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伊月遊 @ituki_yu
スタート位置から100kmほど離れた海域に、島風たちは居た。 彼女たちの両手には、既に大きくなった布袋。中にはカレーの食材が詰まっている。 那珂「あったよ!これで三つ目!」 海にぽつりと浮かぶ赤いブイ。そこに括り付けられた大きなカゴに入ったニンジンを掲げながら、那珂が叫ぶ。
伊月遊 @ituki_yu
周囲には他のチームの艦娘もおり、さながら奪い合いの様相である。 隼鷹「よっしゃあ!ニンジンゲット!飛鷹、次は!」 飛鷹「五時の方向!あっち!」 島風「先行して偵察してくる!」 菊月「師匠、お供する!」 目まぐるしく動く艦娘達。2週間の特訓の成果が出たのかチームワークは抜群だ。
伊月遊 @ituki_yu
沢嶋「えー、現在島風達のチームは材料を順当に集めており、既に三つ目までを獲得した様です」 私も本部より転送されたジェットスキーで彼女の後を追う。 他のチームと比べ、かなりのハイペースで材料を集める島風達。 羅針盤のコントロールも正確で、淀みなく次の地点へ進み続けている。
伊月遊 @ituki_yu
隼鷹「あと幾つだ?」 走りながら隼鷹が聞くと、併走する飛鷹は海図を見る。 飛鷹「あと4つ、丁度折り返しね」 隼鷹「よっし、このまま行くぜぇ!」 水しぶきを上げながら、彼女たちは海の上を疾走する。 少し遅れて他のチームも後を追うが、やはり島風達のチームには一歩及ばぬ様子だ。
伊月遊 @ituki_yu
那珂「すごいすごい!この調子だと本当に優勝しちゃうかも!」 隼鷹「おう!このままぶっちぎってやろうぜ!ヒャッハー!」 額に汗を浮かべながらも、彼女達の表情は普段通り明るいものだった。 しかしその中で唯一緊張の色を残す艦娘が一人。島風である。
伊月遊 @ituki_yu
飛鷹「どうしたの?島風」 島風「いや、まだ一度も敵に会ってないなって。ツイてるなって。それだけよ」 飛鷹「・・・まあ、確かにね。周りで戦闘に入った様子も無いし、平和そのものだわ」 島風「このまま平和に終わると良いんだけれどね・・・」 島風は、不安な表情を浮かべて呟いた。

 
 
 
 

