田舎っ子宮福の話。高校までずっと一緒で、幼馴染みたいな。気付けばすきになってたし、なりゆきでキスもした。全部『ハジメテ』は、お前だ。ってゆー。
2014-03-26 21:58:03中学まで秋田っ子宮地の方がいいかなァ。高校は秀徳目指す為にすっげぇ勉強して、それを傍らで見てた健介。
2014-03-26 22:01:46入試の日。推薦とかAOとかの兼ね合いで、健介とは試験日違ってて。宮地が入試に行ってる間、ずっと健介は祈りっぱなし。隙あらば宮地の入試のこと考えて。うまくいきますようにって。んで、俺なに女子みてぇなことしてんだ・・って思いつつも、フとした時にまた祈って。その繰り返し。
2014-03-26 22:07:06入試終えて秋田に戻った宮地を、健介が迎えに行く。『キヨ・・あの、』なんて声かけていいか解らなくて、目線合わせない宮地にビビって、声が出なくなったり。
2014-03-26 22:10:19『自己採点では、ギリギリって感じだな・・もしかしたら悪い報告することになるかもなっ』って笑う宮地。でもちっさいころからずっと一緒だった健介には解る。宮司の中の諦める気持ち。それにちょっとイラッとしたり。『』
2014-03-26 22:13:29『受かるって一番信じてなきゃいけねぇお前が、なんで一番最初に諦めてんだよ』みたいなイラつきがあって。でも逆に自分も受験生だから、駄目だったかもしれないってゆー気持ちも解らなくもなくて。もやもやして。反発も同調も出来ない。
2014-03-26 22:17:20それでも時間は経つし、そんな気持ち抱えたままでも一緒にいることが当たり前な2人。残り僅かの通学も、下校も、一緒に。そんなある日、宮地の結果が届く。担任に呼ばれて職員室に行った宮地を、教室で1人で待つ健介。逢魔が時に、真っ赤に照らされた教室で1人で外をぼんやり眺める健介。
2014-03-26 22:22:33願うのは、良い知らせ。 一方で結果を聞いた宮地は、真っ赤に照らされた教室にぽつんと座って外を眺めてる健介を、廊下からこっそり見てた。その時見た健介の表情は、宮地が今までみたことのないもので。一瞬、別な誰かかと思うくらいに雰囲気が知らないヒトだった。
2014-03-26 22:25:19『健介、』 名前を呼ばれて、声のした方を見ると宮地がいて。『なに、お前いつから居たんだよ。戻ってたんなら声かけろよ、全然気付かなかった』『いや、たった今戻ったんだって』とか云い合って、沈黙。健介は結果聞きたいけど・・ってもだもだ。宮地はさっき見た健介の表情にもだもだ。会話が無い。
2014-03-26 22:33:08先に空間を震わせたのは、健介。『あの・・さ、』 健介がなにを云いたいのか、ちゃんと宮地には伝わるわけで。『なぁ健介・・俺、まじで頑張ったよな。死ぬほど努力したって、これ以上ないくらいやりきったって云っていいよな・・・』その言葉聞いて、健介は一瞬だけ目見開いて。それからぎゅって
2014-03-26 22:37:18瞳閉じて俯く。宮地が頑張ってたのを、宮地以外の人間の、誰よりも知ってたから。宮地の言葉に続く、言葉を想像出来てしまったから。『・・キヨは、がんばってた、すっげぇ努力してたし、俺、見てきたから・・部活終わった後も勉強して、休みの度に図書館かよって・・・だから・・・』泣きそうだった。
2014-03-26 22:41:41『・・・だよな・・。・・・・だから受かって当然だよな。』『うん、受かるなんて信じられ・・・あ?受かる?』『おう、ほれ見ろ』宮地の両手によって広げられた紙には、合格の文字。さっきまでのお通夜展開は何だったんだよレベルでドヤ顔キメる宮地。まじお前一回死んでこい。
2014-03-26 22:44:56そんなん思いつつも宮地のドヤ顔見て、じわじわ合格したことを喜びとして実感する健介。ぶっちゃけ本人より喜びようが激しい。多分この時の健介、すげぇ可愛い顔で笑ってる。
2014-03-26 22:48:15合格通知が来て教室で2人で喜び合って。一緒に帰って。この日、きっと2人はまた一緒に『ハジメテ』を迎える。おめでとう、って云って。ありがとう、って返して。良かったな、って云って。ありがとう、って返して。 疲れ果てて眠る寸前、耳に届く。『これからは・・離れることになるんだな』
2014-03-26 23:04:07それからの数週間、時間の許す限り一緒にいる2人。今迄だって産まれてからずっと一緒だったのに、それよりももっと一緒。手を繋いで、唇を繋いで、目線を繋いで、額を繋いで。身体を繋げた。心を繋げた。絆が繋がった。
2014-03-26 23:09:31会話で、これからの未来に期待して。心で、来たるべき未来を惜しんだ。2人だけで居る時間はもう、世界に自分たちしかいないんだって思えてくるくらい静かで、湿気ていて、甘やかで、絶望的なくらい現実じみていた。
2014-03-26 23:15:33別れの日。 駅のホームまで宮地を送りにくる健介。 いつもより会話は少ない。 『部屋、見に行ったんだろ?どんな感じ?』 『いい感じ。駅からも近めだし』 『そっか・・いいな、一人暮らし』 『遊びに来いよ』 『あー、うん』
2014-03-27 03:12:42途切れる会話、離れるまでに縮まる時間。 『都会か~・・前にテレビでやってたんだよな・・』 『なに、ほしいもんでもあったわけ?』 『・・・あー、うん』 『欲しいもんあるなら送るけど』 『・・・うん』
2014-03-27 03:12:56そんなもの、存在しなかった。 ただ、テレビで見ただけ。 都会に出た田舎育ちの女の子が、変わっていくサマを。大人しい風貌の少女が、ギラギラとしたネオンをバックに、派手で豪奢な女へと変わっていくサマを。
2014-03-27 03:13:26宮地が秋田を離れて、半年。 連絡はとる。メールもするし、電話もする。 お互い高校で新しい友達が増えたこと、部活が中学に比べ更に忙しくなったこと。 総て知らせるのは電子端末を介してだった。
2014-03-27 03:49:30電話越しの健介の声に、寂しさを感じた。 ないてる、そう思った。 それでも俺は秋田に帰る時間をとってやれない。
2014-03-27 03:50:58部活の無かった午後。クラスメイトと遊びに出た先で、小さな露店を見つける。『あ、これクラスの女子が騒いでたやつじゃね?』『は?』『あーそうそう、恋愛が長続きするとかゆージンクスだろ?』くだらねぇ、とは思いつつ目が離せない。安くさい指輪。透明な、玩具の指輪。そこに一筋だけ赤いライン。
2014-03-27 04:01:40まるで、赤い糸でも埋め込まれたようなそのデザインに、意識が集中した。想い、描いたのは。
2014-03-27 04:04:00宮地から、小さな荷物が届いた。誰もいない部屋で1人、それをあける。透明な玩具のリング。薬指にはめてみて、泪が出た。(あー、あいつはこのまま変わっちまうのかな・・)
2014-03-27 04:18:00