空想の街・氷涼祭2014　１日目

雲行き＠空想の街 @_kumoyuki_

「本当にあなたって公私共に最高のパートナーね」本当に"公私共に"なのだろうか？あんまり扱いが酷いと浮気してやるぞ、とできもしない野望を胸に秘める運び屋だった。 #空想の街 #横峰写真館

黒巣真音 @catnap_7

ふわり。女は、我が城 #ヴェンディッタ の二階にある自室で、欠伸をしつつ身体を起こした。日付と時刻を確認する。7月3日の午後12時半。いつも通りの時間に安堵し身支度を整える。ふと、クローゼットの中に和装が見えて、そろそろ氷涼祭かと思案した。今年こそは彼に逢いたいものだ。#空想の街

黒巣真音 @catnap_7

となると、風船を準備しなきゃならないし、外出しなくても良いような準備をしなくては。とそこまで考えて、夜は店の中に引きこもっているから、意味ないな、と思い至った。白鴉のワタリがあれば、アナウンスが入るのだから、アナウンスの入った日中に買い出しすれば良い。#ヴェンディッタ #空想の街

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

時計塔のある街に私は向かう。目的は氷涼祭。死者が舞い戻るという話を聞いて、いてもたってもいられなかった。準備を整え、旅立つ。リノとまた出会えるだろうか。その時、私は耐えられるのだろうか。私はまだ……リノが死んだという実感が湧かない。＃空想の街 ＃死人娘

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

死んだという実感がないまま、二年が経った。リノと私は好きな色が違う以外は本当に思考や嗜好が似ていて、仲が良かった。だから死ぬなんて思わなかった。唐突に交通事故で逝くなんて、想像しなかった。リノと会えないことが悲しかった。＃空想の街 ＃死人娘

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

これは賭けだ。もしこの祭で、リノに出会わなければ、リノはどこか遠くに行っただけなのだ。そこは死よりは遠くない場所。きっといつか会える。だけど、もし出会ったら、私はちゃんと向き合わなければいけないだろう。＃空想の街 ＃死人娘

木船田ヒロマル @hiromaru712

【 #ネームハンター 】俺の名前は七篠権兵衛。剥がれた名前の捜索人だ。ある日送られて来た差出人不明の封筒には、ヴァイオリンコンサートのペアチケットが入っていた。訝しむ俺を尻目にチケットを取り合う相棒の悪魔美女ネモと主任捜査員アズサ。コインが微笑んだのは果たしてーー。 #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

街で唯一のコンサートホール「遠き潮騒堂」。開幕までまだ時間があるが観客と思しき人影はちらほらと集まり始めていた。シャツのボタンをきちっと閉めネクタイの結び玉を首元まで上げただけで、いつものスーツの俺に対し、ネモは艶やかなイブニングドレスで現れた。 #ネームハンター #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

「お待たせ」 ナチュラルに見えるしっかりメイク。猫耳の意匠のカチューシャ。夜空の天の川を思わせる漆黒のビロードにラメの輝くドレス。元々の美貌と合いまって道行く人々を振り向かせる程に今夜の彼女は輝いていた。 ……あのな、ネモ。気合い入り過ぎじゃねえか？ #空想の街 #ネームハンター

木船田ヒロマル @hiromaru712

「いいでしょ。たまになんだし」 ネモは妖艶に笑う。俺がどきりとしたのは、その笑みが演出や営業じゃなく心からのものだと感じられたからだ。ネモとは長い付き合いだが、正直こんなことは初めてだった。 思えばこの所こいつは、急に人間らしくなりつつある。 #ネームハンター #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

隣を歩くネモに、ふと「女」を意識して、俺は目線を彼女から外して歩調を早めた。 「あん、待ってよ。あたしヒールなんだから」 ネモは文句をいいつつ、それでも楽しそうに俺の後をついて来た。 #ネームハンター #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

「九条八千代ヴァイオリンコンサート 〜銀氷のエチュード〜 」 の看板をネモと二人でくぐる。 受付でパンフレットを受け取り、ホールでチケットの席を探す。 ありゃ、ど真ん中のいい席だな。 ネモは俺の隣に座り、少しそわそわした様子で辺りを伺っていた。 #ネームハンター #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

