「しかインベスと聖母のおたんじょうび」 しかインベスは今日もおちちをくれる聖母をさがしもとめてもりをさまよいます。聖母、聖母、どこにいらっしゃるのでしょう。しかインベスはおなかがすきました。それにとってもさびしいのです。しかインベスはそこらへんの木を聖母にみたててかたりかけます。
2014-03-20 19:12:56そこらへんの木は聖母ではないので、うんともすんともいいません。しかインベスはひとしきり木にはなすと、ますますさびしくなって、うおーん、うおーんとないてしまうのでした。そんなある日、しかインベスは、とおりすがりのざこインベスたちがうわさばなしをしているのをみみにしました。
2014-03-20 19:16:43「もりのおくにすんでいる、赤いふくをきたうつくしいにんげんが、たんじょうびのおいわいをしているらしいよ。」「たんじょうびというのはなんなんだい。」「うまれた日のことさ。」 しかインベスは、うわさになっているにんげんが、じぶんのはじめての聖母だとすぐにわかりました。
2014-03-20 19:18:38聖母のうまれた日。たんじょうび。なんてすてきなことだろう、としかインベスはおもいました。そして、じぶんもぜひ聖母をしゅくふくしたいとかんがえました。たんじょうびのおいわいというのは、なにをするものなのだろう。しかインベスはたんじょうびのおいわいをしたことがないので、わかりません。
2014-03-20 19:20:33そこで、しかインベスは森をおさめるメロンのせいれいのところへいきました。メロンのせいれいは、とってもものしりなので、おしえをこうことにしたのです。「メロンのせいれいさま、しかインベスにおしえていただきたいのです。おたんじょうびのおいわいというのは、なにをすればよいのでしょう。」
2014-03-20 19:23:47メロンのせいれいは、しかインベスのすがたをひとめ見るなり、「なんとみっともないすがただろう。まるはだかでたんじょうびのおいわいだと。」とあきれたこえをあげました。しかインベスはふくというものをきたことがありません。インベスはふくをきないいきものなのです。
2014-03-20 19:33:02「せいれいさま、しかインベスはふくをもっていません。どうすればいいでしょうか。」としかインベスがこまっていると、「しかたのないやつだ」といいながら、メロンのせいれいはメロンいろのリボンをしかインベスのくびにむすんでくれました。しかインベスはうまれてはじめておめかしをしました。
2014-03-20 19:35:27「せいそうといえば【ちょうネクタイ】だ。」とメロンのせいれいがいいました。さすが、メロンのせいれいはものしりです。しかインベスには「せいそう」のいみがわからなかったのですが、しっているよ、というかんじのかおをしておきました。
2014-03-20 19:38:49「せいれいさま、ありがとう。これなら聖母のおいわいにいけます。」としかインベスがふかぶかとあたまをさげると、「てぶらでいわいにいくつもりなのか。なんというぶれいものだ。」とメロンのせいれいがためいきをつきました。どうやらまだおいわいにはいけないようです。
2014-03-20 19:40:35「せいれいさま、しかインベスはどうすればよいのですか。はやくしないと、聖母のおいわいがおわってしまいます。」としかインベスがなきそうなこえをあげると、「なにかプレゼントをよういするのだ。」とせいれいがおしえました。「プレゼント、とはなんですか。」「そこからせつめいするのか。」
2014-03-20 19:42:22「おまえの聖母に、なにかさしあげるものをもっていくのだ。たとえば、じぶんがもらうとうれしいものはなんだ。」「しかインベスは、おちちがほしいです。」 メロンのせいれいは、こまったかおになって、しばらくかんがえこむと、「おちちはやめたほうがいい。」といいました。
2014-03-20 19:46:16「おちちはいけませんか。」としかインベスがくびをかしげると、せいれいが「それはじぶんのためにとっておけ。」といいました。たしかに、聖母におちちを「あげようにも、しかインベスはおちちをもっていません。「それでは、なにをプレゼントするのがよいですか。」「おちちいがいのものだ。」
2014-03-20 19:50:05おちちいがい、といわれても、むずかしいはなしです。しかインベスがとほうにくれてうつむくと、あしもとにかわいらしい花がさいていました。きいろくて、ちいさくて、聖母によくにあいそうです。「これならどうでしょうか。」 しかインベスがその花をつんでさしだすと、せいれいはうなずきました。
