同居する森と月とインカレ(観客席編)

森「さすがインカレ、いろんな人が見に来てるよなー」 伊「同窓会っぽいですよね」
1
同居する森と月bot @doukyomi5

「よう、ひっさしぶりー」 「相変わらず緊張感ないッスね森山サン」 インカレ会場の観客席に見知った顔を見つけて声をかける。ただの挨拶の何がそんなに面白いのか、元秀徳の高尾はゲラゲラ笑っていた。 「って、そっちは」 「覚えてねーすか?宮地さん。オレの応援に来てくれたんですよ」

2014-11-29 13:05:18
同居する森と月bot @doukyomi5

「あー…?秀徳の、だよな」 男の顔を憶えるのは苦手なのだ。高身長の童顔イケメン。言われると何となく思い出した気もする。微妙な空気が流れそうになったのでオレは話題を変えた。 「ええと、緑間は医学部だっけ。あいつは?見に来ないのか?」 「真ちゃんはそういうタイプじゃないっす」

2014-11-29 13:10:22
同居する森と月bot @doukyomi5

緑間が高校を限りにバスケをやめる、というのはそれなりのニュースだった。あれだけひたすら、バスケに(というか3Pに)打ち込んでいた奴をオレは他に知らない。 その頑張りを全て過去のものにしてしまうのか、それで大学生になって、時間を持て余したりすることはないのか。

2014-11-29 13:15:17
同居する森と月bot @doukyomi5

緑間がバスケから離れた今、高尾がバスケを続けていることも。 櫛の歯が欠けるように、バスケから(あるいは日本から)離れるものが増え、『キセキの世代』という言葉は、過去のものになりつつある。 「そういえば、秀徳のSGは代々ロングレンジの3Pにこだわるのかな」

2014-11-29 13:20:21
同居する森と月bot @doukyomi5

緑間の次の代のSGも、エリア外…Cコートラインくらいからの3Pを特徴としていた。勿論成功率は比べるべくもない。でも、そういう選択肢があることがすでに秀徳の特色になっている。 「そりゃ、無理だからヤメロつっても横でバカスカ決めてる先輩がいたら、練習したくなるんじゃないスか」

2014-11-29 13:25:20
同居する森と月bot @doukyomi5

「若いつーか無謀つーか」 「あんな所から打ったら度肝は抜けるよな」 その姿が過去になっても、残したものは消えない。 洛山はPGが強いチーム、陽泉は鉄壁の守り、海常のエースはオールラウンダー。 足跡をはっきりと残して。 「あ、そっちの宮地は?今もバスケやってんのか?」

2014-11-29 13:30:21
同居する森と月bot @doukyomi5

「やってねえよ」 「え?大学のサークルでやってんじゃないすか宮地さん。なんでそんなウソ」 「っせ!言い難いんだよ今でも真面目にやってる奴の前だと!」 高尾が、照れた宮地をからかい、宮地は肩を怒らせて高尾を追っている。 「オレは…単に諦め悪いだけだって」

2014-11-29 13:40:20
同居する森と月bot @doukyomi5

同世代からは『キセキの世代にかなわなかった奴がどうして今もバスケしてんの?』みたいな目で見られてるかと思ったから、好意的に言われるのが意外だ。 「お前、もーちょっとチャラチャラしてるイメージあったわ」 宮地が高尾の首根っこを掴み、目を丸くしてこちらを見る。

2014-11-29 13:45:17
同居する森と月bot @doukyomi5

「それはあれだな、恋人ができたからだな!宮地はいないのか?いないのか!可哀想にお前イケメンなのにな!恋人はいいぞホントマジで!可愛いししっかり者だしなんたって生活の潤いが違うし人生の価値観が一変する!恋人いない人生なんてクリームの入ってないクリームパンみたいなもんだ!」

2014-11-29 13:50:19
同居する森と月bot @doukyomi5

「オレの人生19年と半年くらいはクリーム入ってなかった!」 「あー…前言撤回。前見たとおり森山お前うっぜぇ」 隣で高尾はまたゲラゲラ笑っていた。 そこに、CS放送用の解説席に設置されたマイクから、とんでもない声が会場中に響き渡った。 『いーっづきさーん!』

2014-11-29 13:55:20
同居する森と月bot @doukyomi5

森山さんが高尾(と宮地さん)と話していた頃、オレは試合チームのスカウティングの準備をするために放送用ブースの横を通り過ぎようとしていた。 「あ、マイク入っちゃってました!スミマセンッス!」 「勘弁してくれ、黄瀬……」 ひときわ輝くような人物が笑顔で頭を掻いている。

2014-11-29 14:30:21
同居する森と月bot @doukyomi5

横を通りがかったオレに黄瀬が気付いて、マイクのスイッチを入れたまま呼び止めたのだ。 「伊月さんとオレ全然会わないッスよね?こないだのイベントも、森山センパイには会ったのに伊月さんは顔見してくんなかったし」 こないだのイベント、とはオレが今吉さんに会ったイベントだろう。

2014-11-29 14:35:17
同居する森と月bot @doukyomi5

「黄瀬のお守りは森山さんのほうが適任だろ」 「伊月さんはオレのこと何だと思ってるんスか!」 「森山さんの可愛い後輩」 「オレ最近ドラマもCMも出てるのに…頑張ってるのに…」 黄瀬が不満そうに頬を膨らます。 「ところで伊月さん、その森山センパイとはどーいう関係なんスか?」

2014-11-29 14:40:22
同居する森と月bot @doukyomi5

無邪気を装ってても真剣な空気が流れるのがわかる。用意していた質問なんだろう。目が笑ってない。 「一緒暮らしてるんスよね?仲いいみたいッスけど」 知ってる? どこまで? 「…黄瀬」 知っていれば誤魔化せば不審に繋がる。しかし知らない相手に打ち明けて理解を得られるだろうか。

2014-11-29 14:50:19
同居する森と月bot @doukyomi5

「それを、…森山さんに訊かないのはどうして?」 「ええええー、そう返ってくるんスかぁー」 「それはオレじゃなくて森山さんに聞くだろ?」 ごまかした、というより無関心を装って押さえつけた感じだ。黄瀬の中でのオレの印象よくないだろうな、と思いながら、あえて冷淡に応じる。

2014-11-29 14:55:18
同居する森と月bot @doukyomi5

「だって森山センパイ、伊月さんのことすごい楽しそうに話すんで、そんなに仲いいのかーって思っちゃったんスよ!」 「そりゃ、森山さんにはお世話になってるけど」 ただの先輩と後輩だよ、とは付け加え難い。 特別な仲だとはっきり公言するのも気が進まないが、嘘をつくのだって嫌なのだ。

2014-11-29 15:01:18
同居する森と月bot @doukyomi5

もう、本当に勘弁して欲しい。答えにくそうにしていることが既に答えだって察してくれ。いや、察した上でゴリ押ししてんのかもしんないけど! 「黄瀬くん、いいかな?次の試合なんだけど」 「あ、はいッス。今行きます」

2014-11-29 15:05:20
同居する森と月bot @doukyomi5

放送用ブースの隣で立ち話していた黄瀬が、促しを受けて中に入る。オレが軽く手を振ると、黄瀬も振り返した。ゲスト解説者らしい。 ふと、会場のどこかに今吉さんが来てるかもしれない、と思ったが、オレも監督に呼ばれて、その考え自体を忘れてしまった。

2014-11-29 15:10:22