神様と泥人形のお話

1
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL とある小さな世界の神様が、別の世界からやってきた女の子を好きになってしまいました。 神様はある程度のことはできましたけれど、とっても小さい世界の神様でしたので、全知全能ではありませんでした。なので、女の子を、女の子の世界へ戻してあげることが出来ませんでした。

2014-09-14 10:19:10
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL 神様は、自分の世界にいた力ある種族たちにお願いをするために、女の子と旅に出ました。そして一年、女の子と一緒にいた神様は、女の子を好きになってしまいました。 神様は全知ではありませんでしたので、それに気づいたのは、女の子がとうとう帰る、その日のことでした。

2014-09-14 10:21:36
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL 女の子が帰ってしまったあと、なんだか心にぽっかり穴が開いたようになってしまった神様は、旅の仲間だった力ある種族のうち、土くれから生まれた種族に、どうしたらいいのか相談しました。他の種族は、鬱陶しがって、話を聞いてくれなかったのです。

2014-09-14 10:23:50
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL 土くれから生まれた種族は、寄り集まっていないと体を維持できないからか、誰かと一緒にいないと生きていけない弱い種族でしたので、神様のぽっかり穴が空いた心の意味がよくわかっていました。そして、その穴を、土くれで埋めてしまいましょうと、神様に言いました。

2014-09-14 10:25:29
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL 「空いた穴をふさぐには、同じ形のものを用意しなければなりません。土くれならば、そうすることが簡単なのです」言って、土くれから生まれた種族は、自分の住む集落の土くれたちに相談をして、自分たちの体を作る土くれを少しずつ、神様に分けました。

2014-09-14 10:28:03
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL 神様は、もらった土くれを捏ねて、帰ってしまった女の子の形にしようと頑張りました。けれども最初に言った通り、神様は全能ではありませんでしたので、水の配分と土くれの分量を間違えてしまって、出来上がったのは、女の子にすら見えない、茶色の泥人形でした。

2014-09-14 10:30:46
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL 肩を落とす神様に、動き出した泥人形が言いました。 「わたしのあるじ様、どうか気を落とさないで。わたしがお手伝いしましょう。何度もやれば、きっとうまくゆくはずです」 泥人形はどこからか土くれを持ってきて、せっせと捏ねて、水の量を測り、神様を励ましました。

2014-09-14 10:34:21
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL 神様は全能ではないけれど神様でしたので、自尊心を傷つける、失敗した泥人形なんか視界に入れたくもありませんでしたけれど、土くれのことは土くれがよく知っているだろうと思って、泥人形の手を借りて、また、女の子を作ることにしました。

2014-09-14 10:35:56
乃井 @no_el_ty

そんな感じの泥人形と神様のお話。

2014-09-14 10:36:24
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL わたしのあるじ様は、神様です。泥を捏ねて、わたしを作ってくれました。もっとも、あるじ様が作りたかったのは、わたしではなく、あるじ様が恋している、女の子の姿似だったはずなのでした。あるじ様は神様なので、いろいろなことが出来ますけど、全能ではないのでした。

2014-09-14 10:42:38
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL わたしが目を覚ましたとき、あるじ様は目に見えて落ち込んでいらしたので、わたしはあるじ様に、お手伝いをしますとお伝えしました。あるじ様は、なんだか怖い顔でわたしをじっと見たあと、「何が目的だ」と訊きました。生みの親に従うのは当然ですと、お答えしました。

2014-09-14 10:45:32
乃井 @no_el_ty

@sousakuTL 捏ねるのにちょうどいい具合の土くれを差し出すと、あるじ様はようやくわたしを怖い顔で見るのをやめてくださいました。「では手伝え」とおっしゃったので、わたしはなんだか嬉しくなってしまって、ふふふ、と笑いました。あるじ様は、不気味だ、と言いました。

2014-09-14 10:51:22