ハリウッド映画人はなぜ『アマデウス』に投票したのか

音楽映画の傑作を分析します。
2
It happens sometimes @ElementaryGard

ここで場面転換して国立劇場での稽古のシーンへ。オペラ中のバレエがどうとかというアントニオの話が何のことなのか、観客の私たちはわからないでいます。

2014-09-01 00:06:14
It happens sometimes @ElementaryGard

稽古中。おお、バレエが出てきます。これで私たちは「ああなるほど。オペラのなかに踊りが出てくるわけね今度の新作は」と理解する。 pic.twitter.com/iWBp419PCv

2014-09-01 00:12:07
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

で、先ほどのカットになるわけです。劇場監督が稽古に待ったをかけて楽譜を検閲してしまう。 pic.twitter.com/p2nOyKP2lm

2014-09-01 00:13:09
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

アントニオ氏はこうして、イタリア仲間のお二人にすれば自分たちにいい知恵を授けてくれる頼れる仲間イメージをしっかり保持しつつ、一方で公正な作曲家イメージも維持してしまう。世渡りのうまい方です。そつがない。同時に彼の二面性、葛藤する心を私たち観客は改めて理解する。

2014-09-01 00:16:13
It happens sometimes @ElementaryGard

モー氏はアントニオに泣きつく。公正なアントニオ閣下ならきっとなんとかしてくださるだろう、と。 pic.twitter.com/NlT1JWUUC1

2014-09-01 00:17:10
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

ここで改めて二つの視線が生まれます。ひとつはモー氏の「このひとなら力になってくれる」という期待の目。もうひとつは私たち観客の「検閲を煽った張本人に相談に行くなんてモーは不用心だな」の目。

2014-09-01 00:19:02
It happens sometimes @ElementaryGard

カットが切り替わる。モー氏と観客の両方の目が、今度はアントニオに注がれる。モーは彼がこの話に驚いてくれていると取り、私たちは彼の驚き顔が作り物だと思う。 pic.twitter.com/CEBnVSCSAq

2014-09-01 00:22:08
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

「よりによって私のところに相談に来るとは思わなかったよ」が本心のアントニオ。一方でモーはアントニオが思案していると解釈する。 pic.twitter.com/fSfHVsAVWM

2014-09-01 00:24:35
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

lt's unfair that a man like that should have power over our work. 「ああいう奴がぼくらの作品に権力をふるえるなんておかしいっすよ」 pic.twitter.com/NBNQ8wX1RT

2014-09-01 00:27:53
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

ここでour workに注目。「ぼくら」と述べています。アントニオ氏に向かって「あなただってあの手の口出しに閉口したことが何度もある口でしょ」と述べているのです。

2014-09-01 00:29:58
It happens sometimes @ElementaryGard

ここでハリウッド映画人はぐっときたのだと思います。ああ、そういえば自分もそういう目にあってきたなあ石頭どもがむちゃくちゃを言ってくるんだ、と。

2014-09-01 00:35:55
It happens sometimes @ElementaryGard

But others have power over him. 「だが劇場監督より上の者は複数いる」 pic.twitter.com/lKX76gdAwh

2014-09-01 00:37:09
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

l think l'll take this up with the emperor. 「この件は私が皇帝に話してみる」 ちょっと堅い言い回しです。

2014-09-01 00:38:54
It happens sometimes @ElementaryGard

「映画会社の社長に私から直訴してみるよ」とハリウッド映画人には響く台詞です。これでアカデミー賞の投票数を稼いだとみます。

2014-09-01 00:39:56
It happens sometimes @ElementaryGard

With all my heart, Mozart. 「私の真心だよ」 ポーカーフェイスです。モーはこの台詞を文字通りに受け止めますが、私たち観客は「本気なのアントニオ?」といぶかしく感じる。 pic.twitter.com/P1kEwngQtP

2014-09-01 00:42:44
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

ここまでが回想シーン。語り部である老アントニオに時制が戻ります。「んなわけないだろ」と回想シーンにツッコミを入れる。私たち観客は「でしょうね」と納得する。 pic.twitter.com/k0fuOEr0qU

2014-09-01 00:45:12
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

回想シーンでのアントニオは同時に二つの視線にしばしば晒されるのですが、老アントニオにそそがれる視線は原則として一つです。「原則」と限定したのは、厳密にはやはり二つの視線が働いているからです。それでも回想シーンに比べれば二つの視線による葛藤は薄い。

2014-09-01 00:47:48
It happens sometimes @ElementaryGard

そのあたりのことは後日機会があったら分析しましょう。今のテーマは、ハリウッド映画人はなぜこの映画に票を入れたかの分析です。映画人なら大なり小なり味わうことが、18世紀のウィーンを舞台に戯画的に描かれていて、それで知らず知らず感情移入してしまうのです。

2014-09-01 00:49:34
It happens sometimes @ElementaryGard

何重にも計算が畳み込まれた傑作です。その技の一端を、私なりに分析してみました。

2014-09-01 00:50:26
It happens sometimes @ElementaryGard

Mediocrities, everywhere. I alsolve you all.

2014-09-01 00:51:18