rsbs日誌#24

レズボス日誌。第二四巻
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艦これ二次創作SS。
胡散臭い女提督と脛に傷持つ艦娘たちの狂った御伽噺なり。
一部性的表現並びに残虐的表現を含むため未成年の閲覧を禁ず。

あきつ丸編
「魔女と蛇と」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 一隻の船が、霧の中を進んでいく。まるで雲海の中を進んでいる様な気分にさせる、酷い濃霧だ。右も左も分からぬ様な霧の中を、船が進んでいく。古臭い、マストを備えた機帆船がボンヤリとした灯りを灯しながら。舳先に立つ少女は、くすりくすりと楽しげに唇を歪ませていた。

2014-08-23 18:36:55
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#rsbs日誌 羅針盤が揺らぎ、指針が動く。右へ左へ…機帆船は羅針盤が導くままに濃霧を進んでいった。ボウ、と汽笛が成る。正午を知らせる汽笛だった。舳先に立っていた少女は踵を返し、船内に入ろうとした。「彼方に着くのは昼下りでしょうかなぁ…ふふ…楽しみですなぁ…驚く顔が」

2014-08-23 18:43:32
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 その日は夜も開けぬ内から霧が立ち込めておった。此所らでは珍しい天気であり、そうそうあるものでは無い…わしは鎮守府の各員に待機を命じ、歩哨の数を増やした。まだ帰らぬ遠征艦隊には無理に帰還せずに現状が回復するまで近隣の鎮守府か島で停泊するよう無電を打った。

2014-08-23 18:51:06
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#rsbs日誌 「酷い濃霧だねぇ…」秘書業務を手伝っていた隼鷹がポツリと呟いた。「うむ。こうも霧が深いと嫌な感じしかせぬ…」わしは素直に愚痴を溢した。霧は苦手じゃ。如何にも不安に成る…「提督?そろそろ艦載機の戦力増強をすべきでないかい?」書類を捲りながら隼鷹は言った。

2014-08-23 19:00:42
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#rsbs日誌 「新型の彗星や流星かや」「その他にも戦爆の新型零とか烈風なんかもね。潜水艦や航戦、航隼の晴嵐や艦爆のスツーカはどうよ?」昨今の激しい戦闘で開発されたり輸入された航空機を列挙する隼鷹にわしはすっぱい顔をした。「実はわし…艦載機の製造の運が悪いんじゃよ…」

2014-08-23 19:05:01
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#rsbs日誌 「成る程、道理で中中新型が巡ってこない訳だねぇ…」隼鷹が苦笑を溢しながらわしを見つめた。「その様な目でわしを見つめないでおくれ。わしにも苦手なものぐらい十や二十はある」「へぇ?例えば何?」隼鷹の問いにわしは少し口ごもった。「…蜘蛛とか苦手じゃ」「ぶふっ」

2014-08-23 19:12:07
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#rsbs日誌 隼鷹は吹いた口を手で押さえた。体がふるふると震えておる。「…何も其処まで笑わずとも良かろうに」「だ…だって提督って、魔女なのに蜘蛛が苦手って…くひひ…っ」「悪かったのう。それも大の苦手じゃ。幼い頃はハエトリグモさえ追い払う事も出来ず怯えておった」「マジで?」

2014-08-23 19:15:10
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#rsbs日誌 「あのギョロりとした八つの目と、シャカシャカと細長い八本足を動かし、牙を揺らし、糸を垂らして縦横無尽に動き回るのが耐えられんのだ。ただでさえ小型の蜘蛛で泣くと言うのに大型種のアシダカグモに遭遇したときは阿鼻叫喚の地獄絵図じゃったよ…」やれやれと溜め息をついた。

2014-08-23 19:18:53
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#rsbs日誌 「聞いてて少し可哀想に思えてきたよ…ごめん提督」隼鷹の言葉にわしは首を降った。「よいよ、気にするな。因みにもう一つ大嫌いな物があるぞよ」「…何?」「ミ○ロの決死圏。酷いトラウマ映画じゃった…」「あーうん、提督ストップ。あれ嫌いな艦娘多いから。潜水艇が沈むから」

2014-08-23 19:22:44
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#rsbs日誌 そんなやり取りをしておると、不意に内線電話が鈴を鳴らした。隼鷹が滑らかに受話器を取り上げる。「はいこちら執務室の秘書艦。はい、はい……はい?こんな日に?…分かった。提督に伝えるから。連絡お疲れ様」わしは問うた「何事じゃ?」「こんな日に船便だってさ…妙じゃない?」

2014-08-23 19:43:29
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#rsbs日誌 わしと隼鷹は直ぐ様に港の搬入口に出向いた。外套が無ければずぶ濡れに成ってしまいそうな酷い霧じゃった。「こんな日に入港するとか、人間業じゃないね…提督」「じゃなぁ。ヒシヒシと嫌な予感がするのじゃよ」手を確りと握り、カンテラを片手にわしらは濃霧の鎮守府を歩いた。

