ヒフウ・イン・ナイトメア・フロム・リューグー #2 後半

0
@nezumi_a

ヒフウ・イン・ナイトメア・フロム・リューグ #2 【後半、というか残り】

2014-03-20 18:43:23
@nezumi_a

ZAAAAAP!ジゴクのイナズマめいた光線が発せられた!カメラのフラッシュだ!しかし、おとなしく撮影される蓮子ではない!「イヤーッ!」致命的撮影攻撃を予期していた蓮子は横へ走りこれを躱す!カメラのフラッシュは光、すなわち光速!アブナイ! 1

2014-03-20 18:45:03
@nezumi_a

ZAAAAAAAAP!照射される光線は消えず、そのまま舐めるように蓮子を追う!だが光すなわち光速の攻撃といえど、シャッターのタイミングさえ予期すれば、あとはカメラの動きを見ながら回避可能!「待ちなさい蓮子!どこへ行くつもり!」「ルールは着る事!撮影までは知った事じゃないわ!」2

2014-03-20 18:49:00
@nezumi_a

「ヌウウーッ!」メリーは猛然とその姿を追撃!撮影!「イヤーッ!」バストアップ撮影を狙ったメリーのシャッター!「イヤーッ!」蓮子は上体を反らせてこれを回避!豊満であれば仰け反るバストを撮影されてしまう所だが、蓮子は実際平坦、フレームには収まらぬ!サイオーホースめいた回避! 3

2014-03-20 18:52:17
@nezumi_a

「イヤーッ!」メリーは照準を下方へ!ブリッジ姿勢の蓮子の無防備な腹部を狙う!「イヤーッ!」蓮子はブリッジ姿勢から地を蹴り倒立!メリーのシャッターは振り上げた蓮子の足の裏に阻まれた!そのまま連続側転でファインダーから逃れる!ナムアミダブツ!蓮子のこの運動能力は一体!? 4

2014-03-20 18:56:40
@nezumi_a

これこそは人間が危機的状況に陥ると発揮するという、カジバ・フォースだとでもいうのか!?ZAP!ZAP!ZAP!ZAP!ZAP!シャッターを連続で切りながらメリーが追う!「往生際が悪いわよ!観念して撮影されなさい!」「諦めの悪さは私のチャームポイントよ!」「減らず口を!」 5

2014-03-20 18:59:27
@nezumi_a

蓮子の宣言にメリーは容赦なく蓮子の側転開脚シーンを狙う!連射!メモリ式のカメラにフィルム切れは無い!メリーはこの日の為に256エクサのメモリを搭載しているのだ!「イヤーッ!」蓮子は咄嗟に砂浜に伏せるとそのままゴロゴロと転がる!ワームムーブメント!寸前でメリーのシャッターを回避!6

2014-03-20 19:02:22
@nezumi_a

蓮子はゴロゴロ転がりから陸揚げマグロめいたジャンプをすると滑らかに着地。ジグザグに走りながらカメラの射界から逃走する!メリーもファインダーを覗きこんだまま砂浜を駆けこれを追走!古事記のパパラッチ天狗を思わせるジゴクめいた姿!コワイ! 7

2014-03-20 19:05:22
@nezumi_a

「イヤーッ!」 蓮子が跳躍! 「イヤーッ!」 メリーが撮影! 二人はビーチを駆けながら撮影と回避を繰り返す! 8

2014-03-20 19:06:51
@nezumi_a

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」 9

2014-03-20 19:08:39
@nezumi_a

「ハァーッ!ハァーッ!」蓮子の呼吸が荒くなってきた。手足が重くなり全身から汗が吹き出る。無理もない、超人どころか運動選手でもない蓮子が、瞬発的な全身運動をすればたちどころに動けなくなるのは必然。 10

2014-03-20 19:10:42
@nezumi_a

「ハァーッ!ハァーッ!」メリーの足元も覚束ない。高速で移動する被写体を追うためにファインダーを覗いたままで走り続けているのだ。こちらも半神的存在でもなければ直ぐにでもスタミナが尽きる事だろう。 11

2014-03-20 19:13:06
@nezumi_a

足場の悪い砂浜と照りつける太陽が二人の体力を急激に消耗させる。もはや蓮子にメリーのシャッターから逃れるだけの体力は残っていない。「ハァーッ、ハァーッ蓮子、覚悟しなさい……」ZAP!メリーは遂にシャッターを切った! 12

