ドラゴン長門シリーズ【その2・ビスマルク編Ⅰ】

BLITZ @Silver_Naught

彼女はいったい何に対して勝利を宣言したのだ？長門の攻撃に関してか？それとも…？ 提督がそんな思考を巡らせているのとは裏腹に、長門は不敵な笑みを浮かべている。 長門「…ふふふ…そうだな、そうこなくては面白くない…」 一歩、また一歩とゆっくりビスマルクに近づいていく。 #ドラゴン長門

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長門「私たちと提督を侮辱し、そして私にここまで本気にさせたのだ…もう謝っても許さんぞ…」 Bis「御託はいいって言ってんでしょ。お喋りが好きな化物蜥蜴ね」 長門「ぬかせ」 長門の背中に生えている両翼がはためくのと同時に、ビスマルクの両翼もはためいた。 #ドラゴン長門

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どうやら被害の増大を考慮してか、空中戦に持ち込むらしい。 長門が飛べるのは知っているが、ビスマルクも同様に飛べるらしい。 翼さえあれば飛べるのか疑問だが、今はそんな考察をしている場合ではない。 これ以上喧嘩が激化する前に、止めなければ…。 #ドラゴン長門

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だがどうやって止める？ ここには霧島、大和と武闘派がそろっている。 飛ぶ前に霧島に止めて貰うか？ 飛んだ後でも大和なら届く筈…。 しかし本当にそれでいいのか？ 可能なら戦わない方が良いに決まっている。 それなのに力で解決させるのは正しいことか？ #ドラゴン長門

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いや、こんな時に正しいかどうかなんて関係ない。 ただ提督として事態を迅速に収拾すべきだろう。 ここは霧島たちに任せるべきだ。 こうしてる間にも長門らは飛ぼうとしている…早く指令を出さなければ被害は増す一方だろう。 提督は大きく息を吸い込み、叫ぶ…。 #ドラゴン長門

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提督「長門型一番艦長門ッ！！ビスマルク級一番艦ビスマルクッ！！」 突然の大声に周囲が凍りついた。 名を呼ばれた二人を含め、大和も霧島も一瞬呆気に取られてしまった。 だが一番驚いているのは、大声を出した提督本人である。 本当は霧島に止めて貰おうとした筈なのに…。 #ドラゴン長門

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だが思考とは裏腹に、口はどんどん喋っていく。 提督「我が鎮守府内における規則第7条は『艦娘同士による私闘は厳禁』であるッ！！それについては資料を送付して筈だッ！！ビスマルクッ！！貴様は読むのを怠った愚か者かッ！！」 Bis「なっ…なっ…！？」 #ドラゴン長門

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突然の叱責に先程までの威勢は吹き飛んだのか、ビスマルクも長門も顔を強張らせて提督に目を向ける。 提督「この争いにおける根本的な原因は貴様の言動にあるッ！！艦娘に地位階級が無いとはいえ長門は本鎮守府に当初からいる先人であるッ！！敬いこそすれ侮辱など許さんッ！！」 #ドラゴン長門

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提督「長門ッ！！貴様は先人としてッ！！秘書艦としてッ！！ビッグセブンとしての自覚があるのかッ！！貴様が規則を守らねば誰が守るというのだ馬鹿者がッ！！」 長門「うっ…」 提督「両者ともこれ以上の私闘を続行するというのなら其れ相応の処罰があることを忘れるなッ！！」 #ドラゴン長門

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提督「それでも構わんというのなら続けるがいいッ！！貴様等の艦娘生活もそれまでだッ！！」 長門「…！」 霧島「…あの提督が…ここまで言うとは。」 Bis「…ふん…興が削がれたわ…後日、改めて来るから」 提督「待て！ビスマルク！あっ、飛んで行きやがった…」 #ドラゴン長門

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長門「…追おうか？提督」 提督「いや、いい…後日来るって言ったんだ。また会えるだろ…」 霧島「しかし…あの姿はいったい…」 提督「さぁな…お前たちの姿に近い気もするが…それとはまた違う感じもした…」 大和「次会った時は、その事について聞かなければなりませんね…」 #ドラゴン長門

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長門「提督…」 提督「ん？」 長門「…その、すまない…自覚が足りなかったようだ…」 提督「気にするな…と言いたい所だが、今度からは肝に命じてくれ」 長門「ああ…そうだな…。あと、提督…惚れ直したぞ…///」 提督「…とりあえず反省してないっていうのはよくわかった」 #ドラゴン長門

