f_zebra さんのベントとFP放出についての検証

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Flying Zebra @f_zebra

事故の際に大気中に放出され、今なお住民の帰還と正常な生活を阻んでいるFPの大部分は14日深夜から16日にかけて、主に2号機から放出された。制御されたベント操作によらない、格納容器からの直接漏洩は周辺環境に非常に大きな影響をもたらす。

2014-10-08 23:09:56
Flying Zebra @f_zebra

新しい規制基準ではフィルタードベント装置の設置が義務付けられているのはこれが理由だ。ところが、フィルターを介さない従来のベント操作の効果と、それに加えてフィルターを追加した場合の効果が検証されているわけではない。何となく「安心」というだけで、「安全」に効果があるのかは疑問だ。

2014-10-08 23:11:52
Flying Zebra @f_zebra

BWRでは、ベントラインはサプレッションチャンバから繋がっていて、水をくぐらせた上で(スクラビングと言う)大気中に放出することになっている。これでどの程度FPが除去できるのかはデータが少なく評価が難しいが、3号機のベント操作と正門MPの線量率変化から、ある程度推測できる。

2014-10-08 23:12:12
Flying Zebra @f_zebra

ベントのタイミングで線量率は急上昇するがすぐに戻り、上昇前との変化は読み取れない。つまり、濃いプルームが通過する際には一時的に線量率が上がるが、FPが沈着して線量率の背景値が高くなることはほとんどない。スクラビング効果で、気体成分以外のFPがかなり除去されていることが伺える。

2014-10-08 23:13:32
Flying Zebra @f_zebra

後知恵ではあるが、もし仮に近隣住民の避難完了や官邸、保安院の許可を待たず、速やかにベントを実施していれば結果的にFP放出の大部分は避けられ、近隣住民の初期被曝もかなり低く抑えられた可能性が高いと思う。今さら言っても仕方ないが、今後の防災計画を考える際には考慮すべきだろう。

2014-10-08 23:14:42
Flying Zebra @f_zebra

なお、12日午前4時に4μSv/hの線量率上昇をもたらしたのはベント操作ではない。所長が総理、経産相及び保安院にベント実施を申し入れたのは12日午前1:30頃だが、経産大臣がベント命令を出したのは午前6:50、実際に作業を開始したのは午前9:04である。

2014-10-08 23:15:28
Flying Zebra @f_zebra

遠隔操作での弁操作ができず、既に現場は高線量となっていて手動での作業も大きく制約されていたためベント作業はなかなか進まず、最終的にD/W圧力の低下からベントの成功を確認できたのは12日14:54頃だ。では、午前4時の放出は何が原因だろうか。

2014-10-08 23:16:03
Flying Zebra @f_zebra

どの事故調報告にもはっきりとした原因は書いていないが、この時間帯の作業内容は細かく記載されており、そこから読み取ることができる。11日夕方から12日未明にかけて、ICによる冷却・圧力抑制が働いているにしては説明の付かない事象が続き、対策本部は原子炉への注水を試みていた。

2014-10-08 23:17:25
Flying Zebra @f_zebra

電源に依存する通常の注水系統は全て使用不能だったため、ディーゼル駆動消火水ポンプ(D/D-FP)を使って消火水系統から注水しようとしていた。ところが燃料切れ、バッテリー上がりにセルモーターの地絡とトラブルが続き、D/D-FPを用いた注水はなかなか成功しなかった。

2014-10-08 23:18:20
Flying Zebra @f_zebra

そこで、消防車を用いた注水の検討も同時に行われ、12日午前2時頃から津波の瓦礫を撤去しながらタービン建屋大物搬入口付近の送水口の捜索を開始した。ようやく見付けた送水口に消防車のホースを繋ぎ込み、消防車から原子炉への中止を開始したのがちょうど午前4時頃である。

2014-10-08 23:19:18
Flying Zebra @f_zebra

消防ホースの接続部は、気体を密封する仕様にはなっていない。送水口から原子炉に注水できるラインが繋がったということは、逆向きに流れれば原子炉から送水口までFPが出る道ができたことになる。消火水系統には、普通は逆流を防ぐ逆止弁は設置されていない。

2014-10-08 23:20:20
Flying Zebra @f_zebra

この時間帯には他に関係のありそうな作業は見当たらず、2号機からの大量放出に次ぐ規模のFPを放出したイベントは、消火水系統を使った注水ラインを逆流した、1号機原子炉容器からの直接放出であった可能性が高い。つまり、スクラビングは効いていない。

2014-10-08 23:20:43
Flying Zebra @f_zebra

所長が格納容器圧力異常上昇と判断したのは12日午前0:49なので、そこから速やかにベントに向けた操作を開始していたとしても、消防車を用いた注水開始より前にベントが成功していたかどうかは分からない。しかし、ベントの目処が立っていれば低圧注水はベント後にしていたかもしれない。

