- ColorfulOberon
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罅割れた『場』は崩れ去り、内に在るもの諸共に、『根源』へ向かい流れ落つ。 『王』は『玉座』にあれかしと、同志の想い託されて、魂踏み越えひた進む。 #七色妖精
2014-03-15 03:19:08「私は、うまく、やれただろうか。」 辿り着いたる『玉座』より、微かな声が耳を掠める。波に溶けゆく砂像のように、風に吹かれた霧のように、微笑むそれは消え去った。 斯くして『王』は定まれり。 #七色妖精
2014-03-15 03:19:45其れと共に、知らなかった他の色の気配もまた鮮明に感じられる、気がした。 「何てんだっけ」 扉を一つ進み集った、赤青紫の三色を眺めて今一度。各々に語りては聞く様に。
2014-03-15 23:11:54「……あァ、そっか」 既に罅入り、還り往き始めた輪郭は、気付けば随分と薄れて居た。動かんとする無意識も、すべて自分と云う存在の認識を、忘れ去れぬ侭ゆえのもの。 だが、それが無いと判ってしまえば、それとして動けば良いのだ。
2014-03-15 23:12:36「じゅうにんといろ、だったっけ」 誰の記憶だっただろうか。ディーダイと云う妖精自身が、いつかの時に知ったものか。それとも、過去にまみえた人に教わったのだったか。 或いは場に集い、同じく還りつつある他の、いずれかの妖精の物だったかもしれない。
2014-03-15 23:13:11「誰も、同じ色を持つ奴は居ないンだとさ」 既に崩れ去った、多くの本を抱えた空の間を思い出す。 限られた時間の中で、交わした話を思い出す。 「なァ、オレ達の事みたいじゃねぇ?」
2014-03-15 23:13:38一足先、根源へと馴染む黄色の気配。 「イル?」 3色の集った場で、紫の彼女は、そう呼んで居たか。 彼の声すら聴けない侭。 己も彼も溶けきる前に、言葉らしいものを交わしてみたかった気がするけれど。 紫の彼女を信じたから、確かめる前に身を委ねたのだろうか。
2014-03-15 23:14:27「ヴィオラも、選んだぞ」 黄色の妖精が望んだ形と、等しいものかは判らない。 それでも彼女を信じ、彼女は其れを託されたのだろう。 彼は彼女の糧と、支えとなったのだろうか。互いの持ち合う補色の様に。
2014-03-15 23:15:22嗚呼。微かに、独白を聞き取った気がする。藍色の気配。 互いに独白めいていて、声をかけそびれてしまって。少し、口惜しかったけれど。 「お前も先を見てたから、あいつに託したんだろ。カンタレラ」 彼を、そう呼んだのは。嗚呼、そうだ。
2014-03-15 23:16:04「フィロメーナに」 藍色が選んだ少女は、全てを託された。 涙を拭って場に訪れた姿は、残った意識で咄嗟に「食べるか?」と果実を差し出したくなったけれど。 その印象すら、すぐ霞む様な意志と決意が彼女には有った。
2014-03-15 23:16:39「だから、謝ンなよ、シエル」 橙の果実を。喉を潤し、何れ芽吹く種と共に、少年が果実を託した青年。 進んだ先で、自分達を共々、その少女に託す事を選んだ。 「お前は、自分が選んだ相手の選択を信じた。それと同じで、オレだってお前の選択を信じたんだ。謝るな、誇れよ、シャルシエル」
2014-03-15 23:17:25「そうしたら、お前の選んだ答えは間違いなかったって、オレだって胸を張って言えるんだ」 熱も冷も無く均衡を重視する紫。例え道を違えようとも従属する黄色。親和性故に少し主張の弱い青。自我の激し過ぎる橙。昏々と安らぎと眠りを齎す藍。 それらを背負いし、情緒豊かな赤。
2014-03-15 23:18:19「全部を託してくれた、あの嬢ちゃんなら、大丈夫だって」 そうだろう? 笑って。 「だから頼むぜ、次の妖精王さん。それから、」 罅割れる世界を、振り返る。
2014-03-15 23:19:33「これまでの、妖精王様」 声が届くかは、知らねども。 「オレを、あの場所に通させてくれて有難う。シエルと話せて楽しかった。話せたのがシエルで良かった。あいつらの選択を、最後まで見守れて嬉しかった。アンタが世界を、保ってくれてたから、オレらが居られたんだ お疲れ様、そして」
2014-03-15 23:21:17初めの記憶はまだあどけなさを残した姿、数多の同胞と共に緊張した面持ちで選定の花を見つめている。 指先を小さなナイフで切り、そこから流れでた雫を花へと落とす。 選定の花は誰よりも深い藍に染まり、辺りからは祝福の声が響く。 ただそれを成した青年だけが憂いの表情を浮かべていた。
2014-03-15 23:25:47