#完全ノープラン艦これ与太話 【ヤクザズ・ライフ・ライク・ア・ドラゴン】 #4

ニンジャスレイヤーをリスペクト重点した艦これファンジンSSです。 それぞれの復讐物語へ。 #1~#2:http://togetter.com/li/678552 続きを読む
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春魔解丼 @vespiking

#完全ノープラン艦これ与太話 【ヤクザズ・ライフ・ライク・ア・ドラゴン】 #4 #KZNPLN

2014-06-17 07:55:56
春魔解丼 @vespiking

クラン事務所跡は、惨憺たる有様であった。飛龍が駆けつけた時、既に事務所跡はマッポやケンペに封鎖されており、瓦礫撤去や死体回収が行われている最中であった。工事現場めいた無機質な喧騒がそこにあった。昨日まであったであろう、クラン構成員による生きた喧騒は、今はもうない。 #KZNPLN

2014-06-17 08:01:25
春魔解丼 @vespiking

1人の封鎖マッポ妖精が飛龍に気付き、気だるそうに歩み寄る。「ここはアブナイです。爆弾や魚雷が残っているかもしれない。立入禁止です」飛龍はIDを提示した。「軍の者です。通してください」「アナヤ!帝国軍の方!しかし理由なく通すわけには……」マッポ妖精はまごついた。 #KZNPLN

2014-06-17 08:05:38
春魔解丼 @vespiking

「……近くに住んでいた友人と、今朝から連絡がつかないんです。なにか巻き込まれていないか、心配で」「アナヤ!それは大変だ。どうぞ通ってください」マッポ妖精は眠い顔で道をあけた。過剰労働で疲弊した彼女らにとって重要なのは、上官の問い詰めに対するそれらしい理由なのだ。 #KZNPLN

2014-06-17 08:10:43
春魔解丼 @vespiking

『外して保持』と書かれた黄色いテープをまたぎ、飛龍は瓦礫の上を歩く。火薬と血の混じった赤黒い臭気が鼻を突く。まばらに散らばった妖精の死体からなるべく目を逸らし、ツキジめいて艦娘が横たわるビニールシート傍へと向かう。 #KZNPLN

2014-06-17 08:14:27
春魔解丼 @vespiking

シートの中央付近に、半壊した隼鷹と祥鳳が見えた。飛龍の喉奥から、食道を焼く酸が上ってくる。見知った艦の死に顔は、いつまで経っても慣れない。まして彼女らは、ヤクザとはいえ民間人なのだ。手前勝手なセンチメントだという自覚はあった。失ってはならない人間性だという自覚も。 #KZNPLN

2014-06-17 08:21:08
春魔解丼 @vespiking

飛龍は嘔吐感をこらえ、ジゴクを見回した。浦風らしき死体は、確かに見当たらない。そして、龍鳳もいなかった。判別不能なほど損壊した遺体もいくらかある。これがもしや浦風では。彼女は龍鳳なのでは。飛龍は考えぬ事に必死であった。これが誰であろうと、同じ命であるというのに。 #KZNPLN

2014-06-17 08:25:37
春魔解丼 @vespiking

ゴトリ、と、不意に背後で物音がした。状況からみて、ケンペかマッポと考えるのが自然だろう。だが飛龍は、半ば縋るような気持ちで、その物音に振り向いた。「……貴女、は」「アイエエエ……ひ、飛龍さん……」あの九七式艦攻の、名も無き茶軍服の艦載機妖精だ。 #KZNPLN

2014-06-17 08:29:07
春魔解丼 @vespiking

「……教えて。昨日、何があったの」飛龍は動悸を抑えながら、荒い息で妖精に問うた。「アイエエエ……突然、クランが襲われて……アッという間に皆殺され……お嬢と、オヤブンが、攫われ……私は戸棚に落ちて気を失い、目覚めると……し、祥鳳、殿も、既に……アアア」 #KZNPLN

2014-06-17 08:37:43
春魔解丼 @vespiking

「……誰が、やったの」飛龍は怒りを抑えるのに必死であった。必死で、問いを絞り出した。「ヤクザリムジンの側面には、ア、アア、『黒棺連合』の白抜きショドーが……」「……ブラック、オブツダン……!」飛龍の瞳が充血する。ブラックオブツダン。日本最大のヤクザクランだ。 #KZNPLN

