幼女将軍とトンチの百休

松原剛🚑｜🍬💭｜🍑🐖「魔王令嬢の教育係」コミカライズ連載中 @matubarap

ドＳロリ 一発逆転 高速道路でカーチェイス #フォロワーさんの好きな要素を可能な限り詰め込んだショートストーリーを書く 映画終わったら書くつったけど、これで今からやりますわ

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１・時は室町。おれ、百休は、いつものように足利将軍邸、謁見の間に呼び出されていた。呼び出したのは当代将軍、足利将子・９歳（数え年）。以前町である事件を解決して以来、おれに眼をつけ、何かとちょっかいを出してくるのだ。彼女の後ろに屏風があるのを見て、おれは、おや、と思った

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２・ずっとにまにま顔のショウコちゃん「この虎が夜な夜な人を襲うの」とゆったり言った。やはりこれは、先日おれが既に言い負かした難題ではないか…。するとショウコちゃん、我慢の限界とばかり破顔し「でも最近引きこもってるの！でも怖いわ！やる気のない内に引きずり出して退治して！」と言った。

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３・ショウコちゃん、両手で口元を押さえると、ぷー！と笑い、脚をぱたぱたさせながら「どう！？できない！？できないでしょ！アンタってやっぱりだめね！」将軍様、楽しくてたまらないご様子であらせられる。だが、「ああ、いいっすよ」と言うおれの返答に、動きと声を止めた。やはりこんな浅知恵か。

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４・ショウコちゃんの反論は読んでいた。むしろあえて作った穴だったが、反撃を思いつくまで数日とは、いやはや、ショウコちゃん、子供とは言え鈍い。おれは屏風に近づき、右手で絵の「双頭の虎」に触れると、左手で懐から巻物を取り出し念じた。果心居士を名乗る老人直伝のとんちである。虎は現れた。

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５・ショウコちゃん「ふええ…」とへたり込むと失禁した。「おやおや、刺激が強かったですかね」おれは、お返しとばかりにやにや笑いながら近づいた。しかしショウコちゃんに蹴倒され、小水の溜まりに顔を突っ伏し倒れこんだ。これで悦ぶ性癖はおれにはない。顔をしかめる。

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６・「ちがうもん！このために油断させようとしたんだもん！」頭をぐりぐり踏みつけられる。「なによ、こんなもの！」「あっ！」油断した。ショウコちゃんに巻物を取られた。瞬間、今まで大人しくしていた双頭の虎が目を剥き、その一方の頭がショウコちゃんを咥えると走り去った。巻物は制御装置なのだ

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７・いつものやり取りと、微笑ましく見ていた重臣達、にわかに殺気立つと、おれに白刃を突きつけた。体中冷や汗が流れるのを感じながら、自分に冷静になれと言い聞かせた。こんな時こそトンチの見せ所だ。「あの虎は、呼び出した私にしか退治できません！」デタラメだが彼らの心に戸惑いと隙が生まれた

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８・すぐさまおれは、邸宅や近隣の荘園中の牛車引きの牛を集めるよう指示を出した。「はい！」と従う重臣達。場は掌握した。これでショウコちゃんを助ければ、後はどうにでもなる。虎は物凄い速度で逃げてゆく。おれは集めた牛をすべて一台の牛車につないだ。

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９・牛一頭で一牛力、二頭で二牛力。牛を増やすほど牛車を引く力は増す。百牛力のこの牛車は、通常の牛車の百倍の速度で走る。トンチを使うまでもない、実に単純な算術である。おれの百牛車が虎を追う。虎は小路を走りぬけ、高速牛車専用路へと侵入した。

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１０・走る虎、追うおれ。虎は剃刀曲り道を絶妙な減速で駆け抜ける。だが、こちらは百牛力の牛車、精密性も通常の牛車の百倍（これまた単純な算術なので、あえて語るのも野暮ではあるが）。とうとう虎に並んだ。「年貢の納め時…いや、ショウコちゃんの納め時だ！」だが次の瞬間、虎が牛を食った！！！

