子供の遠足らしき団体と、はちあわせた。昼の水族館で青い床と汗の匂いから塩素を嗅ぎ出そうとするのは、プールを連想しているようだ。蹴飛ばさないように気遣うより、踏みつけないように歩く。探し出した水槽からダイバーが手を振る相手は一人だけだと思うと頬がゆるみ、浮き足立っているのがわかる。
2010-11-27 02:59:43hinemosu_notariさんは、「夜のキッチン」で登場人物が「好きにする」、「チョコレート」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927 #rendai
2010-11-29 00:19:28飲み物を作りに行く、と映画を中座した。一時停止じゃなくて、どんなだったか教えてねと言い置いて。チョコレートリキュールをホットミルクに垂らすか、ホットモカジャバだとどっちがいい?と夜のキッチンから質問が飛んでくる。自分の好きにしたらいいのに「どっちでもいい」が禁句なのは分かってる。
2010-11-29 00:26:44アカシアの雨さんは、「夕方の廃墟」で登場人物が「決める」、「飴」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927 #rendai
2010-11-29 00:59:50勤め始めて写真サークルに入ったのは、出会いの気持ちがなければ嘘になる。踏み入った夕方の廃墟で、憎からず思う人と近づいたのは偶然じゃない。建物を撮るときに決めるアングルは、たいてい似てくるものだ。なめるたび色が変わる飴のように、刻々と色を変える空に、言うのは今しかないと急かされた。
2010-11-29 01:03:35勤務時間が始まる早朝の屋上で、めぼしい猫の姿を探してシャッターを切る。多めに撮ってから選んでは消せるのが、デジカメのいいところ。撮りためた写真を、クビにされた社員のプロフィールとすげかえていくのはお手の物。「死なない」証明写真は、まだ誰にも見せていない。(古川日出男「LOVE」)
2010-11-29 01:31:43面会時間もそろそろ終わる。エレベーターホールまで見送ろうとさしかかったデイルームで、お礼に飲み物をおごると申し出た。いつもは選ばないコーラを、つられて飲むことにする。紙コップを満たす薬くささと甘みは、薬用シロップのようにどっちつかずで、ずる休みをして甘えられた嬉しさがよみがえる。
2010-11-29 14:07:00休日には、ゆっくり昼を食べたあとで犬の散歩に出るのを習慣にしている。いつものコースどおり路地裏をめぐっていたら、向かいから駆けてくる犬と鼻づらでキスを交わした。犬たちの挨拶の幾らか分でも、飼い主に対して振舞えたらいいのに。人形が人間になりたての演技でも、こんなにぎくしゃくしない。
2010-11-29 14:27:48天気予報を笑っていたはずが、冷え込んできた。遊び疲れて汗が引いたせいもあるかもしれない。遊園地の上にひらけた空を見上げても、まだ花火の時刻には早い。「もとは慰めだったはずの言葉を逆にとって、心が冷たいと言われるんだ」とむくれる彼女の手は、ポケットの中で湯たんぽのようにあたたかい。
2010-11-29 21:58:22環境を変えてみようかと提案したのは自分だ。見慣れない街をめぐり、疲れてチェックインした。手をつないだまま、ベッドに横になる。今晩できるかどうかはわからない。サイドテーブルでは、手紙を書く一式がホテルの刻印を反射している。一番に知らせるとしたら誰だろう、と考えながら灯りを落とした。
2010-11-30 16:06:49西日がさしこみ、椅子の影がカフェの床に長く伸びる。肩の荷をおろすように吐息をついた隣席の一人は、良かれ悪しかれ場所と共に記憶に留めるだろうか。ずいぶん沢山を、ここに案内した。ひとが変わるたびに店を変えれば行けない店が増える。古い記憶を忘れてしまうにまかせるのは、薄情とも言えない。
2010-11-30 17:02:28始発めざして走ろうとした足元があやしい。街中の神社で階段を借りて、酔いがさめるのを待つことにした。24時間あけている喫茶店なんて、このあたりにはない。会社の忘年会に最後までつきあうんじゃなかった。探ったポケットで、出がけに渡してくれたかいろに触れる。温まったら、早く家を目指そう。
2010-11-30 23:08:03