もしまどかが秩序ではなく欲望を選んだらbyローランさん( @Laurant_Mdhm )

ローラン@まどほむ @Laurant_Mdhm

「さやかっ、美樹さやかっ！」 あたしの名前を呼ぶ聞き覚えがある声に、思わず眉根を顰める。 聞き間違えるはずがない。 あたし達を騙し、裏切って、好き勝手に世界を改変した悪魔。 暁美ほむら。 それがあたしの友人で、敵の名前だ。

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「何さ、今朝の続きでもやろうってんじゃ――」 今朝散々人を馬鹿にしておいて、今更声を掛けてくるなんて。 学校の中で仕掛けてくる事は考えにくかったけど、 何時でも受けてやんよという気概で振り返ったあたしは― 「助けて、さやかっ！」 「……は？」 ―間の抜けた声を出してしまう。

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今朝は文字通り絶好調だった余裕に溢れた表情は見る影もなく 半べそをかき、全力で走ってきたのか息を切らしながらこちらに駆け寄ってきた悪魔 「ちょ、ちょっと、一体何があったってのさ……」 状況が飲み込めず、その情けない姿に準備した敵意も散り散りに 「ま、まどかが…まどかがっ！」

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「まどか？ まどかがどうかしたの？」 「まどかがぁっ…！」 「ちょ、ちょっと、本当落ち着きなって」 まどかの名前をただ連呼するほむら。 もう訳がわからない、いや、昔からこいつはこういうやつだったけどさ 「つーかアンタ、まどかに学校を案内だなんだって連れ出してたじゃん」

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まるで昔、ほむらにまどかがしていたように。 質問攻めに戸惑うまどかを、颯爽と連れ出していったのがついさっき。 まどかを連れ出して変なことでもしてんじゃないかと、探しに行こうと教室を飛び出したタイミングでこれだ。 状況が飲み込めないあたしに、すがりつくように悪魔が続ける。

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「まどかが……欲望が大切だって……！」 「……はぁ？」 本日二回目。だが誰があたしを責められようか。 「まどかが…！ 欲望が…！ アメリカンでぇ…！」 涙を浮かべながらますます意味不明なことを並べ立てる。 「……いや、マジで落ち着いて、訳がわか「ほむらちゃーん！」」

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廊下に響くまどかの声。 何故かその声はとてもご機嫌で。 そしてびくっと体を震わせ、「ひっ」なんて悲鳴まであげる悪魔。 「……ま、まど、か……」 ギギギ。そんな音が聞こえてきそうな程歪に振り返るほむら。 こちらからは表情が伺えないが、きっと怯えた顔をしているのだろう。

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「てぃひひ、ほむらちゃんって脚早いんだね、私じゃ全然追いつけなかったよ」 だというのに、まどかは依然ニコニコとしながら悪魔の元に駆け寄る。 「でも酷いよ、突然逃げちゃうなんて。あ、でもそういう所もとってもCuteだよ！」 そう言いながらほむらの手を握り締めるまどか。 なんだこれ。

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「まままって、まどか……！」 「うん？ ほむらちゃんから言ってきたんじゃない。欲望のままに生きようって」 「言ってない！ そんな風には言ってないわ！？」 「うぇひひ、突然だからびっくりしたけど……でも私、ほむらちゃんならいいよ」 「何が！？」 さやかちゃん、完全においてかれるの図

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「だ、だめよっ、そういうのはもっと時間を置いてから…！」 「ほむらちゃん、私の事好きって言ったじゃない……あれはもしかして嘘だったの？」 「嘘な訳ないわっ！」 「その隙はLike？ Love？」 「愛よっ！」 「うぇひひ、じゃあ問題ないね」 「えっ…あっ、ちがっ！？」

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「もう、ほむらちゃんから誘ってきた癖に照れちゃって。あ、でもそういうヤマトナデシコなところも素敵だよ。大丈夫、私知識はいっぱいあるから！」 「何の！？」 「何事もLet's Tryだよほむらちゃん！」 「だ、だめよぉ！ 私達まだちゅうがくせ…っ」

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「そういう訳だから、ごめんねさやかちゃん。ほむらちゃん借りてくね」 「あ、うん」 突然話を振られてアレな返事しか返せないあたし というか良かった。もしかしてまどかにあたしが見えないんじゃないかって本気で心配になってた頃だったんだ 「三年間の積もる話もまた明日ね」 「あ、はい」

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「はいじゃないわよ！ 助けてさやかっ！」 「もう、ほむらちゃんいい加減諦めが悪いよ！ 今からそんな声を出してると喉がかれちゃうよ？」 「何をさせる気なのよぉ！？」 「だからそれを教えてあげるって」 「落ち着いて、まずは手を繋いでデートから――」 ずるずると引きずられていく悪魔

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こちらに助けを求める視線を送ってくるほむら。 でもごめん、何か邪魔したら恐いから無理。 ドナドナド～ナ～ド～ナ～ そしてほむらが連れて行かれた方向。 あの方向にあるのは……うん、さすが元保健委員さん。

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「おーい、さやかぁー、帰ろうぜー」 今あった事など知るよしもない暢気な声 校則違反のお菓子を堂々と食べながら近寄ってくる 「あん？ 何だよ変な顔して。何かあったのか？」 「あー、うん、まあ…何でもない、いつものことだよ」 「はぁ？ わけわかんねぇ」 「うん、わけわかんないね」

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もしまどかが秩序ではなく欲望を選んだら。 長々と失礼いたしました。