2014-08-23 20:08:36
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#rsbs日誌 果たして其処には、確かに船が停泊しておった。大型の機帆船が、マストや船体を霧でずぶ濡れにしてしまいながら、朧気な輪郭を纏って佇んでおった。「何だか…妙に古い船じゃん」「機帆船じゃ。帆走と動力航行が行える船じゃよ」わしは港湾部の管理をしておるスタッフらに会った。

2014-08-23 20:14:14
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#rsbs日誌 「提督!」「向こうから提出された書類はどうじゃ?」「今、大本営と問い合わせた所問題も無いみたいです。使用している船舶の外見、船名、シリアルナンバも合致。ですが…信じられますか?こんな濃霧の中を、無傷で滑らかに入港するなんて…!」誰もが皆、青ざめきっておった。

2014-08-23 20:21:18
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#rsbs日誌 「何時まで掛かりますかなぁ」宵闇の様な影が港湾部の詰め所に現れ、スタッフらや妖精さんが小さく飛び上がった…が、しかし…わしはゆっくりと振り向いた。「お前か…」「嫌ですなぁ…そんな顔をしないで頂きたい物でありますよ」影はくっくっ、と笑いながら呟いた。

2014-08-23 20:26:14
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#rsbs日誌 「港湾部の諸君。積み荷の受け入れ作業に入れ。霧の中からやってきたお客は悪党ではない。それとこの濃霧じゃ。恐らく明日まで晴れる事は無いじゃろう。至急輸送船の船員らの客室を用意してやるのじゃ。暖かい茶も振る舞ってやれ」テキパキと指示を下す提督にスタッフは頷いた。

2014-08-23 20:30:31
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#rsbs日誌 「おやおやぁ…自分の事は無視でありますかなぁ?嫌われたものですなぁ…自分は海の様に広く深く提督殿を好いて居ますと言うのに…」勿体ぶり、演技掛かった言葉で宵闇の様な影が言葉を紡いだ。わしは忌々しげに言葉を返してやった。「遠路遙々ご苦労様じゃのう…?あきつ丸…」

2014-08-23 20:35:03
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#rsbs日誌 くっくっ、と笑みを漏らす薄い唇に病的なまでに白い肌の色。全身を黒づくめで覆った少女は、帝国陸軍艦艇艦娘…陸軍特殊船あきつ丸であった。「おや、そちらに居りますは飛鷹型の二番艦、隼鷹殿ではありませんか。自分、あきつ丸と申します。どうぞ宜しく」「あぁ、どうも…」

2014-08-23 20:46:26
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#rsbs日誌 「自分は龍驤殿や飛鷹殿、隼鷹殿、姉妹らの偽装を多分に参考にさせて貰いました故、敬愛しているのでありますよ」「あきつ丸」わしはやや言葉を強く奴を呼んだ。「わしの艦娘とお喋りしに遠路遙々来た訳ではあるまい…?」「ああ、そうでありました。提督殿、では後程であります」

2014-08-23 20:50:02
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 そそくさと出ていくあきつ丸の背を見送ってからわしは溜め息をついた。「大丈夫なの?提督。酷く苛ついているけど…オマケにあの陸軍の…」わしは大丈夫じゃ、と呟いた。「あやつは、わしの陸軍の知り合いから譲られた艦娘じゃ。じゃがわしの艦隊の管轄ではない」

2014-08-23 20:54:02
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#rsbs日誌 紙巻きを取りだし、鬼火で火を点す。肺に煙を吸い込み、わしは少しばかり落ち着きを取り戻した。「あやつは純粋に陸軍側からの好意で贈られた艦娘じゃ。わしと陸軍とのメッセンジャーとしての仕事もしておる。スパイではない。其処だけは安心できる…が、しかしじゃなぁ…」

2014-08-23 20:56:27
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「あやつとわしの属性はまっこと相性が悪いんじゃ。オマケにねちっこい。故に大嫌いなんじゃよ…」溜め息を溢す。頭痛が巡ってきた。歳かのう…「あー…だったら、さ…相手にしなきゃ良いじゃん。あの揚陸艦のさ」陰陽師たる隼鷹も察したらしく面倒くさそうに呟いた。しかし…

2014-08-23 21:00:29
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「そうにも行かないのじゃよ…あやつの相手をせぬと、陸軍からの贈り物が詰まった箱を開けられん。解呪にはあきつ丸の術でなければ無理なのじゃよ」わしはげんなりとしながら呟いた。「隼鷹や。あとの執務や雑用は任せた。秘書艦室でやってくりゃれ」「……あいよ」

2014-08-23 23:03:03
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 隼鷹はわしの横を通り抜け様に肩を叩いて行った。「毒蛇の相手を頑張んなよ…魔女さんよ」わしは無言で頷き、カンテラを片手に濃霧の向こうに煙る鎮守府を見た。ぼんやりと僅かにしか見えぬ、わしの城を…一歩踏み出し、濡れた地面を踏みしめる。わしは魔女じゃ。恥辱にも耐えよう

2014-08-23 23:17:11