Jシャルの愉快な珍道中3

従者の日記【@J_diary_】さんを読み直し用に(勝手に)まとめてみたその3 ※また編集します
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ブロック11

従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】それほど時間はかからず小さな町に辿り着けた。異様なブロックの後だったため普通の町でほっとしたが、まだ昼間だというのにすれ違うひとが皆カンテラを提げていて、おまけに明かりもつけているのが不思議でならない。特別な祭か行事の日なのかと思ったが、そういうわけでもないようで。

2013-11-28 22:15:08
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】夜暗くなると町じゅうが明かりで溢れて美しい。昼間は気づかなかったが、人びとのカンテラの光にはさまざまな色があるようだ。明るさもそれぞれ違う。そして、彼らは僕らと似ているものの異なる種族らしい。男女共にやけに長い髪の者が多く、暗闇では髪そのものが淡く光を放っていた。

2013-11-30 00:24:11
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】立ち寄った食堂にカンテラを持っていない青年がいた。向こうもこちらに気づいたようで、話しかける前に席を隣に移してきた。彼は元々僕らと同じように旅の者だったが、この町を気に入って数年前から住み始めたのだという。どこか変わり者の雰囲気ではあるが、悪い人物ではなさそうだ。

2013-11-30 23:23:34
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】カンテラの光は可視化した心なのだと、彼は本気なのか冗談なのか分からない声で言っていた。ああしてカンテラに閉じ込めておかないと、すぐどこかへ行ってしまう。そして身体から離れすぎると、主は抜け殻のようになってしまうのさ、と。心がなべて美しいとは、僕にはとても思えないが。

2013-12-01 22:50:20
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼の話が本当だとすれば、この種族はカンテラを遠ざけられればどんな屈強な者でも戦意を失ってしまうということだ。肌身離さず持ち歩かねばならないとは、なんて厄介なのだろう。とてもじゃないが争い事には向いていない。驚くほどに治安が良いのは、同族間における結束の強さの表れか。

2013-12-02 22:15:25
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】事件など起こらなさそうな平和なところだが、全く何もないわけではないらしい。町外れにぽつんと建つ家に、カンテラを盗まれてしまった少女が住んでいるという噂を聞いた。心泥棒、というと色恋沙汰のようだが、感情を奪われたとなれば事は深刻だろう。町を出る前に立ち寄ってみようか。

2013-12-03 22:39:58
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】噂の家に着いてみると、小さな庭で花に水をやっている少女がいた。髪も肌も服も白く、淡い色の瞳をした彼女からは、どこか人形じみた印象を受ける。そして少し経ったところで、この間の青年が現れて何か話しかけているのが見えたが……どういうことだろう。あまり疑いたくはないけれど。

2013-12-04 23:24:11
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】違和感を覚えたのはシャルル様も同じだったようだ。会話(といっても一方的)の内容は分からなかったが、青年の眼差しは憎んでいる相手に向けるものではなかったように思う。それでもシャルル様が「なんだかこわい」と感じたのは――反応のない少女に対し、彼の態度が自然すぎるのだ。

2013-12-05 22:50:59
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】「お人形遊び」というシャルル様のたとえを聞いて、はっとすると同時に背筋に冷たいものが流れた。愛情に種類があるとすれば、青年が少女に向けるそれは、人間に対してというよりは所有物に向けるものに近いのだ。彼はきっと、この状況を好ましく思っているのではないかと感じてしまう。

2013-12-06 22:46:58
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】青年のほかには少女を訪ねる者はないようだし、彼が害を加えているわけでもない。愛情(と思われる)に狂気じみたものを感じるのは周りだけで、ふたりの関係はあれで上手くいっているのかもしれない。カンテラの行方は一向に分からない。あの状態になり、彼女は婚約を破棄されたそうだ。

2013-12-07 23:25:34
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】そもそも彼が旅をやめたのは、この町が気に入ったからではなく彼女が気に入ったからなのではないだろうか。何をされても反応のない少女なんて、治安が良くとも誰かに守られていなければどうなっているか分からない。心を取り戻すことが本当に彼女にとって幸せなのかは――難しい問題だ。

