【フリウォ】ウーヴェとエルフリーデの話

妄想小話です。
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105 @105ws

ウーヴェに嫁はいなくてエル氏は養子だよ派

2014-09-24 09:49:50
105 @105ws

刃物に拳銃なんでもござれ、幼い頃から裏社会で荒れに荒れていたエルフリーデ。年上の舎弟を何人も作り、フラタニティの連中でさえも一目置くような少女だった。その噂に目をつけた中央管理局は、彼女を異例の幼さで咎人として取り立てることを決める。

2014-09-24 09:56:20
105 @105ws

@105ws 管理下に置かれることを嫌うエルフリーデの抵抗むなしく、彼女は独房へ。どのような武器を持たせても扱いがうまく、エルフリーデが参加したボランティアはいつでもほとんど完璧ともいえる出来だった。しかし、その一方では敵味方区別なく斬りつけたり、アクセサリを頻繁に大破させたり、

2014-09-24 10:02:58
105 @105ws

@105ws 苛烈な性格が形を成して現れる。減刑よりもハイスピードに加刑されていく様を、行動を共にした咎人たちは畏怖の視線で見つめていた。 「あいつは人じゃねえ……。もう一度組めだって? 俺のこの背中の傷を見せてやろうか。とにかく、絶対に、御免だね!」

2014-09-24 10:06:30
105 @105ws

@105ws 中央も失策だったかと歯噛みする。咎人ひとりの刑期がどうなろうと知ったことではないが、このペースで資源を無駄にされるのは非常に困る。対策を話し合う局員たちの中から、ユートペディアを検索して古代の家族制度の中で興味深い項目を見つけた者がいた。 養子である。

2014-09-24 10:09:58
105 @105ws

@105ws そうして、模範的咎人たちの中から父親「役」として選び出されたのがウーヴェだった。咎人同士の恋愛を想起させないため、母親役の用意はない。この苛烈さを抑え込めるのは、母性ではなく力であるというのが人員を選定した局員の言だ。

2014-09-24 10:15:03
105 @105ws

@105ws 顔合わせの場で、無礼にも唾を吐くエルフリーデ。 「こんなデカブツがあたしの親父役だって? 冗談じゃない!」 あたしにいつでも殺されそうな親父なんて、と脅しのように振りかざしたナイフを、ウーヴェは掌で捉え、まるで玩具のように刃を折った。エルフリーデの瞳が驚きに揺れる。

2014-09-24 10:21:35
105 @105ws

@105ws 「あまり気乗りのする話でもなかったが、少し気が変わった。お嬢さん、いや、エルフリーデ。今後俺に一撃でも入れられたら、養子縁組の解消を中央にかけあってやろう。それまでは、俺がおまえの親父だ。どうだ?」 そう言って、ウーヴェは初めてにやりと笑みを見せた。

2014-09-24 10:24:44
105 @105ws

@105ws 「上等だ……やったろーじゃん!」 柄だけになったナイフを放り出して、戦意を剥き出しにする幼い狼のように、ぎりりと音がしそうなくらい「親父」を睨み付けた。床に落ちたナイフが、かんらと鳴った。

2014-09-24 10:27:42
105 @105ws

@105ws それからは見事なものだった。ウーヴェは敵の銃弾を避けるのと同じように、エルフリーデの後ろからの射撃を避けた。敵の凪切りを避けるのと同じようにエルフリーデの刃を避けた。ミサイルを撃ち込んでナックルで叩き落とされたときには悪夢が何かかと思ったくらいだ。

2014-09-24 10:31:52
105 @105ws

@105ws 後ろに目がついているのか、なにか仕掛けがあるのかと毒づいてみると、そのたびウーヴェはしかめっ面を崩して笑った。 「おまえの殺気はわかりやすいからなあ」 そして、必ずといっていいほど護送車では説教されるのだ。剣は、銃は、拳は、槍は、人に向けるものじゃあない、と。

2014-09-24 10:35:23
105 @105ws

@105ws そんなある日、いつものなんでもないボランティア。そこで、死角から狙われたエルフリーデを庇って、ウーヴェは瀕死の重症を追う。 「おい、なあ、やめてくれよ。頼むよ。おまえ、まだあたしはおまえに一撃も入れられてないんだぞ。死なないでよ、なあ、親父……!」

2014-09-24 10:43:03
105 @105ws

@105ws 「安心しろ、まだ死にやしない。なにせエルフリーデ、おまえが初めて親父と呼んでくれたんだ」 廃棄物の山に体重を預けて、いつものようににやりと笑うウーヴェ。たぶんこの人は、こんな風にしか笑えないんだろう。 「泣くなよ」 ぽんぽんと、宥めるように頭を撫でる手は大きくて、

2014-09-24 10:47:53
105 @105ws

@105ws とても心地がよかった。 PT 帰還後も昏睡状態が続いていたウーヴェが無事に目を覚ましたとき、エルフリーデはぼろぼろと泣いた。年相応に、大粒の涙をたくさんこぼして。 「もう一撃なんて入れなくていい。ずっとあたしの親父でいてくれ」

2014-09-24 10:52:32
105 @105ws

@105ws 泣きじゃくりながらそう言ったエルフリーデに、また同じようににやりと笑うウーヴェ。 「まだまだたくさん、教えなきゃならんことがあるからな」 よしよしと頭を撫でるその姿は、誰が見ても、親子のそれだった。 おしまい。

2014-09-24 10:55:32