悪い魔女の魔法で全裸のオッサンになってしまった姫

需要があるかも知れないのでまとめました。
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U @ebleco

「……というわけで、私は悪い魔女の魔法で姿を変えられた姫なのです」 「全裸のオッサンじゃないか」 「見た目の都合上、このまま正座の姿勢から動く事が出来ません」 「全裸のオッサンにしか見えない」 「どうか、私を元の姿に戻す手助けをして頂けないでしょうか?」 「驚く程やる気が出ない」

2014-09-11 15:05:51
U @ebleco

「とりあえず、服くらいなら都合してやれるけど」 「それはできません」 「何でだよ」 「私は悪い魔女の魔法で全裸のオッサンに姿を変えられてしまいました」 「自覚はあるんだ」 「服を着ると全裸のオッサンではなくなってしまうため……恐らく、私は消滅します」 「すげぇ概念的な魔法だった」

2014-09-11 15:18:30
U @ebleco

「このような醜い姿に変えられてしまいましたが、私は本当に姫なのです」 「『醜い姿』って言ってやるなよ。モデルになった全裸のオッサンに謝れよ」 「この悪い魔法を解いてくれたあかつきには……私は、あなたと婚約してもいいと考えています」 「顔を赤らめても見た目が全裸のオッサンだしなぁ」

2014-09-11 15:23:17
U @ebleco

「で、具体的には何をして欲しいのさ」 「大変心苦しいのですが……」 「いいよ。全裸のオッサンの見た目で遠慮なんかするなよ」 「……あなたの家に、匿って頂けないでしょうか。このままでは、私は路上で正座の姿勢をしたまま動く事が出来ません」 「あー、これは思ってた以上に嫌な提案だなー」

2014-09-11 15:32:02
U @ebleco

「どうか! どうか! 私とて、殿方の家に上がり込む等、恥を忍んで申し上げているのです!」 「全裸のオッサンの姿で言われてもちっとも魅力的じゃない!」 「外見には目を瞑って下さいまし! ちゃんと家事の手伝いも致します!」 「全裸のオッサンに家の中をうろうろされる方がはるかに嫌だ!」

2014-09-11 15:34:21
U @ebleco

「匿って頂いた上にお風呂まで……何とお礼を申し上げて良いやら」 「やめなよ。見た目が全裸のオッサンとは言え、一国の姫が簡単に頭を下げるもんじゃない」 「私の見た目を気にしないなんて、あなたは、とても心のきれいな方ですね」 「いや、結構気になるから、こっちを綺麗な目で見ないでくれ」

2014-09-11 16:01:32
U @ebleco

「正座の姿勢ばっかりじゃ、疲れないのか?」 「確かに疲れます。ですが」 「ですが?」 「私はこれでも、姫なのです。楽な姿勢をとれば、私は心まで全裸のオッサンになってしまうでしょう。……それだけは、耐えられない」 「解った。泣かないでくれ。全裸のオッサンの号泣は見た目的にもつらい」

2014-09-11 16:08:39
U @ebleco

「おかえりなさいませ、家主様」 「感謝をしてくれる姫の気持ちは嬉しいが、玄関先に正座した全裸のオッサンが居るのはつらい」 「……その、どうでしたか?」 「……だめだ。結構遠くまで聞き込んでみたけど、何処にでも居る全裸の中年男性だ。手掛りになるようなもの無かった」 「そう、ですか」

2014-09-11 16:37:22
U @ebleco

「……その、毎日済みません。私の為に」 「どうせしがないフリーターさ。それに、見た目が全裸のオッサンの姫が自分の足で手掛りを探すわけにも行かないしね」 「……本当に、優しい人」 「ん?何か言った?」 「……いえ、何でもありません」 「そっぽ向いても全裸のオッサンなのがつらいなぁ」

2014-09-11 16:41:17
U @ebleco

「もしも、ですよ。もし、私の姿が、このままずっと全裸のオッサンから元に戻らなかったとしたら、どうしますか?」 「そりゃ確かに絶望的だけど」 「……私、こわいんです。このまま、本当に私は身も心も全裸のオッサンになってしまうんじゃないかって」 「わかんないけど全裸のオッサンに謝れよ」

2014-09-11 16:48:48
U @ebleco

「ただいまー」 「姫ー、聞いてくれよー。今日バイトでひどい目にあっちゃってさー……」 「まぁ、ひどい目って言えば、家に全裸のオッサンが住み着いてる状況もひどい状況なんだけど……」 「……何だよ、返事もしないで」 「……姫?」

