犬一ゃん主催リレー小説第2ラウンド

リレー小説参加者(執筆順・敬称略) 雨音 ケイ ひなた 犬一 続きを読む
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燈乃 @flower_lamp

④ふと周囲を見渡したところで不意に違和感を覚えた。 (ここって、こんなにも人気のない場所だったっけ?) 平日昼の井倉洞は観光客で賑わうとまではいかずとも、ウォーキングをするお年寄りや犬の散歩の定番コースになっていた気がする。なのに今、ここには凪沙以外に人の姿がない。 #犬リ小2

2014-11-08 21:09:26
燈乃 @flower_lamp

⑤変だなぁと思いつつ、近づく程に強くなるひんやりとした冷気を肌で感じながら、薄暗い鍾乳洞に向かって歩く。中を覗き込んだところで後ろから声をかけられた。 「あれ、凪沙さんもここに来ちゃったんだ?」 驚き振り向いた視線の先には、一足先に跳んでいったはずの伊吹の姿があった。 #犬リ小2

2014-11-08 21:10:23
雨音 @amane_te

@kushock ①「魔法庁の職員さんが、公用車で迎えに来てくれるみたいだよ。えーと…。」  学校への連絡を終えた伊吹くんは、携帯電話を片手でパチンと折りたたみながら首をかしげる。 「…つやま…?支所、から…。」 「ああ…津山ね。県北では少し大きな町よ。」 #犬リ小2

2014-11-23 13:00:15
雨音 @amane_te

@kushock ②「それとも、土日の連休だけでも帰省する?凪沙さん実家この辺りなんだよね。」  意外だが悪くない提案だった。だが、私は首をゆっくりと左右に振る。 「うちの家族土日も仕事なの。自営でね。」 「そっか、残念。」 「そういえば、伊吹くんは実家どこだっけ。」 #犬リ小2

2014-11-23 13:01:16
雨音 @amane_te

@kushock ③「僕?金沢だよ。」 「じゃあ、ちゃんと兼六園に到着してたら、近かったんだ…。」 「あ、もしかして、凪沙さんも兼六園選んでたんだ?」  伊吹くんの表情がぱっと明るくなる。 「目標地点の候補で兼六園見つけたとき、ラッキー実家に近い!って思ったんだよね。 #犬リ小2

2014-11-23 13:01:53
雨音 @amane_te

@kushock ④先生にも帰省の許可はとってあったんだけど。」  ああ、さっきの提案は、元々自分の計画だったのか。 「綺麗だよ、兼六園。特に雪の時期は。」 「いいわね、いつか行ってみたい。」 「何言ってるの、いつでも来れるよ。僕たちのこの能力で。」 「…そうね。」 #犬リ小2

2014-11-23 13:03:01
雨音 @amane_te

@kushock ⑤まあ、今回は失敗したけどね、と顔を見合わせ苦笑する。 「僕も、ちゃんと改めてここ来たいなー。」 「いつでも来れるんでしょ?」 「あ、そうだったね!」  二人で並んでぼんやりと座っていると、空がだんだんと明るくなってきた。暖かい風が髪を撫でて行く。 #犬リ小2

2014-11-23 13:04:57
ケイ@鈴村だった者(低浮上中) @vide_boite

①「ちゃんと聞いてなかったけど、伊吹くんの目標地点って何処だったの?ここに着たってことは近くだったの?ちなみに私の目標地点は出雲大社だったんだけど」 目標地点は班ごとにくじ引きで決まっていた。大半が西日本の有名な観光地ばかりで、遠いのが西のグラバー園と東の兼六園だ。#犬リ小

2014-11-25 00:16:37
ケイ@鈴村だった者(低浮上中) @vide_boite

②「えっと…」 伊吹の返答は何やら歯切れが悪く、視線が泳いでいる。 「この近くだったら宮島?でもあそこに行くのは5班だよね?」 くじ引きの時、5班の子達が一番近場が当たり残念がっていたのを思い出す。などと考えていたら、伊吹が視線を合わさないままぼそっと答えた。#犬リ小

2014-11-25 00:16:48
ケイ@鈴村だった者(低浮上中) @vide_boite

③「…え?何処って?」 小声だったため、ちゃんと聞きとれなくて凪沙は思わず聞き返していた。 伊吹は少し言いにくそうな素振りをし、今度は先ほどより大きい声で答えた。 「…兼六園だよ」 「え、ホントに…?」 予想外の回答に凪沙は思わず伊吹の顔を凝視した。#犬リ小

2014-11-25 00:17:02
ケイ@鈴村だった者(低浮上中) @vide_boite

④帰省の話を聞いて東の方かとは思っていたけれど、まさか凪沙が行きたかった所だとは思いもしなかった。 「当たった目標地点が兼六園だったから帰省の予定を立てたんだ。そうでもなければなかなか帰れないしね」 視線に気付き振り向いた伊吹は、目が合って驚き、そして再び目を反らした。 #犬リ小

2014-11-25 00:17:17
ケイ@鈴村だった者(低浮上中) @vide_boite

⑤「だけど飛ぶ前に凪沙さんと行きたい場所の話、してたでしょ?そのせいかここのことばかり考えててそのまま飛んだから…」 徐々に声が小さくなり、最後は口籠るようになったため聞き取れなかった。そして伊吹は頭を数回かいた後、折った膝の上に組んだ腕の中に顔を埋めた。#犬リ小