2013-12-08 22:13:50
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】青年がやってきたのは少女がカンテラを失った後だったと聞き、正直ほっとした。どうやらその点に関しては余計な疑いだったようだ。彼女の婚約者は既に他の者と結ばれているという話だし、彼が犯人でないなら少し愛し方が変わっているというだけで……あれ、今、何か引っ掛かったような。

2013-12-09 22:13:40
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】ああ、やはり思った通りだった。疑うべきは青年のほうではなかったのだ。しかし、ここからどうするか。もしまだ彼の元にカンテラがあるとして、持ち出したら疑われるのは青年だろう。それに元々奪われたものだからといって、シャルル様を連れている今、僕が盗みを働くわけにはいかない。

2013-12-10 23:18:14
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】「とっくに売り払った」とのことなので、悩んだ末青年を呼び出した。現れた彼は至極常識的な人間で、少女のため狂人を演じつつ情報収集していたことを聞いた。自分は彼女の安全を考えると町を離れられない、もし旅先で見つけたらでいいから手を貸してほしい、と頭を下げられてしまった。

2013-12-11 22:06:49
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】何故他人でしかない彼女のためにそこまでするのか、などと聞きはしないけれど、全ての言動の理由となりえてしまう愛や恋というものが僕には未だによく分からない。青年は僅かな望みを僕らに託し、狂人を演じて生きてゆくのだろう。カンテラが戻れば今の関係が崩れるかもしれないのに。

2013-12-12 22:04:46

ブロック12

従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】「壁」を越えると気温がぐっと下がった気がした。夜中というのもあるが、吐く息が少しの間白く残る。見つけられた宿は古くてすきま風が酷かったものの、シャルル様が一緒だったせいか暖炉のそばに呼んでくれたりスープを振る舞ってくれたりした。他の客もいるようだがよく休めそうだ。

2013-12-13 22:26:24
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】やたらガタイのいい客がいるなとは思っていたけれど、何気なく顔を見て戦慄した。一刻も早くその場を離れたかったが視線がぶつかってしまい、相手が自分を忘れているなんてこともなく、じろじろ見られたあげくに彼だけが使う名で呼ばれた。あくまで他人のふりを貫けばよかっただろうか。

2013-12-14 23:15:15
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼は僕がこの名前を持つ前に仕事で出会った傭兵仲間だが、手入れされた槍を見るにまだ現役で稼いでいるようだ。どこの軍にも属さないやり方も昔から変わっていない。腕は立つし悪い男ではないのだが、人を殺める行為を武勇伝のように語る節があるのでシャルル様と話してほしくはない。

2013-12-15 23:26:27
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】じゃあお友達なのね、と嬉しそうに言うシャルル様に返す言葉に迷っているうちに、彼が勝手に喋りだすものだから思わず口を塞ぎそうになった。本人は褒めているつもりなんだろうが余計タチが悪い。昔の自分の話なんて血生臭いものばかりだ。町までついてくると言うしもう嫌だ頭が痛い。

2013-12-16 22:12:25
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】ふたりからそれぞれ違う名で呼ばれ、敬語を使ったり使わなかったりという返事をし、なんだろう、彼のおしゃべりを抑え続けていたせいもあってか変なふうに疲れてしまった。無理やりに過去の自分を思い出させられているようで、しかし彼のように誇れるものなど何もなくて、参ってしまう。

2013-12-17 22:13:38
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】平和だと傭兵稼業は務まらなくて困る、と彼は笑って言っていた。確かに、中には生活に窮して仲間と共に事件を「起こして解決」するような者もいたのを覚えている。……しかし、お前は何のために傭兵をしていたのか、なんて何故聞かれたのだろう。食い扶持としか答えようがないのだが。

2013-12-18 22:54:40
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】久々に魔物と呼ばれる生き物を目にしたが、こちらに気がついていないようだったので今にも仕掛けにいきそうな彼を引き止めたところ、「変わったな」と言われて昨日の質問の意味を理解してしまった。理解したのに否定できなかったのは――きっと、僕自身も本当はそう感じていたのだろう。

2013-12-19 23:19:00
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】ひとを傷つけておいて生き甲斐だとか快感だとか、そういう感覚が自分の中にあったのだとしたら――あるのだとしたら、それは従者として以前に人間としてどうなのか。彼はもうずっと前に考えて、自覚して、受け入れていたのだろうか。今日はシャルル様の顔がちゃんと見られなかった。

2013-12-21 00:11:24