2014-09-11 17:02:50
U @ebleco

「何処行ったんだよ……こんな雨の日に限って……!! 自分がどんな外見してるのか解ってんのか!?」 「すいませんっ!! ……はぁ、はぁ……この辺りで、全裸のオッサン見ませんでしたか!?」 「――……そうだよ!! 家族だよ!! 可哀想だろ!! 全裸のオッサンでも家族なんだよ!!」

2014-09-11 17:06:11
U @ebleco

――お気の毒にねぇ。 「……勝手に気の毒がってんじゃねぇよ……!」 ――居た居た。女ものの服持って雨の中走ってる全裸のオッサン。 「クソ!! 確かにさ……この雨の中、全裸のオッサン探し回ってる俺は可哀想だろうさ!!」 ――家族の方も大変でしょうに。 「姫! 姫ーっ!!」

2014-09-11 17:13:05
U @ebleco

「――来ないで下さいッ!」 「……なぁ、姫……何でだよ。帰ろう? 確かに、全裸のオッサンの見た目は嫌だけど、別に、もう慣れたから」 「……私は、あなたに甘え過ぎたんです」 「甘えたっていい、だから!」 「もう限界なんです! このままじゃ、私は本当に全裸のオッサンになってしまう!」

2014-09-11 17:17:42
U @ebleco

「……服を着ます」 「やめろ」 「服を着れば、きっと私は『全裸のオッサン』ではなくなって、消えて無くなるから」 「やめろって言ってるだろ!!」 「このまま全裸のオッサンになるくらいなら私は消える!!」 「全裸のオッサンだって生きてるだけマシだろ! あと全裸のオッサンに謝れよ!!」

2014-09-11 17:20:01
U @ebleco

「あなたは、優しい人だから解らないんです! 自分が全裸のオッサンになってしまった苦しみが!!」 「わかるよ! 俺だって超嫌だよ!!」 「こんな姿になって! それでも生きてる方が良いって言うんですか!?」 「やめろ! 両手を広げるな!」 「こんな!」 「やめろって言ってんだろ!!」

2014-09-11 17:28:55
U @ebleco

「……そりゃ、俺だって、家に帰ったら全裸のオッサンが居る生活は嫌だよ。でもさ……例え全裸のオッサンだって、姫は姫じゃないか!! 俺の大切な家族なんだよ!!」 「……っ!?」 「……なぁ、帰ろう? 姫? 俺は、姫が全裸のオッサンだって……すげぇ嫌だけど構わないからさ……嫌だけど」

2014-09-11 17:33:24
U @ebleco

「……本当に……」 「……」 「……どうしようもなく、優しい人(ひしっ)」 「ぐおぉおおおおお!!!」 「甘えてしまうじゃないですか(ぎゅっ)」 「ぐぁああああああ!!」 「私は、あなたの事が……」 「ぐぁあああ!! これは姫! 全裸のオッサンじゃなくて姫!! ぐぉおおおっ!!」

2014-09-11 17:36:17
U @ebleco

「……――好き」 「ぁあああ!! これぎゅっとし返さなきゃいけない奴か!! 相手が全裸のオッサンでも俺の方からもぎゅっとしないといけないやつか!!?」 「――……」 「あぁあーっ!! 思ってたより全裸のオッサンのキス顔つらい!! これ解けるんだろうな!! 魔法解けるだろうな!!」

2014-09-11 17:50:12
U @ebleco

「……という経緯があり、王様はお妃さまとご結婚なされたのです」 「嘘だ」 「ですから王子も、お父様やお母様が証明した、見た目に囚われない美しい心を――」 「いやいやいやいや! 無理だって!! 全裸のオッサンでしょ!?」 「さて、隣国の姫が悪い魔女の魔法に――」 「絶対嫌だよ!?」

2014-09-11 18:04:44
U @ebleco

「……王子。あなたもいよいよこの国の跡継ぎとして、将来の伴侶を探す時期に来ている事は、ご理解頂けますね?」 「解るよ! そりゃ僕も王子だから解るけどさ!」 「では」 「では、じゃねぇよ! この流れだったら絶対全裸のオッサン出てくるだろ!! その手には乗らねぇぞ! 僕は嫌だぞ!!」

2014-09-11 18:07:55