- akagi_carp
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続く敗戦、引き分け、また敗戦―— 監督室にはデスクチェアが回転する音だけが響いていた。 金剛選手兼任監督。 普段見せない険しい表情。 腕を組み、眉を寄せて天井を見上げながらくるくるとチェアを回転させていた。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:14:58「まだ四位、だが四位。Aクラス争いには噛んでいるが、この程度で満足していい訳がない。チームの運営を任されている以上、狙うものは一つ」 言葉少なに語る監督。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:15:28エース翔鶴、クリーンナップの一角を期待されていた最上の不調。 開幕してまだ日は浅いが考えなくてはならない問題は山積みだった。 いまひとつ繋がりのない打線もその一つである。 その時、こんこん、と控えめに扉がノックされた。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:15:58「どうぞ」 ゆっくりと、小さく扉が開く。 彼女は小柄な体を更に小さくして入室してきた。 夕立キャプテンだ。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:16:20数分後、夕立キャプテンはぺこりと頭を下げて退室していった。 金剛選手兼任監督の表情は険しさを増している。 「打順変更の打診を受けたよ。確かに彼女の能力、リードオフマンより返す役がいい」 大きくため息を吐いた監督は背もたれに身を投げ出し、天井を見上げた。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:17:50「彼女のこだわりはよく理解しているつもりだよ。1番セカンド。ハマのリードオフマン。憧れもあるだろう」 「だから返事は保留にしてしまった。彼女はチームの為に自分から動いてくれたのにね。勝ちへの執念は私よりずっと強い」 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:18:15監督が勢いよく椅子から立ち上がり、速足で移動を始めた。 椅子が反動で壁にぶつかり大きな音をたてたが目もくれない。 通路にカツカツと足音を立てて向かったのは、雨が降り注ぐグラウンドだった。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:19:09ベンチで一人、グラウンドに視線を送る夕立キャプテンがいた。 一言二言言葉を交わした後、夕立キャプテンが頭を下げた。 金剛監督は肩を叩き、その後暫く、二人はグラウンドを見つめていた。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:19:38「1番金剛、2番夕立。いくら年を食っても高速戦艦、足と走塁には自信がある。夕立には私をホームに返す仕事をしてもらう」 にやりと笑みを浮かべる金剛監督。 連敗中には見られなかった表情だ。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:20:23「明日皆は驚くだろうな。打線を大きく弄る。イメージには囚われない、好調な奴を上に置く」 まるでいたずら小僧である。 今にもけたけたと笑いだしそうな監督。 その眼はぎらぎらと輝いている。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:20:54「はっきり言って自力に差がある。だからウチはやりたいことを全部やってかき乱してやる。それで優勝できたら最高だね」 自称、台風。 過ぎ去るに留まらず、他球団を吹き飛ばす豪風を吹かせられるか。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:21:37「栄冠掴むその日まで。ベースだろうが呉だろうが構わず突っ込んでやる。私はハマのリードオフマン、戦艦金剛だ」 夕立キャプテンの応援歌を口ずさみながら、金剛監督はダグアウトを後にした。 #横須賀ダグアウトの向こう
2014-08-05 02:24:33