設営文学なる試み

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

設営勧誘ツイッター小説という新ジャンルを開拓しつつ現実逃避

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

設営短歌や設営俳句も成立するに違いない

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

文学フリマの朝、僕の留守番電話にこんな音声が入っていた。「設営に来てくれ、頼む、机も椅子も今回は増えた、なにしろ暴力的な数だ、お前の力が、必要なんだ……」僕はそのメッセージをすぐに消した。僕は小説を売るだけだ。設営なんて僕には関係ないさ。 #bunfree #twnovel

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

設営を終えた文学フリマの会場に入ってきた彼女は、そこにいた汗まみれの僕を不思議そうな顔をしながら見てこう言った。 「キミ、何してたの?」 「設営」 「何それ?」 彼女はボウリングのピンみたいに自動的に机が並ぶと本気で思っている。 「別れよう」 #bunfree #twnovel

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

私は部室のみんなに呼びかけた。「設営、私たちも行かない?」「朝は弱いんだ俺」「私も」「僕も」予想通りの反応だ。一人で行く気はないから私もそうしよう。「言われてみれば私も朝は弱いから無理だった。」よし、これでいい。何も問題ない。何の疑問もない。 #bunfree #twnovel

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

「終わったね」うん、終わった。「机、何個運んだ?」覚えてないよ、そんなの。そっちは?「いっぱい。あぁー、疲れたね」うん、疲れた。でも楽しかったね。「うん、少しはね」次も設営やろうか。「うん」 もうすぐ文学フリマがはじまる。私は水を少し飲む。 #bunfree #twnovel

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

「設営に行くの」彼女は唐突にそう言った。「設営って愛のかたちの一つだと思うから」彼女の言うことは、いつもよくわからない。「それ、どういう意味だい?」「私が置いた何十個もの机の上で書物が広がるの、その書物は生きる人間の証なの」やっぱりわからない。 #bunfree #twnovel

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

「ゴホッ、設営は言葉で説明するものではない、ゴホッ、ゴホッ、それは大間違いじゃ」先生は咳の合間から絞り出すように声を出した。「ゴホッ、行かねばわからぬ……」それが先生の最後の言葉だった。だから僕は設営に行く。その言葉の意味を確かめるために。 #bunfree #twnovel

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

寝言がうるさい。そう彼女に言われるまで僕は寝言にまったく気づいていなかった。どんな寝言かと聞くと、机机机、とか、椅子椅子椅子、とか言う。そういえば最近よく設営の夢を見る。Fホールの設営を1人でやる悪夢だ。しばらく寝言は止みそうにない。 #twinovel #bunfree

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

春は設営。やうやう整いゆく机の列、少し経ちて無線LANの電波たなびきたる。 夏も設営。戸惑ひたるスタツフと共に慣れぬ設営するもをかし。 秋も設営。六つに増えたる机の島、並び終えたる会場の音、販売の音などは、はた言ふべきにあらず。 #bunfree #twinovel

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

「できました教授! 設営が一瞬で終わる薬です!」「落ち着いて説明したまえ」「設営参加者全員でこれを飲むんです、そうすると目の前に設営の済んだ会場が現れるんですﾃﾞﾍｪｴ」「おい誰か救急車を呼べ！コイツ設営のプレッシャーで×××使いやがった」#twinovel #bunfree

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

夜にィ〜TRC行ったんですゥ〜、そしたらァ〜、展示場のォほうからぁ〜なにやら奇妙な声が聞こえるんですねぇ〜、机〜机〜椅子〜椅子ェ〜とぉ、それは設営に無念さを抱いたまま死んだ者どものぉ〜魂がぁ〜そこに漂ってぇ〜今なお設営をォ続けてるんですねぇ〜 #bunfree #twnovel

山崎良祐 / Ryosuke Yamazaki @nappa

設営とはしかし、静粛なる空間である。そこはある種の諦念が支配している。すなわち、<この作業にはいつか終わりがくるに違いない>という根拠の薄弱でありながらも依拠ぜざるを得ぬ諦念を多分に含む妄念に取り憑かれた兵の群れよ。何を騒ぐことがあろうか #twnovel #bunfree