マニューバ・バトル・オフ・サイレントヒル 後編

護衛とはなんだったのか
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2014-10-16 21:00:32
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss を使用していただけると大変ありがたいです。宜しければ暫くの間、お付き合い下さいませ)

2014-10-16 21:01:15
劉度 @arther456

【マニューバ・バトル・オフ・サイレントヒル】後編

2014-10-16 21:02:30
劉度 @arther456

「誤差修正右3度。風向き、向かい風3m……」呟きながら、陸奥は背中の砲塔を動かす。46cm砲の砲口は、佐世保の旗艦である千歳と、その護衛に向けられていた。「撃てェーッ!」一声に応え、6門の46cm砲が火を吹く。先頭を進む榛名の周りに、波紋と呼ぶには大きすぎる波が巻き起こった。 1

2014-10-16 21:03:38
劉度 @arther456

飛沫が収まり、相手の艦隊が再び姿を現す。「至近弾2発は入ったはずなのに。流石ね」弾着の結果を見た陸奥は、ほとんど無傷の敵艦隊に舌を巻いた。先頭を往く榛名の艤装にはペイント弾の痕がついているものの、とても損害といえるようなものではない。 2

2014-10-16 21:07:27
劉度 @arther456

榛名改二。金剛型艤装最後の第二改装モデルだ。他三隻がほぼ同時期にロールアウトしたのに、榛名の改造は大幅に遅れた。その遅れの原因は、調整に調整を重ねた榛名設計陣の拘りである。結果生まれたのは、対艦・対空2つの防御と、幸運を兼ね備えた守護艦娘であった。 3

2014-10-16 21:10:47
劉度 @arther456

「水雷戦の距離に入るわ!電ちゃん!不知火!援護よろしく!」「なのです!」「了解」陸奥の陰から電と不知火が飛び出す。それに応じるように、向こうからも叢雲と陽炎がやってくる。「陽炎は私が止めます。電さんは、叢雲を」「わかりました!」二人は左右に分かれる。 4

2014-10-16 21:14:00
劉度 @arther456

「来たわね、沈みなさいっ!」砲撃距離に入った瞬間、すかさず叢雲が発砲!「はわっ!」電は慌ててこれを避ける。だが叢雲は両手に持った高角砲を次々と発射、電に息を整える暇を与えまいとする。しかし電とて最古参の艦娘である。僅かな隙を縫って魚雷を装填、叢雲に向けて放つ! 5

2014-10-16 21:17:19
劉度 @arther456

「ちいっ!」航跡の残らない酸素魚雷、それを避けるには思い切ってその場から完全に離れるしかない。移動しながらも叢雲は撃ち続けるが、狙いは荒くなる。電もそれを承知の上で、高角砲を撃ちながら追いすがる。互いに円の軌道を描きながら撃ち合う、ドッグファイトの形になった。 6

2014-10-16 21:20:43
劉度 @arther456

次弾装填しながら、電は周りの様子を窺う。陸奥は榛名と至近距離で殴り合い、フラッグ艦である隼鷹は他の艦に狙撃されない場所にいる。二人は問題ない。だが、不知火の動きが鈍い。攻撃にいつものような切れ味がなかった。手加減している。でも、どうして?不知火らしくない。 7

2014-10-16 21:23:57
劉度 @arther456

「よそ見してんじゃないわよっ!」「はわっ!?」一瞬の疑問が命取りになった。緩くなった弾幕を掻い潜って叢雲が肉薄、電の頭に槍を振り下ろす!スパァン、と気持ちのいい音と共に、電の頭がはたかれた。近接艤装のダメージを無効化するハリセン・ギミックが発動した音だ。 8

2014-10-16 21:27:13
劉度 @arther456

『デデーン。電、アウトー!』大破判定を告げるアナウンスが洋上に響く。これで5対6、均衡が崩れた。「榛名!援護するわよ!」陸奥の側面に向け、叢雲は砲撃をかけた。もちろん、戦艦の装甲を小口径砲で抜けるとは思っていない。しかし小さなダメージも蓄積されれば大破に繋がる。 9

2014-10-16 21:30:26
劉度 @arther456

「くっ!」叢雲の攻撃に気を取られた陸奥を、榛名の掌底が打つ!陸奥はこれを腕でガード、カウンター気味にジャブを放つ。当たったが、浅い。連撃をかけようにも叢雲が狙って――「しまった!」叢雲は砲撃を止めて、隼鷹の方に向かっていた。追いかけようにも、榛名が邪魔だ。 10

