【洋南】嵐の中で

ひな＠復旧中 @newgibbousmoon

ぷるさんはぴばリクで洋南わちゃわちゃ 『オレ、思うんですけど、普段、真面目な奴ほど理性が吹っ飛んだときのキレっぷりは酷いんですよね』 　荒北は頭の中で、いつだったか生意気で負けん気が強く、でも、頭をわしゃわしゃしてやりたくなるかわいい後輩が言っていた言葉を思い出していた。

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@newgibbousmoon （ああ、うん。黒田、おめェの言ってたことは正しかったよ。あん時は生返事して悪かったな） 心の中でちょっとだけ謝っておく。 あの後輩が言っていたのは、おそらく、彼の幼馴染でもある荒北のハコガク時代の後輩……泉田塔一郎のことだったのだと思う。

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@newgibbousmoon 荒北にしてみれば、泉田はまったく手のかからない良い後輩だったので半分以上聞き流していた。 今にして思えば、他の面子があまりにも濃すぎて、あまりにも手がかかりすぎたために相対的に泉田が影が薄くフェードアウト気味だっただけのような気もしないでもない。

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@newgibbousmoon （っつーか、あれはあれで単体で見ると、かなり問題児なのかも） 少なくとも、自分の筋肉に名前をつけている人間を、荒北は寡聞にして知らない。 （問題児ってか、変態っぽい？いやいやいや、泉田はイイ奴だ。ちょっと変わってるかもしれねーけど）

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@newgibbousmoon それよりもずっとずっと荒北に迷惑をかける人間が身近に居すぎた。 （新開とか、東堂とか、福ちゃんとか……それから、真波！） どいつもこいつも大変手を焼かされたものである。 高校時代、密かな荒北の渾名は『チャリ部のおかん』だった。

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@newgibbousmoon 本人が知っているあたりで全然密かではないが。 面と向かって言われれば文句の一つも言うが、そうでなければ別に何も言わない。そもそも、そんな細かいことを気にしていられるほど暇ではなかったのだ……面倒をみなければならない問題児が多すぎて。

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@newgibbousmoon なので、大学に入ったばかりの時、誰の面倒も見なくて良い開放感でいろいろやんちゃしてしまったのは軽い黒歴史である＜高校時代のアレやソレほどではない 入ったばかりの時のそれのせいか、別のせいかわからないが、今は、影で『女王様』と呼ばれてるらしい。

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@newgibbousmoon （別に鞭打ちなんかしないっての） 単に変態に蹴りをいれて踏みにじっただけだ。どこを、とはあえて言わないが。 まあ影で何て呼ばれようとも、本気でそう呼びかけられない限り、放置というスタンスは高校時代から変わらない。 今だってそんなに暇人ではないのだ

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@newgibbousmoon いろいろと思い出に浸ってしまったが、今の問題は目の前にある。 （……別に、コイツラ見捨てても許されるよな） 現在の静岡は、台風の真っ只中だ。大雨、洪水、暴風警報が絶賛発令中で、実は市内の一部には避難勧告が出されているところもある。

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@newgibbousmoon まあ、荒北のこのアパートは山側に位置しているし、側に崖も川もないので何かの被害があるとすれば、屋根が飛ぶとか、あまりの風に一部倒壊の恐れがあるくらいだろう。昭和五十年代に立てられたというなかなかに由緒正しいアパートなのだ。

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@newgibbousmoon 元は家族用のアパートだったので２DKと部屋数がありながらも、最寄り駅から遠いことと坂の上にあること、そしてその古さの三重苦のせいで家賃が格安なのが荒北が気に入った理由だ。 荒北はモノが多くない生活をしているが、自転車のために一部屋とれるのがいい。

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@newgibbousmoon 荒北の部屋は一階の南の角部屋。ちょっとした庭もあって、大家さんからは自由に使っていいと言われている。 ついこの間までは、待宮がナンパした英文科の女にだまされて植えたゴーヤがおそろしいほどに繁茂していたのだが、今は何もない。

