ある日曜日の話

Sagittarius731 @Leoleo731

【ある日曜日の話#1】 どこをどう歩いたか覚えてない。 ふと気がつくと、俺は電車に乗っていた。 あぁ・・・いつかもこうして、あてもなく電車に乗ってたっけ。 ガキの頃からまるで進化してないと自嘲する。 pic.twitter.com/uQ2R22Gjho

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【ある日曜日の話#2】 やる気があるんだか無いんだかよくわからない乗務員の乗り換え案内をBGMに窓に目をやってみる。 海だ。 次の駅で降りて、海の方へ行こうと決めた。

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【ある日曜日の話#3】 潮風の匂いを辿ってひたすら歩く。 意外と遠い。 いつかもこうして海を目指して走った事を思い出す。 ・・・いや、もう過ぎた事だ。 胸に感じたチリっとした痛みを無視して歩く。 pic.twitter.com/GGtfR6hxAr

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【ある日曜日の話#4】 誰ともすれ違わないまま街灯がまばらになって、海へ着いた。 海に無かって一列に電信柱が並んでいる。何とも不可思議な光景だ。 pic.twitter.com/OoiJ73b16d

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【ある日曜日の話#5】 薄暮の時間帯とあいまって、世界はモノクロな色合いになる。 ほぅとついた溜息が、白い筋になって流れていくのを追いながら目を閉じた。 妻を亡くしてから三年になる。

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【ある日曜日の話#6】 あの朝いつも通りに送り出してくれた君と、次に会ったのはICUだった。 現実感が無さすぎて、「あぁそうなんだ」と他人事のように状況をすんなり理解したのをよく覚えてる。 治療の甲斐なく君は息を引き取り、僕は一人になった。

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【ある日曜日の話#7】 全てが終わって家に戻って、リビングのソファに座った瞬間、君の匂いがして、その時初めて取り残されたことを意識したんだ。 当たり前の日々、君の笑い顔、泣き顔、いたずらっぽい顔、最後に会った朝の笑顔、全てが頭を駆け巡って顔をしわくちゃにした。

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【ある日曜日の話#8】 気が付いたら泣いていた。 どれだけ立ち尽くしていたのだろう。 涙の跡をぬぐって顔を上げると、電柱の列が伸びた先の工場には明かりが灯り始めていた。 pic.twitter.com/oiyDPSd9Cc

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【ある日曜日の話#9】 時計を見る。 18:15 そろそろ帰らなきゃ。 振り返ろうとした時、不意に鼻腔をくすぐる嗅ぎなれた匂い。 由佳！？ 振り返ると、そこには確かに由佳の姿があった気がしたんだ。 一瞬しか見えなかったけど、ちょっと申し訳なさげな顔の後、特上の笑顔でこっちを見てた

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【ある日曜日の話#10】 さすがに泣いた。 でも、泣いてるうちに胸の奥が温かくなるような不思議な感じで、今までの沈んだ気分まで流し去ったように、ほっこりした気分になった。

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【ある日曜日の話#11】 考えてみれば今日は六度目の結婚記念日。まさか・・・ね。 基本的に幽霊のタチは信じないけど、この時ばかりは由佳の幽霊だと信じたかった。

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【ある日曜日の話#12】 そうして足を踏み出して帰ろうとした時、お稲荷さんの狐と目が合った。来た時は気付かなかった。 さすがに出来過ぎてて胸の奥が奇妙な高揚感に包まれる。 お稲荷さんの力を借りて、由佳が本当に会いに来てくれたんじゃないかって思って。