座礁艦隊その４　～朧登場～

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

そもそも送迎中に襲われるくらいパトロールがガバガバなのがおかしい。ロケットを幾つも担いだ怪しい集団、あるいはそれを隠していた場所。見つけられなかったのは警備部隊の責任じゃないのかしら。パトロールは試験小隊じゃない別部隊の担当のはず。ちゃんと仕事してるの？ #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

いけない。まただ。秘書艦の癖が抜けなくて、つい不備を指摘したくなる。今の私は分隊長。自分と二隻の面倒を見て、任務を成功させることだけを考えてればいい。 車列は全車ライトを点けていない。暗視かサーマル越しに見ているはず。私たちは夜目が利く。駆逐艦なめんな。 #座礁艦隊

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『道路左の丘の上に人影が見える。八人くらい』朧が真っ先に報告した。指揮車に伝える。 『"タコハチ"もサーマルで確認。小銃を持っている。101、五秒後に探照灯照射。102と103は直後に射撃開始』 タコハチとは機動戦闘車のコールサインだ。探照灯照射。囮になれ、だ。 #座礁艦隊

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私は速度を上げて隊から離れ、左手に持った探照灯を点灯、敵勢力へ照射する。突然の眩しさに怯む姿を700メートル先から確認。続いて後方から砲撃音。巻雲たちが撃ち始める。敵のいる場所周辺へ次々と着弾、爆炎が上がる。 「当たんないいいー！！」巻雲が叫ぶ。徒歩射撃の洗礼。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

遅れてこちらへ小銃弾が飛来する。この距離では当たらないし、被弾しても痒いだけ。対戦車火器は持っていないようだ。あちらは気にしなくてもいいだろう。前を向く。路上に異物。反射的に右手の機銃を発砲。爆発。即席爆弾！ 通信機へ怒鳴る。路上を右に迂回して！ #座礁艦隊

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風切り音。私の側を通過して、斜め後方の何処かへ着弾。RPG。サーマルが通らない岩か建物の影に隠れていたのか。発射点を特定。連装砲、対人榴弾、撃て。通常の砲弾よりも軽い音。短い発射速度で次々と飛んでゆく。着弾し炸裂。人影が倒れるのを見届ける。 #座礁艦隊

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探照灯を背中に戻し、妖精さんに操作を託す。瞳孔をめいっぱい開いて、動く、武器を持った人影へ見えた端から砲撃する。また路上に不自然な盛り上がり。機銃掃射。爆発し土くれが巻き上がる。真ん前の地面が不意に爆発、思わず足を止めてしまう。やばい。連装砲、対人散弾に切り替え。 #座礁艦隊

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完全に停止してしまった私へ、小銃弾が十字砲火で撃ち込まれる。何発かロケットが飛んでくる。あれらを優先的に迎撃。手持ちのと背部の連装機銃、対人散弾を装填した連装砲が火を吹いて、直撃コースをとっていた投射体を着弾前にすべて爆破。 #座礁艦隊

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そのまま制圧射撃へ移行、盛大に弾をばら撒く。 『101、そこで引き続き応戦せよ。本隊はルートBへ逸れて輸送を続行する』 了解。 舌打ちしながら射撃継続。再び走り出す。探照灯は点けたまま。見える敵をすべて撃つ。多い。そして用意がいい。情報が漏れていた？ #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

またロケットが飛んでくる。どんだけ撃つつもりなのよ。テロリストのくせに金待ちね。撃っても撃っても敵が出てくる。まるで待ち構えていたように。連装機銃の弾が切れた。対人散弾も残り少ない。無くなったら榴弾に切り替えるよう妖精さんに命令する。 #座礁艦隊

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長良の連装機銃をその場に置く。後で取りにくるから。近場の敵兵へダッシュ。瞬時におよそ32ノット、時速60キロまで加速、そのまま敵にラリアットをかます。首と胴体が引きちぎられ、私の半身を血飛沫が濡らす。速度を維持したまま大きくカーブを描いて旋回。小岩に足をかけジャンプ。 #座礁艦隊

