野安ゆきおさんのアナと雪の女王論(若干ネタバレあり)

ゲーム評論で有名な野安ゆきおさんがアカウントを復活させて、アナと雪の女王について面白いつぶやきをしていたのでまとめました。 ミュージカルアニメ入門にして評論家殺しとは面白い視点です。
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アカウント復活宣言とちょっとした解説


野安ゆきお @noyasuyukio

唐突に休眠状態を終えて、アカウントを復活させることにしました。

2014-05-13 01:41:02
野安ゆきお @noyasuyukio

テーマごとにハッシュタグをつけて検索性を上げつつ、ひとつのテーマを連続でツイートしていきます。「ブログのようにTwitterを使う」みたいな感じ。ハッシュタグの使い方としては異例かもしれませんが、ご容赦を。では、最初のテーマです。

2014-05-13 01:42:24

本編はここから

野安ゆきお @noyasuyukio

「アナと雪の女王」を観た。素晴らしい映画だった。これを越えるミュージカル映画は、しばらく作られないと思う。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:42:46
野安ゆきお @noyasuyukio

休日の昼に観たこともあり、劇場内には小さな子供たちの姿があった。なのに映画の最中、まったく飽きる様子がなかった。ぐずつく姿がなかった。「これ、どうなってるの?」と母親に尋ねたりする声も、まったく聞こえなかった。これは、とんでもなく凄いこと。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:43:07
野安ゆきお @noyasuyukio

子供たちを一瞬たりとも飽きさせず、声を出すのも忘れるほどに集中させるというのは、奇跡的なまでのクォリティーを持つコンテンツだけが到達する領域。この一点をもってしても、「アナと雪の女王」は歴史的な大傑作だと断言していい。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:43:21
野安ゆきお @noyasuyukio

そもそも、ミュージカルという娯楽には根本的な欠点がある。これが西洋ならではの伝統文化だということだ。オペラなどを源流とする、「登場人物が、いきなり歌う」という表現技法が脈々と続いている文化圏だからこそ成立する、きわめて独特の表現形式だといえる。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:43:37
野安ゆきお @noyasuyukio

よく考えてみると、登場人物が、いきなり過剰な演技とともに歌い出したら、それはギャグみたいなもんだしね。「これを好きな人がいるのはわかるけど、自分は、どうも素直に楽しめないなー」みたいな感覚になる人も多いわけ。違和感を感じずにはいられないというか。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:43:51
野安ゆきお @noyasuyukio

とりわけ、「男女が出会って、いきなり恋に落ちて、ともに踊り、声を合わせて歌う」などというシーンがあると、違和感はMAXに到達する。そんなシーンは荒唐無稽すぎるだろ! いきなり踊るなよ! みたいに思ってしまう人は、たくさんいるわけです。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:44:02
野安ゆきお @noyasuyukio

「アナと雪の女王」に話を戻す。この映画の凄さは、そういった「ミュージカルが発生させがちな違和感」を、きわめて丁寧に、手間暇かけて取り除いていることにある。そこにこそ、この映画がヒットしている(日本で大衆に受け入れられた)理由があるのです。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:44:15
野安ゆきお @noyasuyukio

冒頭。労働者たちが鋸(のこぎり)や鉈(なた)を振るうリズムに合わせ、労働歌を歌うところから映画は始まる。こうして肉体労働者が歌うのは、世界中で幅広く見られる文化。こうして、人々が日々の生活の中で自然に歌を口ずさむ様子を描くところから、この映画は幕を開ける。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:44:27
野安ゆきお @noyasuyukio

二曲目。幼いアナが姉に問いかける「雪だるまつくろう」。幼い子が「一緒に遊ぼうよ」という思いを口ずさむ歌だ。幼い子が、ひとり遊びの中で、発する言葉にメロディーをつけ、歌にしてしまうのも、よくある光景。人が自然に歌を歌う様子が、再び提示されている。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:44:36
野安ゆきお @noyasuyukio

