tareさんの『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』感想

タイトルどうりです
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tare @tareyuu

この時間まで読んでしまったので本の感想を今ブン投げておくことにする、いやそれぐらい面白いのよ辻田真佐憲『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』(幻冬舎新書、2014)

2014-08-05 05:36:43
tare @tareyuu

この本の『軍歌』の定義は『「戦争に役立つ歌」という程度に遇えて曖昧に』(6頁)と近年の軍歌本とは大きく異なる定義、今までの本なら大概戦時歌謡とか「狭義の軍歌」、兵隊ソングっていう長田暁二の分類(wikipediaの「軍歌」分類がコレ)に従ってた所であえてこう大きく採ってるのが良い

2014-08-05 05:41:46
tare @tareyuu

アカデミアの世界、要するにまじめな論文で取り上げようとすると定義付けが求められるんだが(実際軍歌の分類について突っ込まれた経験)、それに対して物凄い違和感があった身としては辻田が敢えて広く取って話を組み立てているのが実にしっくりくる

2014-08-05 05:46:02
tare @tareyuu

で、定義が広いからといって話が拡散せずにきっちり「政治とエンターテイメント」という一本筋の通った話を作り上げて、様々な当事者が集まってウィンウィンならぬオールウィンの「利益共同体」っていう概念を提示してるのがこの本の肝だなと

2014-08-05 05:52:10
tare @tareyuu

『軍歌の作り手たちは戦争を主導した「戦犯」でもなければ、「民族精神」の祭祀でもない。彼らの作った軍歌は何よりも「娯楽」であり「商品」であり(後略』(249頁)という、戦犯というのもおかしけりゃ軍歌に混入したイデオロギーを肯定するのもおかしいという感覚から生まれた新しい見方

2014-08-05 05:57:39
tare @tareyuu

「利益共同体」という考え方こそが軍歌というものを考えていく上で重要な見方になるんではないかと、特に昔から「作者が戦犯であるなら喜んで買い求めた民衆はどうなのよ」と先行研究に馴染めなかった身からすると、違和感を解消する言葉をようやく手に入れたとさえ思えるぐらい

2014-08-05 06:02:58
tare @tareyuu

官/軍の「宣伝」意図があるなんてのは当然なんだけど、そこに売れると乗っていった売り手、求めては消費していった買い手がいる、それを「利益共同体」という概念で説明できるじゃないかと

2014-08-05 06:07:49
tare @tareyuu

今までの軍歌研究とは一線を画する見方だけど、自分の中でパズルのピースとして一番うまくはまる見方が出現したと確信できたのが辻田のこの本だった

2014-08-05 06:09:29
tare @tareyuu

あともう一つ、辻田の見方が新しい視点をもたらした話をしてきたけど、この本はそういう「既に興味を持っている人間」に対する研究書のような視点を提供しつつも「これから興味を持った人」に対する軍歌の概説書としても極めて有用な点も触れておきたい

2014-08-05 06:17:22
tare @tareyuu

今までの軍歌の概説本というと小村公次『徹底検証 日本の軍歌』(学習の友社、2012)か櫻本富雄『歌と戦争―みんなが軍歌をうたっていた』(アテネ書房、2005)、下手すれば堀内敬三『定本 日本の軍歌』(実業之日本社、1969)まで遡るような状況で結構概説書が見当たらなくて困る分野

2014-08-05 06:26:51
tare @tareyuu

ちょくちょく軍歌本が出るといえば出るんだけど、全体の概説書ではなかったり、地雷としか言いようのない「(戦友とか露営の歌取り上げつつ)日本軍歌は固有の芸術」みたいな反応に困る系の本だったり・・・とにかく初心者に「なんか手に入りやすい資料ない?」と聞かれるとめっちゃ困った

2014-08-05 06:31:35
tare @tareyuu

小村の本は(研究書値段としては)安いけどハードカバーで敷居高いし、櫻本は旧来の「戦争責任」という見方が強すぎて勧めづらい、堀内は当事者な上に1969とかいうクソみたいな入手性の悪さ その他長田とか戸ノ下達也は初心者向けじゃねえよなあ・・・となる

2014-08-05 06:33:34
tare @tareyuu

そんなところに現れたのが辻田のこの本、「利益共同体」という概念の話を別にしても全体の流れは軍歌の勃興から隆盛、衰退と「死」について触れているまさに「軍歌史」、メジャーどころの曲は大体抑えて全体の流れに触れてるから、初心者に勧める最初の一冊としてこれ以上無い本になってる

2014-08-05 06:39:17
tare @tareyuu

新書ゆえの安さ(840円+税)と新書だからしばらくは在庫死なないだろういう意味でも初心者の最初の一冊として渡すには最適の本じゃないかと思うこの本は

2014-08-05 06:47:06
tare @tareyuu

というわけで近年の軍歌本の中で最大のスマッシュヒットが『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』と言えるのではないかと読み終わった今にして思う  今軍歌に興味を持ってる人には自信を持ってお勧めできる本だし、安いからとりあえず買えよオラ(御用ゴリマ

2014-08-05 06:55:08
tare @tareyuu

最後に『「あの曲がない」「この曲がない」という批判が出ることを承知の上で」』(267頁)ということで  万歳ヒットラーユーゲントとか此の一戦とか進め一億火の玉だとかの歌詞が載ってなry

2014-08-05 06:57:09