2014-10-16 21:33:38
劉度 @arther456

「喰らいなさいっ!」「ひええーっ!」叢雲の砲撃が隼鷹の足元をかすめた。危険な距離だが、叢雲の表情は冴えない。隼鷹が酔っ払ったように走るので、狙いが定まらないのだ。「っええい、フラフラと……!」次弾装填、立ち止まって狙いを定めていると、頭にバシャリと冷たいものがかかった。 11

2014-10-16 21:37:00
劉度 @arther456

「……え?」叢雲の銀髪が、カラフルに染まっていた。ペイント弾が着弾した色だ。『デデーン!叢雲、アウトー!』見上げると、艦載機の式神が上空を旋回していた。「ハァ!?ちょっと待ちなさいよ!隼鷹、あんたそれ反則でしょ!?」「えー、何の話ー?」「しらばっくれんなぁ!」 12

2014-10-16 21:40:28
劉度 @arther456

『こらー、早く海域から離脱しなさい』「元帥殿!お言葉ですがあの軽空母は反則を……」『反則じゃない。よく見ろ』「何を……あ」目を凝らした叢雲は、式神にフロートが付いていることに気付いた。艦載機ではない。水上機だ。そしてそれを扱える艦娘がいたことを、叢雲は思い出していた。 13

2014-10-16 21:43:42
劉度 @arther456

叢雲が大破判定を受けた頃、妙高もまた、頭上の飛行機に悩まされていた。「空母が無いから航空戦は無いと思ったか!これこそ航空巡洋艦じゃよ!」執拗に爆撃を狙ってくるのは、利根から射出された試製晴嵐。直撃すれば重巡でもただでは済まない、脅威の水上爆撃機だ。 15

2014-10-16 21:47:15
劉度 @arther456

「考えましたね……!」空母の艦載機が無く、水上機が撃墜されないこの特殊な状況だからこそできる戦略だ。「本当はヴェールヌイと一緒に対潜攻撃に使うつもりじゃったがのう!」潜水艦で隠密作戦をしてくるという横須賀提督の読みは外れたが、結果的に晴嵐を積んだことは功を奏した。 16

2014-10-16 21:50:41
劉度 @arther456

叢雲の抜けた穴を埋めに行きたいが、それでは利根がフリーになる。「致し方ありません……まずは、貴方を倒させていただきます!」「応!やってみよ!じゃがカタパルトも万全になった我輩、例えお主が相手でもそう簡単にやられはせんぞ!」 17

2014-10-16 21:54:02
劉度 @arther456

利根と妙高が戦闘を再開した頃、神通とヴェールヌイの戦いは決着がついていた。『ヴェールヌイ、アウトー!』「ンー、マツオバショウ……」白い服を虹色に染めたヴェールヌイが、プカプカ海面に浮いている。「うんと勉強して偉くなれよ」少女の健闘を讃えた神通は、すぐさま走りだした。 18

2014-10-16 21:57:24
劉度 @arther456

神通が駆けつけたのは島の反対側、隼鷹のいるところだった。硝煙をくぐり抜け、隼鷹に向けオート5型連装砲を発射!「うえっ!?」ペイント弾が袴を濡らす。慌てて振り返った隼鷹が見たのは、頭の鉢巻に探照灯を括りつけ、何かに取り憑かれたような形相で突撃してくる神通の姿だった。 19

2014-10-16 22:00:50
劉度 @arther456

「た、た、た、祟りじゃああああ!」隼鷹が腰を抜かしながら逃げ出す!。「お前んとこにはもともと恨みも持っとらんじゃったが、演習じゃから殺さにゃいけんようになった!」「こらえてつかあさい!こらえてつかあさい!」逃げる隼鷹と追う神通、二人とも叫びは意味不明! 20

2014-10-16 22:04:06
劉度 @arther456

「俺の勝ちだ」呟く佐世保提督の口元には、勝ち誇った笑みが浮かんでいた。「あいつは一晩の夜戦で30隻の深海棲艦を轟沈させた、俺の艦隊最強の……いや、日本最強の夜戦戦士だ。一度食らいついたら二度と放さん」「うちの部下の川内の方が夜戦バカだよ!」呉元帥の声は無視される。 21

2014-10-16 22:07:27
劉度 @arther456

『おっかない軽巡だねえ』横須賀提督からの通信。「そちらの負けだ。逃げられはせん」『ああ。いつかは追い詰められるだろうよ。だけどウチの隼鷹を甘く見ないでほしいね』「何だと?」佐世保提督がモニタに目を戻す。その視線が、画面内で縦横無尽に動きまわる隼鷹を凝視した。 22

2014-10-16 22:10:44