2014-06-17 08:41:48
春魔解丼 @vespiking

「ア、アア、アアアーーッ!!」妖精は叫び、泣きじゃくってビニールシートのほうへ飛んでいった。「祥鳳殿!祥鳳殿!アアア!どうして……ああ、ブッダ!どうして!なぜ私だけ生き延びてしまったのですか!祥鳳殿!なぜ!なぜ、ご一緒に……アアア」疲れたマッポらは見向きもしない。 #KZNPLN

2014-06-17 08:44:54
春魔解丼 @vespiking

「私も、私も共に、共に死にたかった……貴艦と共に、この命、共にしたかった……せめて、今からでも……」泣き崩れ、懐からドスダガーを取り出した妖精の背中を見て、飛龍の機関部がどくり、と大きく震えた。無我夢中で妖精を取り押さえ、ドスダガーを投げ捨てた。「お願いです!」 #KZNPLN

2014-06-17 08:48:21
春魔解丼 @vespiking

「何がよ!何がお願いよ!」「お願いします!私にセプクさせて下さい!祥鳳殿のお傍で!でなければ、カイシャクして下さい!このアワレな艦載機妖精めを、ここで死なせアバッ!」飛龍は力任せに妖精を殴りつけた。「……何よッ!何がよッ!……艦の気持ちも、知らない、癖にッ……!」 #KZNPLN

2014-06-17 08:51:49
春魔解丼 @vespiking

「私だッて!言いたかった!言いたかったわよ!逃げて、って!逃げて欲しい、って!それなのに!それなのに!……それなのに」飛龍はぼろぼろと涙を零した。「何よ……何でよ……なんで、みんな……」「アイエエエ……」飛龍はもはや、自分が何に怒っているかもわからなかった。 #KZNPLN

2014-06-17 08:54:35
春魔解丼 @vespiking

わかっている。これは己の、過去の怨念だ。祥鳳がそう思ったかどうか、それはわからぬ。ましてこの艦載機妖精には、なんら関係ない飛龍のエゴだ。彼女が死を求める理由も理解できた。だが、抑え切れなかった。妖精と同じく、飛龍も己の感情をぶつけたのだ。これは、彼女の復讐なのだ。 #KZNPLN

2014-06-17 08:57:44
春魔解丼 @vespiking

「オヤ」「なんだろう?」「爆発物かな」遠巻きにマッポらの声が聞こえ、飛龍らは我に返る。事務所宛に、なんらかの荷物が届いたようだった。飛龍は無意識に妖精を乗せ、そちらへ向かった。「アナヤ、どなたで」「……軍の者です。確認します」「実際頼もしい!」 #KZNPLN

2014-06-17 09:00:42
春魔解丼 @vespiking

飛龍が箱を開けた。妖精は息を呑んだ。そして、泣き出した。「……これは?」「アアアアア!祥鳳殿!祥鳳殿!アアア……」箱の中には、真っ赤な美しいキモノが入っていた。「祥鳳殿が、仕立て屋にたのんでいた……り、龍鳳お嬢の、キモノです……アアア」飛龍は無意識に口を抑えた。 #KZNPLN

2014-06-17 09:03:19
春魔解丼 @vespiking

「……飛龍、さん」言葉を失う飛龍を、妖精が震える声で呼ぶ。「ずいぶんと、勝手な事であることを、恥を忍んでお願い致します……。どうか、どうか私を!連れて行って下さい!攫われた、お嬢のもとへ!この、キモノと共に!」妖精はほとんど泣きながら叫んだ。マッポは無関心だ。 #KZNPLN

2014-06-17 09:05:52
春魔解丼 @vespiking

「仇と相対し、そこで果てるならば本望!無事生きてここへ戻り、祥鳳殿の墓前にて報告する事叶うならば尚本望!この私を!卑しき名無しの艦載機妖精であるこの私めを!どうか!艦の最期の意志を継ぐ為!伝える為に!運んでください!航空母艦、飛龍殿!」 #KZNPLN

2014-06-17 09:14:15
春魔解丼 @vespiking

飛龍は妖精を強く抱き締め、低く、力強く、決断的に、ただの一言だけを呟いた。それ以上は何も言わなかった。必要がなかった。「――わかった」これは、彼女達の復讐だ。 #KZNPLN

2014-06-17 09:16:09
春魔解丼 @vespiking

------------- #KZNPLN

2014-06-19 07:48:26
春魔解丼 @vespiking

「ネエ霧島。余ってる艦攻、ある?」工廠医務室で妖精に包帯を巻きながら、飛龍は後方に座る霧島へ問うた。「艦攻?」「彼女の九七式艦攻、ダメだった。燃料タンクに穴があいてる。あの位置は修理できない」妖精は俯いた。 #KZNPLN

2014-06-19 07:52:34
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