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夕立「へぇ〜。私が遊びに行ってる間にそんなことがあったっぽい？」 提督「ぽいっていうか、あったんだがな」 霧島「でもさすが明石さんね。2階と3階で部屋が壊れたのにもう直ってるなんて」 提督「さすがにコンクリ固まってないからまだ執務室は使えないがな」 #ドラゴン長門

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長門「しかし突然大声を出すから驚いたぞ」 提督「…あんなこと言うつもりは無かったんだがな…元々ビスマルクを招き入れたのもお前らに力で押さえ込んでもらうつもりだったのに…」 霧島「私は間違いだったとは思いませんよ。結果的に、向こうも長門も怪我はしなかったんですから」 #ドラゴン長門

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長門「…待て、招き入れたというのはどういうことだ？」 提督「そうだな…招き入れたというか、上層部の意向もあるんだよな」 夕立「どういうこと？」 提督「あいつは元々違う鎮守府勤務だったんだが、問題行動を起こしてばっかりで作戦中も単独行動が多かったらしい」 #ドラゴン長門

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霧島「元からあの姿だったんですか？」 提督「分からん…ただ戦闘に関しては初勤務当初から飛び抜けていたらしい。初陣で敵海域を制圧したっていう噂もある」 長門「どちらにせよ、その頃から強かったわけだ」 提督「そういう事もあって仲間内から孤立して行ったんだろうな」 #ドラゴン長門

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提督「孤立しては問題を起こしがちなその鎮守府の提督は彼女に手を焼き、彼女を解体しようとしたがビスマルクはそれを力でねじ伏せ、どうしようもなくなった結果彼女を別の鎮守府に移した。しかしビスマルクはそこでも孤立し問題を起こし…」 長門「それを繰り返していったわけだ」 #ドラゴン長門

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提督「元々プライドが高い性格だったようだが、その事の繰り返しに性格は拍車を掛けて悪くなり、誰にでも冷たく突っかかるヤツになっちまった…」 霧島「孤高のプライド…ねぇ…」 提督「そんな時に、俺が出した手紙を上層部が拾ったんだ」 夕立「空母が欲しいって手紙？」 #ドラゴン長門

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提督「そうだ。上層部はこれ幸いにと要請を受諾、ビスマルクを寄越すに至った」 長門「空母が欲しかったのだろう？断れば良いものを…」 提督「『現在我々にそちらへ寄越せる空母は居らず、戦艦娘を送ることしか出来ぬ。有難く受け取られたし』…要約したが、上からの手紙の内容だ」 #ドラゴン長門

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提督「もちろん上層部からの返信に対してただの提督でしか無い俺に拒否権はない。それにビスマルクの数々の功績に加え、戦艦級の艦娘を容易に手放すことは躊躇われた…一々どこかに移さないとやってられなかったんだ」 長門「…鎮守府を荒らしては移転する艦娘か…笑えんな…」 #ドラゴン長門

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提督「そうだな、笑えんな。だが一番笑えないのはビスマルク本人だろうな」 長門「どういうことだ？」 提督「…ただの推測だ。願いでもあるけどな」 霧島「？」 提督「戦艦4、空母5…これが何かわかるか？」 長門「さぁな…」 提督「あいつがこれまで喧嘩した相手の数さ」 #ドラゴン長門

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提督「数の問題じゃない。あいつは自分より明らかに弱いと判断したやつには手を上げていないんだよ。あいつは駆逐にも軽巡にも、重巡にも手を出しちゃいない。そういう優しさをあいつは持ってるんだよ。戦艦や空母だから喧嘩していいとは思わねぇけどな」 長門「…」 #ドラゴン長門

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提督「あいつが本当に荒々しいだけの艦娘なら誰彼構わず殴りかかってる。それを戦艦、空母に留めてるのはヤツなりの優しさであると同時に迷いにも俺には見えた。本当はこんなはずじゃない、こんなことをするために来たんじゃない…ってな」 長門「…そう…だろうか…？」 #ドラゴン長門

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提督「言ったろ、俺の推測で願いだって。そして俺はそこに賭けたいと思ったんだ」 長門「…」 提督「うちの鎮守府にいる艦娘たちの実力は折り紙付きだ。あいつの孤立する原因が強すぎる力なら、抑え込めるのはお前らだけ。それが出来た時に初めて、ここがあいつの居場所になるんだ」 #ドラゴン長門

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提督「だが実際止めるのは俺じゃなくてお前らになる…勝手なことしてあいつを招き入れたのは俺だ。納得がいかない、冗談じゃないというなら、今ここで俺を殴り殺しても構わん」 霧島「提督！」 提督「俺が勝手なことしてお前らに責任を背負わせてるんだ。これくらいされて当然だろ」 #ドラゴン長門