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１１・しまった！虎が牛一頭を食えば、こちらは九十九牛力になり、あちらには一牛力が加算される。くどいようだが、単純な算術である。二頭、三頭、四頭…。次々に食われてゆく。「ええい、ままよ！」おれは牛車を引く牛を食いだした。五頭、六頭、七頭…。虎より先に、こちらに力を加算させるのだ！

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１２・平衡を逸した牛車が宙を舞い、虎に襲い掛かる。虎は減速もせずにこれをかわす（奴も、牛を食った分だけ、精密動作性が向上しているのだ）。だがおれの狙いはその先！牛車の影から、おれ自身が虎に飛び掛る！しかし手は宙を切る。ここで離されてはおしまいだ！おれは必死で虎の尾をつかんだ。

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１３・虎はなおも減速せず走り続ける。だが地面を転がりながらも、おれは尾を離さない。よし、これで…。だが次の瞬間、虎の一方の頭が、ショウコちゃんを飲み込んだ！！

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１４・おれは焦った。ショウコちゃんの命が不安だからではない。虎はショウコちゃんを丸呑みした。通常の虎も、一番のごちそうを巣へ持ち帰ってから食べる。その際、運搬用に獲物を噛まずに丸呑みする事がよくあるのは常識である。その場合、消化が始まるまで半刻はある。おれが心配したのは別の事だ。

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１５・牛を食った虎は、一牛力を得る。ならば、一ショウコちゃんを食った虎は、一ショウコ力を得る…。算術的思考の当然の帰結だ。あの性格の悪いショウコちゃんの力が加わったら…。次の瞬間、おれは何かが頬を掠めるのを感じた。はるか後方で、ずずん…、と、民家が切断され崩れ落ちた。虎の尿である

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１６・虎が後方へ尿を飛ばすのはよく知られている。その水圧は低硬度の鉱物ならば切断出来る程である（古代中国で、美術品の加工に虎の尿が使われていたのは、今更説明するまでもない）。だが今の威力は、金剛石をも切断する程。尿とはショウコちゃんらしい…。尾に捕まっているおれは格好の的である！

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１７・「ぐわあっ！！」おれは左腕に熱さを感じた。おれの左手が、虎の尻尾をつかんだまま、おれからどんどん遠ざかる。おれは地面に何度も叩きつけられる。そのたびに、視界の端に切断された左腕が何度も入る。やがてそれも終わり、地面に崩れ落ちたおれに、虎がゆっくりと頭を向けた。

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１８・虎がおれに飛び掛かる！だが、この瞬間を待っていた！！虎がショウコちゃんを咥えていた時には、巻き込む恐れがあった。おれが尻尾に捕まっている時には、ゆれて安定しなかった。だが今なら、その気兼ねは一切ない！！この瞬間こそが、おれのトンチが狙っていた瞬間であった。

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１９・おれは右手を懐に入れると、ウージーサブマシンガンを取り出した。密かに構築したコネクションをフル活用し、シチリア海を拠点とする元寇と、春画で取引をしたのだ（室町に春画とは、時代考証がおかしいと思う向きもあろうが、春画の原型が室町時代には既にあったのは、研究家には常識である）

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２０・だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ

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２１・１分間ごとに６００発の、９×１９ｍｍパラベラム弾が、虎の頭部を削り取っていく。虎が絶命し、地面に倒れると、これまたシチリア元寇から手に入れたネイビーナイフで、虎の腹を切り裂いた。ショウコちゃんが現れた。消化液で服が溶け、ほぼ全裸になっていたが、体は無事のようである。

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２２・数分後、ショウコちゃんが目を覚ました。おれの左腕がないのを見ると、一瞬青ざめ涙を浮かべたが、すぐ普段の生意気な顔になると「あんたには、それがお似合いね」と、左腕の切断面に尿をぶっ掛けてきた。

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２３・幼い女児の尿に殺菌・消毒作用があるのは常識であり、むろんおれは知っているし、ショウコちゃんにも、以前、話した事があったが、それは忘れているフリをした方がよさそうだ。太陽がきらめき、ショウコちゃんの尿に虹がかかった。　完