ひなあられと私

犬子 @27000hz

Ｏとひなあられ：季節感にうるさい職場で鎮座ましましていた、淡いピンク・白・緑の袋詰めのひなあられをＯに「土産」と渡すと不思議そうな顔をする。少し何事か考えていたようだが、おもむろに開封し、ざっと大皿に。そして３枚の取り分け皿をいそいそと持ってくる　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

「２枚でいいだろう？」と問うと「３枚、いるから」と。今日は特に心霊番組とかはなかったはず、と思っていると、そのけげんを察したのか「数える」と言う。「こないだの、緑、ちょっと」相変わらずぽつぽつと雨だれのように言うのをまとめると　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

先だっても同じ袋詰めのひなあられを元妻から貰ったのだと。その中でも緑色の抹茶味がＯのお気に召したらしいのだが、全体の割合としてはかなり少なかった、と。「だから、緑の、いっぱい見えるの、買うけど。数えると、いつも、ちょっと…」と悲しげに眉根を寄せて　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

統計を取れるだけとって、メーカーに理不尽であると訴えたいらしい。「緑の、お茶で、いちばん…」Ｏはあらゆることに頓着するという欲望が一部を除いて足りていないので喜ばしいというべきか、足りてるその一部の恨みは恐ろしいというべきか。そしてどこから手に入れたのか　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

カウンターも３つ出してきて、「ん」とＯにしてはやる気の出ている声を出した。手伝おうと一つカウンターを手にしようとしたら、ぺち、と叩かれる。「全部、分けてから、数える…から」叩いておきながら、そのあとでやわやわとなでられるのも、喜ぶべきなのか理不尽に思うべきなのか　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

随分大きな一袋を要領よく５分ほどで分け終わると、今度は「アイラップ」と書かれた小分けビニール袋の箱を台所から。そして片手にカウンターを構え、「いち、に、」と数え始める。そのころには小腹がすき始めて、ひとつ摘もうとして、またぺちり。「だめ。どっちも、ずる」#ひなあられと私

犬子 @27000hz

一心に数える姿は年齢相応でかわいらしいが、なにせ小腹と、他所にこれほどの集中を向けるのがなんだかいらただしくて、手を出しては叩かれ、というちいさな攻防を繰り返した末に「ああ」というがっかりした声を耳に入れた。「やっぱり、緑、ちょっと」#ひなあられと私

犬子 @27000hz

しおしおと肩を落としてちいさなメモ帳に数字を記すのを横目に、緑色の３倍ぐらいずつある白とピンクの山からひとつかみずつ奪って口に放りこむ。昔はどれもただの砂糖がけあられだったのに、カルピスといちごの味がついている。「これもまあまあうまいだろ？」と問えば　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

「でも、甘いから」と口ごもる。「お前、アホみたいに甘いものばっかり食べるだろ？」今はそれほどでもなくなったが、こいつはコンビニのお菓子だけで命を繋いでいたくらいの甘味偏食で、いちご味もカルピス味もおとくいのはずなのだが　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

それを退けて緑への固執に興味が湧いたので、緑の皿から一粒だけ。本当はこういうちまちましたものはがばっと一掴みしないと食べた気がしないのだが、この落胆ぶりを見れば自重もする。「…うまいな」何故あのファンシーな味に紛れているのかがわからない、上品な抹茶味だった　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

甘いものはそれほど必要と感じないが、これはくせになりそうな味わいだ。なるほど、と思って手を伸ばしかけて、Ｏの視線とぶつかり、慌てて手を引っ込めようとしたとき。「これなら、松島も、食べれるかな、って。おいしいかな、って」と消え入りそうな声でつぶやいた　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

「そうしたら、松島と、いっしょに、食べれるかな、って。でも、緑ちょっとだと、松島が、食べるの、ちょっと。いっしょも、ちょっと」だから、緑がいっぱい入っていないと、困るのだと。そう切れ切れに訴えて俯いた、銀色の髪をもしゃもしゃと掻き混ぜてやって　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

小分け袋の中身をそれぞれから、大皿に戻して掻き混ぜた。僅かに非難をのぞかせて見開かれた眼をするのに。「全部なくなるまで。一緒に喰ってやるから、これでいい」そう言いきる前に、勢いよく、少しいちごカルピスの匂いのする、細い身体が飛びついてきた　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

松島はまだ知らない。計数済みひなあられの袋が5、まだのものがあと20袋ほど、台所の戸棚に眠っていることを　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

今は黄色のレモン味とか、ピンクでも梅しそ味のものもあるとか、会社によってかなりチョイスも違うひなあられ。食べたことのないメーカーだとロシアン気分にもなれますよね　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

あと、小分けパッケージにお雛様やお内裏様や官女とか菱餅描いてあって、並べるとひな祭り気分という、世相にあった商品もあって楽しいです。これも中身ひなあられにすればいいのに（普通のあられアソートでした）#ひなあられと私

犬子 @27000hz

松島同僚の美夏さんは時期になると自宅にも雛人形（お内裏＆お雛）を飾る人ですが、事件に追われておおむね仕舞い忘れるのを親御さんに嘆かれていそうです　#ひなあられと私

犬子 @27000hz

@dearmous あ、カルピス味のひなあられ白は実在します。ただ喰ったの３年前なんで現存してるかは謎です。あと地方メーカー（割と私が気に入ってたので駆逐されてると思います）

犬子 @27000hz

@dearmous というか：松島が微妙でごめんなさい（本当にな）

犬子 @27000hz

忘れないうちにまとめ。描写はないけど、素地がＢＬ（ナイスミドル刑事とひきこもりティーンスナイパー）なので注意な。ちなみに彼らはＤＸ３用のＰＣとして考えられたもので、Ｏはデータが存在します（エンハイピュア）#ひなあられと私　＠前ツイート

犬子 @27000hz

松島のひとは私のＰＣではありません。実物は素敵なナイスミドルですのでお間違いないよう（私が書くといまいちあの魂きゅんきゅんさせる素敵さが出ない。無念）#ひなあられと私