#百鬼夜行

twnovelまとめ 折本にしました。 http://buff.ly/1p3pncR
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ドーナツ @donut_no_ana

#折本 つづら折本のご案内です! 「百鬼夜行」オバケの話が10編。PDFのDLが可能です。詳細: buff.ly/XnOJMi pic.twitter.com/xqr9zOArVR

2014-09-18 22:28:52
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ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 大鯉という化け物がいる。 #百鬼夜行 人目のないのを鑑み寺庭で煙草に火を点けた。緑に濁った池の端を当てもなく歩く。紋黄蝶に気をとられていた俺は指を焼かれ飛び上がった。悪態を吐きながら池へ吸いさしを弾く。「煙太、返し申す」煙の立ちのぼる吸い殻が足元に転がってきた。

2015-03-31 15:33:48
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 桜姫という化け物がいる。 #百鬼夜行 桜の木の根元に子供が屈み込んでいた。晴れ着に紅をさしている。親を探してほしいとせがまれた。生酔いで満開の並木を歩く。「どこから来たの?」子供のほうへ向こうとするが、たちまち体が重くなった。気付くと先の桜の下で眠りこけている。

2015-03-30 20:57:21
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 大鯉という化け物がいる。 #百鬼夜行 俺は池にエゴノキの実を投げ込んだ。果実にはサポニンという成分が含まれている。これが毒で魚が痺れて浮いてくるのだ。「坊は何しとる?」間近に太った男が着流し姿で佇んでいる。男の瞼は見る間に消え、肌に滑りを帯びた。口が横へ裂ける。

2015-03-25 01:12:06
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel こそこそ岩という化け物がいる。 #百鬼夜行 拍子木の音が家中まで響いてくる。最近、不審火が絶えなかった。「怖い、怖い」縁側を渡るしな俺は呟きを捉える。「明日は我が身」「大事ない。水神様がいらっしゃる」見回すが、誰の姿もなかった。井戸の傍に石が幾つか転がっている。

2014-08-09 21:40:07
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 一目入道という化け物がいる。 #百鬼夜行 その男は校庭に立っていた。片目が眼帯に覆われている。俺は男の素性を周囲へ尋ねた。だが、その度に男は消え失せる。再び俺は窓外へ目をやった。男は眼帯に手をかけていた。外し始める。目を逸らそうと努めるが体は微動だにしなかった。

2014-07-19 01:22:35
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 煙々羅という化け物がいる。 #百鬼夜行 俺は紫煙で輪を拵え、税に入っていた。煙の重なりに柔らかい影が浮かび上がる。笑っている女の口元に見えた。記憶を探る俺を他所に黒電話が鳴り出す。「なあ知ってたか?」訃報を伝える友人の言葉は遠く、俺は彼女の顔形を思い出していた。

2014-07-12 15:30:34
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 煙々羅という化け物がいる。#百鬼夜行 笑い声に目をやると子供が紫煙に手を伸ばしていた。乳幼児だろうか。俺は慌てて灰皿へ煙草を押しつける。しかし、煙は消えず辺りへ留まっていた。「二親とも亡くなるなんてねえ。居間の。お棺だけだって」母が玉突き事故の顛末を語り始める。

2014-07-12 14:48:01
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 幽霊傘という化け物がいる。 #百鬼夜行 シャッターの下りた店先で俺は煙草を喫んでいた。降り出した雨は弱まる気配もない。「痛!」足元に傘が転がっている。渡りに船と開いた途端、腕が引かれ、足は浮き上がった。柄を離した俺は地面に尻餅を着く。傘は空へと遠ざかっていった。

2014-07-08 20:05:22
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 一反木綿という化け物がいる。 #百鬼夜行 窓を白いものが過る。見る間に隣の庭へ流され、子供の悲鳴が上がった。見れば芝生にシーツが広がり、端から小さな靴を履いた足が伺える。とんだ枯れ尾花だ。俺は欠伸混じりに台所へ向かう。紅茶を手に戻ってみると子供も布も消えていた。

2014-07-07 22:22:33
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 小豆洗いという化け物がいる。 #百鬼夜行 湯船に浸かるといつもその音がした。籠の中で小石を揺するような繰り返しが浴室を満たす。たちまち眠気が差し、幾度か溺れかけた。心配した母は、家中に札を貼る。いつしか怪異は消え失せたが、灯台を仰ぐ俺の耳はその震えを覚えていた。

2014-07-06 22:10:29
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 座敷坊主という化け物がいる。 #百鬼夜行 「遊ぼう」親戚の子供だろうか。法事に付き合わされた挙句に子供の世話とは嫌になる。「お母さんは?」「話してる」仕方なく庭に放ってあったボールを子供と投げ合った。「まだだよ。もう少しだけ」線香の煙が漂い、子供の姿は薄らいだ。

2014-07-06 15:49:54
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 海座頭という化け物がいる。 #百鬼夜行 道の向こうから小さな影が近付いていた。「一曲吟じまする。ご所望、ご所望」盲い、杖を突いた老人である。「所望?」老人は背中の琵琶を下ろし始めた。断るより速く、音が辺りを震わせる。瞬時に水が押し寄せ、俺は空気を求めて足掻いた。

2014-07-06 14:03:46
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 提灯お化けという化け物がいる。 #百鬼夜行 岐阜提灯を受け取りに俺は店のガラス戸へ手をかけた。しかし、軒に何か下がっている。破れた胴から舌を垂らし目玉を描いた提灯だった。「おい?」留守なのか主人の返事はない。帳場に提灯が置かれ、お持ちくださいと紙が貼られていた。

2014-07-06 13:12:04
ドーナツ @donut_no_ana

#twnovel 猫又という化け物がいる。「お母さんいる?」庭に祖母が佇んでいた。膝の猫を払い、俺は帳場へ向かう。だが、母は俺の話をみなまで聞かず、忙しいと言下に断じた。縁側に戻ってみると祖母の姿が見えない。「あの婆さん。今夜が峠だよ」猫が話したのは、その一度きりだ。 #百鬼夜行

2014-07-06 11:52:46