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@newgibbousmoon （朝顔とゴーヤ間違えるのバカなんていねえっての） 珍しい色の綺麗な朝顔が咲くからと言われていたのが、実はゴーヤだったというオチだ。ナンパ師を気取るわりには待宮のツメは甘い。 荒北自身は食べれるからゴーヤでよかったとは思ったが。

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@newgibbousmoon （っつーじゃ、ウチに植えるのが間違いだろ、そもそも） とはいえ、金城も待宮もそれぞれ部屋が二階で、庭があるのが荒北だけだったのだから荒北が抵抗したところで結果は一緒だったかもしれない。 とりあえず、ゴーヤ料理のレパートリーはだいぶ増えた。

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@newgibbousmoon （豆腐入りのゴーヤチャンプルーとか、ツナ入りチャンプルーとか、あ、ちくわチャンプルーもいけるよな） チャンプルーのバリエーションが広がっただけとも言う。 （いやいやいや、オレ、そろそろ現実逃避やめて、あれをどうにかしねえとダメだろ）

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@newgibbousmoon 現在、警報発令中なだけあって、横殴りの雨と恐ろしい風が吹き荒れている。 正直、軒先にこうしているだけで荒北はかなりびしょ濡れだ。 だが、風に向かってがなりたてている待宮と、腕を組んで仁王立ちをしている金城は全身濡れ鼠だ。

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@newgibbousmoon 大学での荒北の役回りは、もう『おかん』ではない。 どういうわけか、今ツルんでいるメンツだと、面倒を見られるのは荒北になることが多い。 別に荒北が頼りないというわけではないのだろうが、荒北が何かをする前に先に手をだすメンツがそろっているのだ。

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@newgibbousmoon （金城だろ、待宮だろ、黒田だろ……） 三人ともちゃんと自立しているタイプだ。 自分の事は自分でちゃんとするし、それぞれ別な形で発揮されるが、よく気がついて気が利く。 彼らといると自分が面倒をみられる立場なのは、なかなかに新鮮で面白かったりする。

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@newgibbousmoon なので、こんな風に自分が面倒をみなければいけないのは久しぶりの事だ。 それもまた新鮮ではあるが、正直、見据てて部屋に戻りたい。でもって風呂に入ってベプシを飲みたい。 （あー、そもそも、どうしてこうなったんだっけ？） 荒北は自分の記憶を探る。

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@newgibbousmoon （確か、台風が来るからってんで警報出て、午後が休講になったんだよな） その時点でかなりの雨風だった。 部活の練習日だったのだが、もちろん中止である。 本当なら荒北は居酒屋のバイトがあったのだが、あまりの大雨に臨時休業にするという連絡があった。

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@newgibbousmoon ガソスタのバイトをやってる待宮がスタンドが川沿いにあるので臨時休業で閉鎖するということでフリーになり、家庭教師のバイトだった金城も、生徒の家が避難勧告が出た地域だという事で別日に振替える事になりフリーになったせいで、荒北のアパートにやってきた。

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@newgibbousmoon 何となく自然に荒北のアパートに集まる事になっているのは、荒北のアパートが一番広いからだ。 しかも、チャリで来ても三台とも部屋置きできる。 この二人は自分用の箸と茶碗を荒北の部屋に持ち込んでいるほどで、黒田にはくれぐれも気をつけるように言われている

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@newgibbousmoon （何に気をつけるのか知らねえけど、あいつ、泣きそうな顔で言うからな） わかった、と力強くうなづくのが先輩の役どころというものだろう。 （んで、バイト代入ったばっかだったから、ちょっと奮発したんだよな） 材料を買い込み、宅飲み兼家焼き肉である。

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@newgibbousmoon 明日の休みが見込まれているせいか、閉店間際のスーパーの惣菜コーナーは半額シールが飛び交い。荒北達はレジのおばちゃんに呆れられるくらい買い込んだ。 肉だって合わせれば３キロを肥えていただろう。それに加え、ビールは500ミリ缶を１ダース。

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@newgibbousmoon 金城がもらいものだというワインを抱えてきていたし、待宮も一升瓶をもってきていた。 去年卒業した先輩の形見であるホットプレートをだして、もやしを炒め、市販のタレに漬けた肉をのせれば楽しい焼き肉パーティーの始まりだった。