- kaikinotane
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「少し前の話なんですが、駅で変なのに出くわしたんですよね。」 そう言葉を切り出し、岩村さんがその時の話を語った。 その日は、書類の不備のせいで遅くまで残業をするハメになってしまい、業務を終え時計に目をやると、終電ギリギリの時刻になっていた。
2014-04-08 20:26:51終電を逃すまいと駅まで駆け足で向かい、どうにか電車が来る前にホームへと辿り着き、フゥっと一息着いて呼吸を整える。 ホームには自分以外の人間が見当たらず、閑散としており何とも不気味な雰囲気だ。
2014-04-08 20:27:25ホームには自分以外の人間が見当たらず、閑散としており何とも不気味な雰囲気だ。 「遅い時間と言え、自分一人しか居ないのも、珍しいものだなぁ。」 そんな事を考えながらホームのベンチへ腰を掛け、終電を待つ事にした。
2014-04-08 20:27:52少しして、 『プワー、ガタンガタン、ガタンガタン。』 警笛と走行音らしきモノが聞こえてきた。 電車が来たのか? そう思ったのだが、何かおかしい。 その聞こえてきた音がおかしい。
2014-04-08 20:29:39それは明らかに人が口で、 『プワー、ガタンガタン、ガタンガタン。』 と擬音を発している様にしか聞こえないのだ。
2014-04-08 20:30:10一体、何なのかとホームから身を乗り出し、音が聞こえる方角へと視線を向けてみた。 線路の上を人間が縦一列になり、こちらへと向かってくる。 呆然とその様子見ていると、その列はホームに入ってきて、目の前で停止した。 列の先頭と最後尾に、駅員の制服を着た顔色の悪い男が立っている。
2014-04-08 20:30:25その2人に挟まれるように、顔に生気の無い男女が様々な格好をし、俯いて立っていた。 更によく見ると、列の全員が輪になったロープのようなモノを掴んでおり、まるで列車ごっこをしているかのようである。
2014-04-08 20:30:56「うわぁ、変な奴等だな、気味悪いな。」 などと、しかめ面で見ていると、先頭の運転手だと思われる男がこっちに顔向け、 「乗りますか……?」 低く抑揚の無い声で話しかけられた事に、何とも言い様のない薄気味悪さを感じ、 「いえ……。」 と、首を横に振りながら答えると、運転手の男は、
2014-04-08 20:31:38「そうですか……? またのご利用をお待ちしております……。出発進行。」 そう言うと、その列車は発進して闇夜へと消えて行った。
2014-04-08 20:31:57背筋に冷たいものを感じながら、一人ホームで立ち尽くして居ると、駅のアナウンスが流れて終電がホームへと入って来たので、その電車に慌てて飛び乗り、自宅へと戻った。
2014-04-08 20:32:20それっきり、あの列車に出会う事は無かったそうなのだが、 「もし、あの時アレに乗っていたら、どうなっていたんでしょね…。」 岩村さんは、顔をしかめながら話を終えた。
2014-04-08 20:32:33