2014-10-08 23:22:08
Flying Zebra @f_zebra

また、FPの大部分を放出した2号機では1号機が水素爆発を起こした12日夕方にはいずれベントが必要になると判断し、準備に着手している。何度かラプチャーディスクを除くベントラインを構成していながら、弁を開状態で固定できないことから何度もやり直しを強いられている。

2014-10-08 23:23:32
Flying Zebra @f_zebra

しかも、官庁等への被曝影響評価の説明や避難状況の確認を待ったり、班目原子力安全委員会委員長からベントより減圧・注水を優先するよう連絡が入ったりと、現場の外からも邪魔が入っている。この時期(12日以降)、現場実態からかけ離れた具体的な要求が官邸等から頻繁に出されている。

2014-10-08 23:25:14
Flying Zebra @f_zebra

ベントの実施は官邸や保安院の許可を得るまでもなく、東電の役員判断でできることになっていた。従って東電に大きな責任があるのは当然だが、現場の実態も非常時のルールも無視して混乱を助長した当時の政府首脳は大いに反省すべきだと思う。

2014-10-08 23:25:45
Flying Zebra @f_zebra

2号機で速やかにベントが実施できていれば、大規模な放出は避けられた可能性が高い。1号機での消防ホースからの漏洩が避けられなかったとしても、発電所敷地外での線量率は強制避難が必要なレベルに達することはなかっただろう。1~3号機の全てが炉心損傷したとしても、である。

2014-10-08 23:48:06
Flying Zebra @f_zebra

当時はベントの際のスクラビングがどの程度効果があるのか、確かなことは誰も知らなかったのだから、後知恵での批判はフェアではない。ただし、今はそれが分かっているのだから、その知見を踏まえてリスクを最小化するにはどうするべきかを冷静に考えなければならない。

2014-10-08 23:48:23
Flying Zebra @f_zebra

フィルタードベントでスクラベングで取りきれないFPの気体成分がどの程度除去できるのか分からないが、短半減期核種が支配的な気体成分だけであれば、タイミングを制御できるベントなら屋内退避でやり過ごすのは難しくはない。リスク低減のインパクトは大きくはないだろう。

2014-10-08 23:49:01
Flying Zebra @f_zebra

過酷事故が起きた後のリスクに大きなインパクトがあるのはむしろ、避難のタイミングと規模をどのように決めるかといったソフトの部分だ。1F事故では震災当日の21時に3キロ圏の住民に避難指示が出ているが、この時点ではまだ発電所の敷地外では線量上昇は起きていない。

2014-10-08 23:50:14
Flying Zebra @f_zebra

過剰な強制避難が被曝以上に大きな被害をもたらすことはチェルノブイリ事故の貴重な教訓の1つであったが、残念ながら1F事故では活かされることはなく、その教訓を再確認し、補強する結果になってしまった。避難指示が10キロ圏に拡大された12日早朝でも、避難が必要な線量率ではなかった。

2014-10-08 23:51:36
Flying Zebra @f_zebra

2号機からの大量放出で線量率が急上昇したのは14日深夜だ。10キロ圏の避難指示がこのタイミングであれば、避難途中に被曝する量は増えただろう。しかしそれで上乗せされる健康へのリスクは、統計では検知できないほどに小さい。そして3日間あれば、十分に準備して無理のない避難ができたはずだ。

2014-10-08 23:52:19
Flying Zebra @f_zebra

12日早朝時点で何の準備も計画もないまま強制的に避難させられる混乱の中で、高齢者を中心に多くの方が命を落とし、また健康を害した。過剰な避難は、過小な避難(極論を言えば、全く避難しない場合)よりも遙かに多くの人を死なせ、苦しめる可能性があることを忘れてはならない。

2014-10-08 23:52:52
Flying Zebra @f_zebra

原子力災害に限らず、発生頻度は低いがインパクトが大きな災害において、少しでも多くの命を守り、安全と健康を確保するためには感情に流されず、リスクを冷静に分析する必要がある。私たちの感情は、リスクを正しく認知することはできない。感情で動けば、必ず危険は増す。

2014-10-08 23:54:20
Flying Zebra @f_zebra

原子力を全廃してしまえば、もちろん原子力災害のリスクは心配する必要がなくなる。感情的には、その方が「安心」だろう。ところがこれまで原子力の利用を前提に動いていた社会で巨大なエネルギー源を放棄すれば、どこかに必ずしわ寄せが行く。そしてそれは、新たなリスク要因となる。

2014-10-08 23:56:34