2014-03-20 19:52:22しかインベスはメロンのせいれいにふかぶかとあたまをさげてわかれると、聖母のくらす森のおくへむかいました。あんまりいそぐと花がこわれてしまいそうなので、はやあるきです。聖母はぼくのことをおぼえているだろうか。しかインベスはそわそわしました。
2014-03-20 19:55:23森のおくの白いいえが見えてきました。聖母がくらすいえです。ときどきこっそりようすをうかがいにきているので、しかインベスはまいごになりませんでした。大きなまどからいえのなかを見ると、聖母はなんにんかのにんげんにかこまれて、とてもたのしそうです。しかインベスはうれしくなりました。
2014-03-20 19:59:54いつもは聖母にみつからないようにしているのですが、きょうはおいわいにきたので、しかインベスはまどをこんこん、とつのでつつきました。おとにきがついた聖母は、しかインベスをひとめ見て目をまるくしました。はじめてあったときのことをおもいだして、しかインベスはなつかしくなりました。
2014-03-20 20:01:51ですが、聖母のそばにいたにんげんたちは、いえからとびだしてくると、しかインベスにむかっていしをなげはじめました。「され、ばけもの。」「ここはおまえのくるばしょじゃないぞ。」「なんてずうずうしいやつだ。」 いしがしかインベスのおでこにぶつかって、血がでました。
2014-03-20 20:04:21しかインベスはかなしみといたみで、なきだしました。うおーん、うおーん。すると、にんげんたちはますますいしをなげつけてきます。せっかくもってきた花がこわれてしまう、としかインベスがうずくまると、からだじゅうにたくさんたくさんいしがぶつかりました。
2014-03-20 20:07:37「やめてください。しかインベスはなにもしません。ただ聖母をしゅくふくしたいだけなのです。」としかインベスがないていると、「もうやめろ。」となつかしいこえがしました。聖母のこえです。聖母は、いしをなげるにんげんたちひとりひとりを、そのばにせいざさせました。
2014-03-20 20:11:16「これはおれのしりあいだ。おれにようじがあってきたんだろう。」と聖母がおっしゃるので、しかインベスはうれしくなりました。「聖母よ、わが聖母よ。しかインベスをおぼえていらっしゃるのですか。」 せいぼは、しかインベスのみじかいつのにさわると、「今日はなんのようだ。」とたずねました。
2014-03-20 20:16:37しかインベスは、もってきたきいろい花をさしだすと、「聖母のおいわいにまいりました。おたんじょうびおめでとうございます。」と、メロンのせいれいにおそわったばかりのしゅくふくのことばで聖母をいわいました。聖母は花をてにとると、「これはめずらしい。ニホンタンポポだ。」といいました。
2014-03-20 20:22:08花をもった聖母はなんともかれんで、しかインベスはとてもしあわせなきもちになりました。せいざしているにんげんたちも、聖母を見てうっとりしています。このひとたちもきっと、聖母におちちをいただきたいなかまなのだろう、としかインベスはおもいました。
2014-03-20 20:25:40聖母は、しかインベスの血だらけのおでこをハンカチでふきながら、「おまえはまだおちちがほしいのか。」とたねました。「はい、聖母のおちちがほしいのです。」としかインベスがこたえると、せいざしていたにんげんの、いちばんおおきいのが、こわいかおでとつぜんたちあがりました。
2014-03-20 20:31:51おおきなにんげんは、「おちちがほしいってなんだよ。」とほえるようなこえでいいました。しかインベスがこわくなってちいさくなると、聖母が「おまえにひとのことがいえるのか。」とおおきなにんげんをたしなめました。やっぱり聖母のおちちがほしいなかまのようです。むしろライバルです。
2014-03-20 20:35:17聖母は、「おちちはないが、チーズケーキをたべていくといい。うしのおちちでつくったケーキだぞ。」とシカインベスにいいました。聖母のおちちでないのはざんねんですが、聖母がケーキをくださったので、しかインベスはかんきわまってなきました。うおーん。うおーん。
2014-03-20 20:37:10