じつは、この3分ちょいの「雪だるまつくろう」こそが、ディズニーがかけた最大の魔法。歌の中で、一気に10数年の時の流れる。最初、これは「小さな女の子のひとり遊びのシーン」なんだけど、いつしか「大人になったアナが自分の心情を歌っているシーン」に変化している。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:44:53
野安ゆきお @noyasuyukio

こうして、幼少期から大人になるまでを、なめらかに一曲の中に収めているから、歌の最後に「成長したアナが、自分の気持ちを音楽に乗せて歌う」シーンになっていても、観客の心の中には、そのシーンに対する違和感が、まるで生まれないんだよね。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:45:03
野安ゆきお @noyasuyukio

こうすることで、「登場人物たちが、自分の思いを歌う」というミュージカルならではの表現技法が、観客の胸に生み落としてしまうかもしれない違和感を、鮮やかなまでに消してるのね。ほんと、これこそが、この映画の中でディズニーがかけた、とびきりの魔法だと思う。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:45:15
野安ゆきお @noyasuyukio

ディズニーの魔法は続く。三曲目の「生まれてはじめて」。主人公・アナが、いろいろな出会いを予感し、その喜びを口にする歌。アナは「出会いがあるかも」「こんな恋をしたい」「いっしょに踊りたい」といった妄想を(幼いころのひとり遊びの延長のように)歌ってみせる。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:45:24
野安ゆきお @noyasuyukio

この曲を聴き終えた時点で、ああ、アナという女性なら、いきなり素敵な出会いがあれば、一緒に歌うんだろうなぁ。いっしょに踊るんだろうなぁ。そんな予感が、ちゃんと観客の心の中に整っていくんだよね。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:45:35
野安ゆきお @noyasuyukio

そして四曲目。男女の出会いを歌う典型的なミュージカル楽曲「とびら開けて」。あまりにもベタベタのミュージカル・ナンバーとともに、アナが瞬く間に恋に落ちていく様子が描かれるけれど、見ている人は、もう、そこに違和感を感じなくなっている、という仕掛け。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:45:45
野安ゆきお @noyasuyukio

もし序盤の三曲がないまま、「とびら開けて」のようなミュージカル・ナンバーが流れたら、わたしたちは、「そうそう。ミュージカルって、男女がいきなり歌い出すもんだよな(笑)」みたいな醒めた気持ちを心のどこかで持ちながら、その曲を聴いていたと思うよ。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:45:58
野安ゆきお @noyasuyukio

でも「アナと雪の女王」の製作者は、ひとつずつステップを踏むように、観客をミュージカルの世界へと導いていった。だから、わたしたちは違和感を感じなかった。ここまで丁寧な「ミュージカルのチュートリアル」を用意している映画は、これが、たぶん史上初だと思う。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:46:11
野安ゆきお @noyasuyukio

このチュートリアルを経験し、誰もがミュージカルの楽しみ方を理解できたところで、ここぞとばかりに流れるのが、映画内の最高傑作「Let it Go」。だからこの曲は、どすん! とストレートに心に響く。この曲順の完璧さこそが、この映画が大傑作である理由のひとつ。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:46:31
野安ゆきお @noyasuyukio

となると、これは「評論家殺し」の映画でとも言える。じつは「ちゃんとしたチュートリアルがない作品」ほど、評論ってのは簡単なんです。ほら、この作品は 、こうやって見ればいいんですよ! すると面白さが理解できるでしょ? と解 説する余地が、そこに生まれるから。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:46:59
野安ゆきお @noyasuyukio

なにしろ「わかるやつだけ、凄さがわかる!」という作品は、評論家の大好物だからね。そういう作品をネタに、わからない人に向けて「ほら、ここが凄いんだよ」と指摘するだけで、それは優れた評論になる。評論というのは、つまりは「面白さの翻訳」のことだから。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:47:44
野安ゆきお @noyasuyukio

だけど「アナと雪の女王」は、そういった評論を拒絶する。高品質で、丁寧で、隙のないチュートリアルがあるから、誰もが「ミュージカル映画は、どのように楽しめばいいのか」がわかる。「素直に歌と映像を堪能すればいい」と理解できちゃう。それこそ、小さな子供にいたるまで。#アナと雪の女王論野安

2014-05-13 01:48:11