2014-11-25 00:17:28
ひなた@削除します @hinata_polo

①「お互い目的地と全然違う場所に来ちゃったんだ。伊吹くんなんて里帰りのチャンスだったのに。私も、何で苦手な場所に来ちゃったんだろ。ままならないなあ」残念だったね、と笑うと、伊吹はのそりと膝から頭を浮かせた。口をへの字にしている。「……俺は、ここに来られて、嬉しかったよ」#犬リ小2

2014-12-07 12:13:43
ひなた@削除します @hinata_polo

②言葉と裏腹にむすっとした様子に、首を傾げつつも応える。「地元では有名な観光地だもんね。じゃあ、折角ここまで来たんだから、入ってきたらどう?」言いつつチケット売り場を指さしたが、伊吹は凪沙の顔をちらりと見ただけだけだった。「俺さ、転移能力に目覚めたとき、最初はすっごく#犬リ小2

2014-12-07 12:13:46
ひなた@削除します @hinata_polo

③喜んだんだよね。これでどこにでも行けるぞって。実は何回か試しに飛んでみた事もある」 驚く凪沙に、内緒だよと目配せする。「転移能力持ちの人って、行きたい場所への強い気持ちが現れて力が目覚めるってパターンが多いらしくて、俺もそうだったんだ。でも、何回か飛ぶうちに気づいた。#犬リ小2

2014-12-07 12:13:48
ひなた@削除します @hinata_polo

④確かにあちこち有名な場所とかに行けるのは面白いんだけど、俺が遠くに行きたかったのって、どこに行くかっていうよりも、そこで誰に会うかって方が、大きかったんだって」「飛んだ先に、会いたい人がいるかどうかってこと?」それはあるかも、と凪沙は頷く。自分も今回、実家の近くに#犬リ小2

2014-12-07 12:13:51
ひなた@削除します @hinata_polo

⑤転移してきたものの、両親が不在ならと帰省をやめたのだった。「だから、ここに来られて良かった」 え、と凪沙は目を瞬かせた。「凪沙さん。前に井倉洞の話を聞いてから、もしかしてって思ってたんだけど、今日ここに来て確信したよ。俺たち昔、会ってるよね。この場所で」#犬リ小2

2014-12-07 12:13:55
犬リ小用 @kushock

記憶を手繰るが覚えがない。「え…と、人違……」言いかけて声が途切れた。伊吹の眼が思いがけず真剣でギクリとしたからだ。しかし、もう一つ…(私、この眼知ってる) 「だいじょうぶ!おねえちゃんなら、ぜったい」幼い声が岩壁に当たって響く。鍾乳洞の奥深く。男の子と女の子が #犬リ小2

2014-12-24 02:28:05
犬リ小用 @kushock

手を取り合って蹲っている。明かりは男の子が持ってきたランタン型の電灯だけ。初めての鍾乳洞に夢中になるうちに、大人たちとはぐれ、こんな所まで来てしまった。我に返った時には電燈の明かりも届かない場所にいて、戻りたいけどどう歩けばいいのか分からない。 怖くて心細くて #犬リ小2

2014-12-24 02:28:29
犬リ小用 @kushock

大きな声を上げると、うわんと音が響いてもっと怖くなった。泣き出してどれくらい経っただろう。「ねえ、みんな探してるよ!」突然後ろから声がして飛び上がるほど驚いた。慌てて振り向くとそこには不安そうな顔の女の子が。「いぶき君…だよね?みんな探してるよ。帰ろ?」「おねえちゃん #犬リ小2

2014-12-24 02:28:47
犬リ小用 @kushock

「みちわかる?」「分かんない…」「じゃあおねえちゃんがきたときのは?」「分かんない!どうやったか分かんないもん!できないよ!もうやだあ」糸が切れたように座り込んで泣き出してしまう。「だいじょうぶ!おねえちゃんなら、ぜったい」力強い声に顔を上げる。真っ直ぐな眼が凪沙を見つめていた。

2014-12-24 02:29:29
犬リ小用 @kushock

だれ?どうやってきたの?」「…分かんない。お父さんとお母さんとしょうにゅうどう見てたらみんなが「男の子がいなくなったぞ!」って叫んでて、それで、泣いてる声がしたから、行かなきゃって思ったらここにいたの。ねえ、帰ろ?ここ怖い」言って伊吹の手を取った少女の手は震えている。 #犬リ小2

2014-12-24 02:29:08
燈乃 @flower_lamp

①伊吹が話すには、二人はその後しばらくしてから凪沙の泣き声に気付いた警備員に保護されたらしい。鍾乳洞の外に出るとそれぞれに待ち構えていた両親の元に引き渡され、伊吹が気付いた時には凪沙の姿を見失っていたという。 #犬リ小2

2015-05-08 11:26:54
燈乃 @flower_lamp

②「自分だって暗い場所が怖いのに俺のこと助けに来てくれたおねえさんに、いつかちゃんとお礼を言いたいってずっと思ってたんだ」 確かに凪沙には幼い頃に井倉洞で迷子になった記憶はあるし伊吹の話はきっとその時のことなんだと思われるのだが、 #犬リ小2

2015-05-08 11:27:11
燈乃 @flower_lamp

③「ごめんなさい…私、あまりその時のこと覚えてなくて」 「そっか。まあそうだよね、小さい頃のことだし」おどけた様子で手を振る伊吹の声のトーンが心なしかいつもより低く感じる。 「けど、その男の子のことは覚えてる。というか話を聞きながら思い出したわ」 #犬リ小2

2015-05-08 11:27:31