おい。あまりきょろきょろすんなよ。 「だってこういうの初めてなんだもの。あたし、おかしくない？きちんと観客っぽくなれてる？」 大丈夫だ。堂々としておけ。 「さっきからなんか見られてる感じがするのよね……尻尾でも出てるかと気が気じゃなくて」 #ネームハンター #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

そりゃお前……。 お前が綺麗だからだ、と言いかけて何故か言ってはならない気がして俺は黙った。 「ん？何？」 ネモは長い睫毛を纏った黒目がちな瞳で俺を見た。 その時、ブザーが鳴ってホールが暗転する。 俺はどこかほっとしている自分を発見した。 #ネームハンター #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

ステージの照明に一人の女性が浮かび上がる。二十代前半だろうか。落ち着いたワインレッドのコンサートドレス。年季の入った渋い色味のヴァイオリン。 彼女が右手の弓をヴァイオリンの弦に当てたその瞬間、ホールの空気が劇的に変わった。深みのある立体的なメロディ。 #ネームハンター #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

緩急と強弱のメリハリ。一瞬のタメ。駆け抜ける旋律。胸に迫る重低音と天使の囁きのような繊細な高音。 素人の俺にも間違いなく彼女は一流だと思えた。彼女の紡ぎ出す音の奔流は時に爽やかに時に切なく心に染み込む。 俺は暫し浮世の憂さを忘れその愉悦に酔いしれた。 #ネームハンター #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

その時、隣のネモが席を立った。 ……どうした？ネモ。 「ちょっと、気分が悪いの。外の空気を吸ってくる」 付き添おうと俺は腰を浮かしたが、ネモはその動きを手で制して言った。 「平気よ。慣れないことしたから色々収まりが良くないだけ。すぐ戻るわ」 #ネームハンター #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

だが結局、ネモはコンサートが終わるまで、席に戻ることはなかった。 #ネームハンター #空想の街

木船田ヒロマル @hiromaru712

つづく #空想の街 #ネームハンター

黒巣真音 @catnap_7

夜の十時。#ヴェンディッタ の看板をオープンに差し替える。わざわざドアを開放したりしない。自慢じゃないが客の入りは少ない。けれど、良いのだ、別に。彼と逢う為だけに訪れた #空想の街 に居座って、もう何年経ったんだろうか。自分用に作ったディタ・クランベリー・ソーダを口に含んだ。

黒巣真音 @catnap_7

客は早々来ない。来ても、接客は得意ではないし、ダーツを投げると、どうも、殺気立ってしまう。だから新規の客がまた来てくれることも少ない。それでもディタだとかお嬢だとか愛称で呼んでくれる珍妙な奴が数人居る。奴らのおかげで #ヴェンディッタ は店という形を保っているんだろう。#空想の街

黒巣真音 @catnap_7

本来ならば、接客など、出来やしないのだ。赤く染まったこの手で作ったものを、誰が口にしたいと思うのだろう。今でも時折、無性に、手を洗い続けていたくなる。染み付いた血臭が漂う気がするのだ。はぁ。妙にイライラする。良くない兆候だと思いつつ、ダーツを手にした。#ヴェンディッタ #空想の街

日下 昊／頭巾ちゃん @sola_Dante

ここは菓子屋の花心亭。時計塔の程近くに店を構えている。今日も朝早くから菓子を作っている。菓子に留まらず薬も店頭に並ぶ。 今日はうっかり卵を切らせてしまい、店主は卵屋へ向かう所だ。 #花心亭 #空想の街

日下 昊／頭巾ちゃん @sola_Dante

明日から、街では氷涼祭が行われる。毎年の恒例行事と行って良いだろう #空想の街

日下 昊／頭巾ちゃん @sola_Dante

花心亭の扉に「準備中」の札を掛ける。菓子用の卵を求めて北区を歩いていると「おう！ヨウじゃねぇか。この街に来て探す手間が省けたよ」と陽気な声が聞こえた。 （私を『ヨウ』と呼ぶ者はごく僅か。同胞か敵のどちらかだ。“瑛”をそのまま『エイ』と呼ぶ人以外、この街には居ない） #空想の街