【実況】マーメイド・フロム・ブラックウォーター#2(発掘)
- karafuto1979
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「カ……カワイイヤッター……!」カキオは小さく呟いた。感情のこもらぬ声であるが、カキオの見開かれた目は血走り、歓喜に震えている。「ドーモ……カキオです、き、き君は、エト……エット……」「ドーモ、エトコです、カキオ=サン」オイランドロイドは笑顔を作った。
2011-06-12 16:20:17「ちち、ちがう、エトは……エット……」「ドーモ、エトコです。名前は最初に認識した後は変えられないです」オイランドロイドは意外にもはっきりとした声で告げた。「アイエエエ!」「カキオ=サン、ありがとうございます。これからよろしくお願いします」「こ……これから!」カキオは涙を流した。
2011-06-12 16:24:35キューンという稼働音を発し、オイランドロイドは狭い室内で立ち上がった。肘先が積み上げられたカセットテープ類に引っかかり、雪崩を起こす。「カキオ=サン、ドーゾ。激しく前後するドスエ?」エトコはカキオに手を伸ばそうとした。「しし、しない!しない!」カキオは後ずさった。「コワイ!」
2011-06-12 16:35:02カキオはエトコの意味不明な言葉が含む性的なニュアンスに仰天した。川に流されてきたオイランドロイドの残骸を復元する彼を突き動かしたのは、不思議な啓示めいた衝動であった。それは壁に貼ったたくさんのハニワ型ロケットにも似た憧れだった。彼はその後の事まで考えなかったのだ。
2011-06-12 16:49:58カキオのいびつで幼児じみた精神は、このオイランドロイドを実際扱いかねていた。カキオは思案した。「エ……エート、服だ……」「服ですね」エトコが繰り返した。「ウウ……ウウアア……」カキオはぎこちなくドアを開け、ガレージに出た。そして壁にかかった耐汚染ツナギを手に取った。
2011-06-12 18:32:38カキオは振り返り「アイエーエエエエ!」悲鳴をあげる。エトコは彼の後ろをそのままついてきていたのだ。部屋から出してしまった!「着、きて早く着て……」「これを着るんですね」エトコはツナギを受け取って素早く着た。「そう、ダイジョブ、そう……」カキオはガレージと外とへ忙しく目をやった。
2011-06-12 18:39:29もうすぐ兄がイオン銭湯から帰ってくる時間だ。あの足の踏み場のない部屋に、このオイランドロイドを閉じ込めておくわけにもいかない。どうする?「い、行こう、行こう」カキオは咄嗟に言い、ガレージを出た。「はい行きます」エトコは屈託なく返事をして彼について来る。どこかへ行こう。どこかへ。
2011-06-12 18:43:27オカンノン通りは24時間常に酔客や接待サラリマン、オイラン等でごった返す繁華街であったが、今この時ばかりは押し殺した沈黙が支配し、呑気に行き来する者も無い。「御観音」のアーチ状ネオン、「実際安い」「カメダ」「ヤンナルネ」といった看板の輝きだけが普段と変わらない眩しさだ。
2011-06-12 19:37:45住人は店舗のシャッターをしっかり閉め、ブラインドを下ろした窓から息を潜めて通りの様子を伺う。これから恐ろしい事が始まるのは間違いが無いからだ。
2011-06-12 19:39:31「御観音」アーチを挟み、通りの内外で二つのヤクザクランが対峙していた。アーチの内側に立つ列は「ヤバレカバレクラン」の旗をタケダ・シンゲンめいて掲げている。一方、外側から彼らを睨むの者らの旗は「シルバーナガレボシクラン」。
2011-06-12 19:46:07風体はどちらも似たようなものだ。それぞれ、数人のグレーターヤクザは背中にクラン守護神の刺繍の入った白いラメ・スーツを着、彼らを守るように立つレッサーヤクザ達は危険なスパイク・ブルゾンやPVCトラックスーツを着ている。手に手に持つのはハンマーや電磁ジュッテ、ドス等だ。コワイ!
2011-06-12 20:00:44「ザッケンナコラー!」シルバーナガレボシクランのレッサーヤクザが威嚇の叫び声を上げる。「スッゾオラー!」「ナンオラー!」「チェラッコラー!」ヤバレカバレクランのレッサーヤクザも負けずに叫び返す。ナムアミダブツ!まさに一触即発のエマージェント緊張!
2011-06-12 20:13:27「アッコラー!テメッコラー!」シルバーナガレボシクランのグレーターヤクザが一歩踏み出す。「とっとと明け渡せコラー!」ナムサン、当然ながらオカンノン通りの利権の話である!「スッゾコラー!」ヤバレカバレクランのグレーターヤクザがドスを振りかざす。「ガキのクランがコラー!」
2011-06-12 20:17:17