2014-03-20 19:16:10
@nezumi_a

「バッテリ切れドスエ」カメラの小型モニターには空の電池マークが点灯しているではないか!手ブレ補正や屋外撮影などのサポートを起動したまま長時間の追跡劇を演じた為に、バッテリーが切れたのだ!インガオホー!これでは撮影できない!「そんな……」沈黙したカメラ抱えたメリーが膝を付く。 13

2014-03-20 19:19:13
@nezumi_a

「どうやら天は私の味方をしたようね……」額の汗を拭いつつ蓮子が勝ち誇る。「……それは慢心よ!蓮子!イヤーッ」「グワーッ!」メリーが胸元から取り出した携帯が蓮子を捉える!シャッター音!ナムアミダブツ!蓮子がメリーから携帯を奪おうと掴み掛かった、その時である。14

2014-03-20 19:22:50
@nezumi_a

ウウーーウー! ウウーーウー!ビーチに設置されたサイレンが一斉に鳴り出した。「なに?」「何か事故でも?」二人が辺りを見回していると係員がやってきた。「アー、スミマセン風が出てキケンなのでこれからの遊泳はご遠慮頂けますか。よろしくお願いします」係員は次の客の元へと走り去った。15

2014-03-20 19:25:34
@nezumi_a

取り残された蓮子たちが見上げる空は確かに風が強い。先ほどまでの乾いた風とは違い、雨を予感させる重さを感じる。見る間に空が黒くなってきた。「自然環境の欠点ってやつかしら……」見上げる蓮子の鼻先に、ぽたりと水滴が落ちた。 16

2014-03-20 19:27:18
@nezumi_a

……十分後。「ちょっとこれどういう事よ」二人はホテルのロビーまで帰ってきた。外は真っ暗で、滝めいた勢いで雨が降っている。「蓮子の水着姿に/天も涙した」「変なハイクを詠まないでくれるかしら!」「蓮子は雨女だったのね、それもゲリラ豪雨女。略してゲリ女」「いやいや何かの間違いよ」17

2014-03-20 19:32:24
@nezumi_a

蓮子は動転しメリーの言葉も聞こえていない。出発前のオイラン天気予報でも快晴の予報だった。照る照るボンズもたくさん吊したのに、と突っ伏す蓮子。その言葉で、メリーは迎えに行った時の光景を思い出す。部屋の天井にびっしりと吊された白い何か、その光景の禍々しさに失禁しそうになった。18

2014-03-20 19:40:19
@nezumi_a

「私は何かブードゥーめいたメソッドかと」「まじないという点では同じよ」窓の外は雨粒が激しく当たり、まるで銃撃のような音を立てている。暗い空の下では濁った海が逆巻き、増水と強風で白い波を散らしている。「大時化だわ」遊泳禁止とショドーされたPVCノボリが風にはためいている。19

2014-03-20 19:43:59
@nezumi_a

「波乗りにはいいかもしれないわ」ぼんやりと呟く蓮子。「そんな趣味が?」視線を向けるメリー。「あるわけない」「ソウヨネー」会話が途切れ、二人ともにコブチャを啜る。「ネェ、暇だから見てこない?水着で出れば濡れても平気よ。帰ってからお風呂に入ればいいし」「気は確か?」 20

2014-03-20 19:48:27
@nezumi_a

「流れるプールって興味ある?」「却下よ、論外だわ」「何よ最後まで聞きなさいよ」「何を考えているかくらい解るわよ、とんだイディオットだわ」「かの有名なハイクの巨匠は『若さで苦労を買え』と」 21

2014-03-20 19:51:23
@nezumi_a

「無理よムリ!こんな海に入ろうだなんて狂気以外の何者でもないわよ、そもそも苦労でも何でもないじゃない!」それに、「その水着で外に出られるものならね」「アッ」Tシャツの下は未だシルバードラゴンのままだ。蓮子が寒さ以外の理由で震えだした。 22

2014-03-20 19:54:31
@nezumi_a

メリーが蓮子から視線を逸らすと、鄙びたロビーには僅かに人影があった。濡れ鼠となった中年男性が二人、チェックインの手続きをしているのが見える。白髪の大男と中肉中背の男。大男はアンダー出身者だろうか、不健康な青白い腕が見える。 23

2014-03-20 19:56:37
@nezumi_a

釣りの道具を持っているがカチグミには見えないし、カチグミなら隣のホテルへ行くだろう。隣のアロハシャツとハンチング帽の男も、遊びに来たという感じがしない。むしろ仕事の出張めいたアトモスフィアだ。「……」不意にハンチング帽の男と目があった。 24

2014-03-20 19:59:29