ある猫の話をしよう

cyk @nmnmab47

あさですよーーー！起きてーー！！という声に驚いて目が覚める。ベッドの上でぴょんぴょん飛び跳ねるりょうすけにやめなさい！うるさいよ！とぴしゃりと注意して、時計を見るとまだ7時を過ぎたくらい。土曜日くらいもう少し寝かせて…と布団に潜る ふっかはお構い無しに口をあけて熟睡していた

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紹介します、ここで縮こまってるのが飼い猫のふっかです pic.twitter.com/SiZYLVHrlG

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ある猫の話をしよう

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君が鼻をすすっていて、どうしたの？風邪？ときいたら、うん、鼻水がとまんないの、と言った。効くかわかんないけどこれ飲みなよ、って風邪薬を渡して飲み方を教える。硬い錠剤を飲み込む感覚に慣れないのか四苦八苦しながら大量の水と飲み込んだ

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その次の日から三日、君は帰ってこなかった。いままでもたまにあったけど、さすがに三日ともなると心配になった。かといって大学もバイトも休むわけにはいかず所詮ただの野良猫だったのだと無視して普段と変わらず過ごしていた。

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バイトを終えて自転車にまたがる。飼い猫がいなくなったからロスのお弁当は晩御飯と明日のお昼、二つで十分。それを前カゴに乗せて漕ぎ出す。足でライトをつけると、ふらふらと歩く後ろ姿が照らし出された。驚いてペダルを強く踏み込む、追い抜かしざまにちらと顔を覗き込んだら、やっぱり、君だった。

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あれ、バイト帰りなの、おつかれさま。君は何事もなかったようにそう言った。周りが暗くて気づかなかったけど、左の頬に大きな傷ができていて、心なしかちょっぴり痩せたような気がした。尻尾も力なく垂れ下がっている。どうしたの、そう聞くこともできず、ただ、気が向いたら帰っておいで、と言った。

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それから数日後、大雨が降った。バイトの事務所で借りた傘を差して急いで帰る。スニーカーで来たから靴下まで濡れた。カバンから鍵を取り出してアパートのエレベーターを降りると、私の部屋の前で、君がうずくまっていた。わたしを見るなり、洗濯物、びしょぬれだよ、って。…そんなの知ってる。

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部屋に入って、タオルを貸してあげる。急いで洗濯物を取り込んで、風呂場まで運んだ。その無残な姿を見て、明日なんとかしよう、と決意する。お腹すいてる？と尋ねると、ううん、と言って、鼻をすすった。どうやらまだ風邪が治っていないようだ。鼻かみな、とティッシュを差し出す。

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ちょっとしか離れてなかったのに、もうこのソファが窮屈な感じが懐かしかった。君はひとしきり鼻をかんですっかり鼻の周りが赤くなっていた。そして、何も言わずにわたしのひざにごろん、と頭を載せた。こんなことは初めてでちょっぴりくすぐったかったけど、頭と額をゆっくりと撫でた。

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もう眠たいからベッドいこう、と肩を揺らすと、うん、と物わかりよく起き上がる。立ち上がって居間の電気を消す。カーテンの隙間から部屋に光が伸びてきて、その光だけを頼りに君に口付けた。おかえり。

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朝、起き上がると君はいなかった。ベッドの下、押入れの中、テレビの裏。どこを探してもいない。風呂場か？と思って風呂場に行くと昨日取り込んだ洗濯物を発見してテンションが下がった。それをベランダにもう一度持って行って、シワを伸ばしながら干した。今日は快晴だ。

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そうして、最後に君を見かけたのは、2週間前、わたしが君に始めて会った、わたしの住むアパートの隣のアパートの入り口だった。綺麗なお姉さんが、君にご飯をあげていたね。結局猫のオスも人間のオスも綺麗なお姉さんが好きなんだ、とむくれてその場を立ち去った。

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もしかしたら君は綺麗なお姉さんのところを渡り歩いて生きてるのかもしれない。もしかしたらわたしに死に目を見られないようどこかの陰でのたれ死んでいるかもしれない。ただわたしのところには、君が移した風邪だけが残った。

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おわり

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すぐこじらせる ※ねこみみ pic.twitter.com/nypsyiCwqV

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