボーキサイト増量……媚薬成分な……大変強力……」弥生が恍惚の表情でつぶやいた。台無しだ。 #KZNPLN

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とりいそぎ弥生の顔面にカラテを叩き込んだ飛龍は、磯波の涙と鼻水をキモノの胸元で拭う。自分はまだ、弱い。まだ強くならないと。この子の為にも。「オウフ……絶頂」弥生の単装砲がしめやかに火を吹いた。 #KZNPLN

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「ほらよ、ちゃんと喰えよ」厨房から、木曾が大きな丼を抱えて出てくる。「ありがとう」北上は力なく、ずるずると音を立ててラーメンをすする。鼻水が丼に垂れそうになるのを、必死で拭いながら。#KZNPLN

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木曾はこの鎮守府において、『鎮守府最高戦力』の６隻に次ぐ武闘派である。おいそれと全軍出撃できぬ『最高戦力』に代わり、常に先陣を切るべき位置にいる。それがこのざまだ。木曾もまた、自身の弱さを思い知らされた。 #KZNPLN

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作戦名『ケッコンカッコカリ』は、鎮守府側の勝利で幕を閉じた。当初の目標は達成し、またこちらへの制裁も、おそらくは赤レンガのくだらぬハバツ争いに揉み消され、お咎め無しで終わるだろう。だが、それぞれの胸中には、言い知れぬ敗北感が沈殿した。 #KZNPLN

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飛龍は強い。だから、飛龍をあの椅子に座らせる。本当にそれでいいのか？私は……？北上と木曾の胸中は、無言のままに合致していた。強くなりたい。強くならねば。 #KZNPLN

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北上はラーメンを食べ終わると、執務室へ戻っていった。道中、磯波を連れた飛龍とすれ違う。２隻は言葉を交わさず、ただ前を見つめて歩いていく。自分の居場所へ。今座るべき椅子へ。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ファックアップ・ザ・ヴェイル・オブ・イノセント・ホワイト】終わり。 #KZNPLN