伊月遊 @ituki_yu
  島風の予感は当たった。 あれから一時間は経っただろうか。他のチーム達を大きく引き離し、更に二つの食材を手に入れた島風達。 誰もがこのまま行けば勝てる。そう思っていたところで、事件は起こったのである。
伊月遊 @ituki_yu
  古橋(沢嶋さん、沢嶋さん!応答願います!) 手首に巻いた端末機から叫び声。 見ると、タイムナビゲーターの古橋ミナミがホログラムに写り込んでいた。 前を走っていた艦娘達が一斉に振り返り、こちらを見る。
伊月遊 @ituki_yu
隼鷹「おいおいまたかよー」 島風「何よ、早くして」 沢嶋「はっ、はい。すいません。こっ、こちら沢嶋。どうしましたか古橋さん」 背中からの急かす声に押され、私は思わず早口になってしまう。 全員が早くしろと言わんばかりに不機嫌な顔。しかし直後、その表情は彼女の一言で大きく変化した。
伊月遊 @ituki_yu
古橋(大変です!金剛さん達の艦隊が撃破されました!) 沢嶋「えっ!?」 古橋の言葉に、その場の全員が驚きの声を上げてしまう。 どういう事か思わず聞き出すよりも早く、端末に何かの動画が送られてきた。 私はすぐさまそれを再生すると、横で聞いていた艦娘達が一斉にのぞき込む。
伊月遊 @ituki_yu
宙に展開されたホログラムにノイズ混じりで写り始めたのは、つい一時間ほど前に別れを告げた金剛達を含む、第一正規艦隊達の姿であった。 ただしその様子に先程までの凛々しさは無い。体中の装甲全てに傷やヒビが入っており、顔には苦痛の色が濃く浮かんでいる。
伊月遊 @ituki_yu
満身創痍。真っ先に思い浮かんだのはその言葉である。 金剛(oh、ちょっとマズいデース・・・) 長門(くそっ!何故こんな奴がこんな所に!) 霧島(過去のデータに照合無し、この海域には初めて現れたようですわ!なんでこんな時に・・・!) 扶桑(不幸よ、やっぱり不幸なんだわ・・・)
伊月遊 @ituki_yu
皆一様に負傷があり、誰しもが無事とは言えない状態。 その中で霧島が叫ぶ。 霧島(ッ!第二波、来ッ・・・!) 叫び声は轟音にかき消される。 閃光。 映像に大きな乱れが走り、その直後、動画は途切れた。
伊月遊 @ituki_yu
古橋(今から二十分前の映像です。幸い彼女たちに死亡者は居ませんでしたが、全員大破、現在鎮守府に搬送中で予断を許さぬ状態です) 沢嶋「・・・彼女たちに何があったんですか?」 古橋(すいません、そこまではちょっと分かりませんでした・・・) 沢嶋「・・・了解です」
伊月遊 @ituki_yu
私が通信を切り、後ろを振り向くと、艦娘達の戸惑う姿があった。 隼鷹「ど、どういう事だ?」 沢嶋「分かりません。ただ、金剛さん達を何者かが襲ったのは確かな様です」 那珂「襲った、って・・・敵艦って事?」 沢嶋「・・・恐らくは」 唖然とする艦娘達。
伊月遊 @ituki_yu
そこでポツリと、呟くように島風が言う。 島風「・・・あのエセ外人が落とされるって事が、どう言うことか分かる?」 唐突な島風の言葉に、艦娘達は不安げに頭を左右に振る。 島風「あいつらは腐っても第一艦隊よ。つまり、この鎮守府で一番強い奴らだって事」 那珂「そっ、それが?」
伊月遊 @ituki_yu
島風「・・・それを凌ぐ化け物が居るのよ。この海域にね」 その言葉に、話を聞いていた全員が息を飲む。 静かな緊張感が辺りを満たす。 と、甲高い電子音。飛鷹が何か電文を受信したようだ。 全員の視線が集まる中、飛鷹は背中の電文機から吐き出された紙片を一瞥し、すぐに顔を上げる。
伊月遊 @ituki_yu
飛鷹「・・・『シケンチュウシ シキュウテッタイセヨ』。本部からよ。流石の対応の速さね」 那珂「えぇ!?そっ、そんなあ!だってこのままだったら優勝したかもしれないのに!」 隼鷹「馬鹿、命あっての物種だろ?それに命令はもう下ったんだ、さっさと逃げようぜ」 島風「うん、それが賢明」
伊月遊 @ituki_yu
隼鷹と島風の言葉に、那珂はしぶしぶと頷く。 那珂「まあ、仕方ないか・・・」 という呟きと共に、彼女はふいに鎮守府の方へ視線をやる。 それが『そいつ』と彼女たちとの会遇であった。 那珂「・・・え?なに、あれ」 初めに異変を見つけたのは那珂であった。
伊月遊 @ituki_yu
那珂の視線の先。 水平線の境目に、何かが見えた。 菊月「・・・白い、なにかが・・・」 次に声を上げたのは菊月である。 ぼんやりとしていた姿が徐々に輪郭を形作っていく。 隼鷹「いや・・・あれは、あいつは・・・」 ようやく視認出来た時には、彼女たちは皆言葉を失っていた。
伊月遊 @ituki_yu
  輪郭は人の形をしていた。 白い人。 それが第一印象である。 肌も、髪も、指の先までも、全てが病的な程に白い。 しかしその瞳だけは、爛々とした、妖しい光を放っている。 朱と紫を混じり合わせたような、妖しい眼。 それが白の中に二つ、輝いているのである。
伊月遊 @ituki_yu
白い人影は女のようであった。 華奢な体つきをふらつかせながら、ゆっくりとこちらへ近付いてきている。 その身体には、異様なサイズの装備が取り付けられていた。 46cm砲五門、対空6連装機関砲八門、まだある。 余りにも不釣り合いな巨大な鋼鉄の塊を身に付けて、女は悠々と海面を進む。
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