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着地点にいるターバン野郎を踏みつける。腹部が破裂し内蔵がぶちまけられ、そりのように地面を滑走。赤いラインが砂地に引かれる。一瞬いつもの海上を航行している錯覚にとらわれる。肉そりから離れ、連装砲を撃ちながら次の敵兵へ。発射されるRPGを回避して、頭をひっつかみ押し倒す。 #座礁艦隊

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びしゃり、と脳漿が撒き散らされ敵兵は絶命する。ついに連装砲もカラになった。今倒した奴の小銃を拾う。使い方は知らないが、引き金を引けば弾は出るだろう。無くなったら次のを拾えばいい。残りが懲りずに立ち向かってくる。見上げた士気だ。かつて私に乗っていた日本男児といい勝負。 #座礁艦隊

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ふと、口を引き攣らせて笑みを浮かべている自分に気がつく。気分が高揚している。ああ、それは陸の上でも変わらないのか。深海棲艦に比べてとても弱い相手だけど、ここは戦場なんだ。連射された敵の小銃弾が全身を叩き、私を鼓舞する。次のRPGの発射を合図に、深く身を屈め、跳び掛る。 #座礁艦隊

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・・・・・・ #座礁艦隊

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「おつかれさーん」相手を脱力させるような声がかけられた。立ち尽くしていた私は何十分かぶりに身体の緊張を解き、振り返る。軽装甲機動車の射手席からオッサンが顔を出していた。 「見たところ無事なようでよかったよ。さ、帰ろう。乗った乗った」 #座礁艦隊

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後部の荷物スペースで私は長良の機銃に身体を預け、呼吸を整えた。車内は私から発せられる乾いた血の臭いで充満していたが、オッサンも他の人達もそれについては何も言わなかった。エアコンがフルパワーで唸っている。私は極力彼らから離れるようにつとめた。 #座礁艦隊

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「任務は成功したよ。死んだやつも出なかった。叢雲ちゃんたちのおかげだ」後部座席からわざわざこちらへ身を乗り出して、オッサンが言う。そう。それは良かったわ。 「帰ったらさァ、歓迎パーティやるからさ。独立機動試験小隊の団結式も兼ねてさ。パーっとやろうよ。パーティだけに」 #座礁艦隊

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そうね。 「着いたらそんな血だらけの服なんかさっさと着替えて、女の子らしくおめかししてさ。屈強な女性兵士だらけの小隊に舞い降りた三輪の花、って感じで」 オッサン。アンタ、本当ハッキリして欲しいんだけど。私たちをどうしたいわけ？ #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

私の強い口調に、オッサンはきょおとんとする。アンタは、私達艦娘をどういう風に扱いたいの。「うーん、どうしてそう、こだわるかなあ」こだわるわよ。調子狂うの。別に私はどっちだっていいのよ。どっちにも対応できます。多少ぶれても、スタンスがはっきりしてれば落ち着くわ。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

でもアンタは、兵器らしく扱ったかと思えば、歓迎会？ ブレすぎなのよ。私はいいけど、混乱する艦娘も出てくる。ただでさえ初めてづくしの陸上だもの。扱う人間がハッキリしないと、こっちもハッキリしない応答しか返せない。それじゃ危ない。いつか何か起きてからじゃ遅いのよ。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

私は歓迎会には出ません。他の二隻は分からないけど、私は出ない。いいわね。 「そりゃないよ。せっかく準備してたんだぜ」 アンタの勝手でしょうが。っていうか、この小隊は兵器としての私達を試すための部隊のはず。一番偉いアンタがそんなんでどうするの。この先が思いやられるわ。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

「それじゃ、なんで君たちは、人間の姿をしてるんだ。なぜ、軍艦のまま蘇ってこなかった」 その言葉に、私はいつに無くカチンと来た。知らないわよ、バカ。それだけぶつけると、私はうずくまって黙り込んだ。オッサンもそれ以上なにも言わず、車内は重い空気のまま走り続けた。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

歓迎会には私の発する雰囲気にそれぞれ何かを察したらしい巻雲と朧に無理矢理引っ張られ、参加させられた。背中が大きく開いた黒いドレスを着せられ、分隊長である手前壇上で当たり障りのないことをしゃべった後は、そこにいる隊員たちと少し話し、隙を見て抜け出して、自室へ戻った。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

<a ground fleet> #座礁艦隊