プリズムの色

プリズムの欠けてしまった、灰色の世界 そこに見えた風景とは・・・ 泣ける艦これSS第三弾 川内というプリズムを失って世界が色を失った、そんな提督の物語です
0
深海さかな @dzurablk_kai

クラナド的なssが書きたい(唐突

2014-12-03 00:07:47
深海さかな @dzurablk_kai

「てーいとく! 朝だよ!」 その日はいつものように、あたたかな体温で目が覚めた 「ほらー、早く起きなさいったらー!」 おなかの辺りに感じる川内の体重が、前後左右にゆさゆさと揺れる 「・・・早く起きないと、チューしちゃうぞ?」 #プリズムの色i

2014-12-03 00:59:54
深海さかな @dzurablk_kai

その声に僕は反射的にガバリと跳ね起きた 「うひゃあ!?」 身体にまたがっていたためにバランスを崩して変な声を上げる川内を、咄嗟に抱きかかえる 「あ、ありがとう・・・」 #プリズムの色

2014-12-03 01:02:53
深海さかな @dzurablk_kai

予想だにしない形で身体同士を密着させることになった川内は、顔を赤くして礼を言った 「なんだ、キスするんじゃなかったのか?」 その可愛いさまに思わず追撃 「うう・・・ 提督のエッチ・・・!」 「先に言い出したのは川内のほうだろ?」 #プリズムの色

2014-12-03 01:05:42
深海さかな @dzurablk_kai

すると川内は数回もじもじと目線を逸らした後に、軽くほっぺたにキスをしてきた 「・・・はい! これでいいでしょ!」 「足りない」 「はあ!?」 「今のじゃ合格点はやれないな もっとこう、可愛く情熱的に、それでいていやらしくない感じのを頼む」 #プリズムの色

2014-12-03 01:08:09
深海さかな @dzurablk_kai

「なにその無茶振り!?」 「わがままなやつだな じゃあ、いやらしいのでいいよ」 「更に難易度上がってるし!!」 川内の顔はいよいよ高潮し、まるで鬼灯のよう そのままたっぷり数分間は恥らう姿を楽しんで、助け舟を出すことにした 「今のは冗談だ そろそろ飯に・・・」 #プリズムの色

2014-12-03 01:13:54
深海さかな @dzurablk_kai

言い終わらないうちに残りの言葉は、川内の唇に吸い込まれていった 川内の長いまつげと柔らかな鼻息がそっと頬をくすぐり、昨晩のシャンプーの匂いが塞がれた口に変わって鼻腔を通り抜けていく 「これで、満足?」 「ああ・・・」 あまりに完璧な不意打ちにぐうの音も出なかった #プリズムの色

2014-12-03 01:19:09
深海さかな @dzurablk_kai

そんな僕の様子を確認した川内は、クスリと満足げに微笑むと 「そう じゃ、朝ごはん! 下で待ってるから!」 ベッドから飛び降り、パタパタとスリッパを鳴らして出て行った 「やれやれ、悪戯娘め・・・」 #プリズムの色

2014-12-03 01:21:12
深海さかな @dzurablk_kai

「提督、はいあーん!」 出汁巻き卵をついばみながらなんとなしに口を開く 「なあ川内、その『提督』って呼び方、家の中ではやめないか?」 「え、なんで?」 口の中で卵の甘みとニラの歯ごたえが絶妙に混じり合う 川内の卵料理は旨かった 「いや、j結婚してるんだからさ」 #プリズムの色

2014-12-03 01:27:38
深海さかな @dzurablk_kai

「んー・・・ でもこれが一番、呼び慣れてるし・・・」 川内が味噌汁をすすりながら答える 今日の具材は大根と貝割れ 「・・・子供ができたら、名前で呼んであげる!」 「子供、ね・・・」 そういえば、もうそろそろ将来についても考えるべきだろうか #プリズムの色

2014-12-03 01:31:11
深海さかな @dzurablk_kai

「・・・提督、今やらしいこと考えてたでしょ?」 気がつくと川内のジト目がこちらを向いていた 「いや、そういうんじゃ」 「じゃあ何よ?」 「子供ができたら、お前を独り占めできなくなるなー、とか」 「へー、もしかして提督・・・ 今でもまだ、甘え足りない?」 #プリズムの色

2014-12-03 01:34:08
深海さかな @dzurablk_kai

川内は悪戯っぽい笑みを浮かべたまま立ち上がりテーブルを迂回、ひざの上に座ってくると口元に自分の茶碗からご飯を差し出す 「こぉんなに尽くしてあげてるのに?」 川内の箸で食べる川内の炊いた川内のご飯 「うん、やっぱり辛子明太子と川内はご飯のお供に必要だな」 #プリズムの色

2014-12-03 01:38:34
深海さかな @dzurablk_kai

川内のお腹に腕を回して抱き寄せると、洋服越しのあたたかな体温がより一層強くなった 「も~、あんまりくっつくと食べにくいでしょ」 「もうちょっとだけ」 「仕方ないな~」 これが毎朝の僕らの日課だった #プリズムの色

2014-12-03 01:44:11
深海さかな @dzurablk_kai

「ねえ提督、たまにはお出掛けしない?」 「はあ? こないだの休みも映画行っただろ たまには休ませてくれよ」 「えーいいじゃーん!! デートしようよー!」 腕にすがりついてくる川内に、思わず溜め息と苦笑が漏れる #プリズムの色

2014-12-03 01:55:29
深海さかな @dzurablk_kai

「仕方ないな、今日はどこに行くんだ?」 「えーっとね・・・ あ、そういえばおいしいパン屋さんがあるって聞いたんだけど、知らない?」 「どこに行きたいか知らないで言い出したのかよ・・・」 こうして予定を立てるところから、二人の平和な休日はいつも始まる #プリズムの色

2014-12-03 01:58:34
深海さかな @dzurablk_kai

・・・そう、『平和な休日』 僕はそこまで書いて、PCのキーボードから手を下ろした これらの日々は、とても幸せで光と希望に満ち満ちていた いつまでも続くと思っていた、二人の時間・・・ それは唐突に終わりを告げた ・・・愛する川内はもう、この世にはいない #プリズムの色

2014-12-03 02:00:50
深海さかな @dzurablk_kai

黄昏時、執務室 「提督、本日分の人員現況です」 川内亡き後を継いで二代目秘書艦となった神通が、バインダーとともに報告書を差し出す それを提督は黙って受け取った 「・・・それじゃあ、お先にお暇させていただきますね」 席を立つ後姿にも、労いの言葉はない #プリズムの色

2014-12-03 17:52:22
深海さかな @dzurablk_kai

あるのはただ、眉間に刻まれた深いしわと睨み付けるかのような鋭い眼光だけ (・・・姉さんがいなくなって、全てが変わってしまった・・・) そんな、かつては決して抱かなかったであろう寂しさとも懐かしさともつかぬ感傷だけを胸に、神通は執務室を後にした・・・ #プリズムの色

2014-12-03 17:54:39
深海さかな @dzurablk_kai

「提督ひどいよねー!! 私たちになんか恨みでもあるのかな」 コタツで二人、鍋をつついているといつものように那珂が言い出す そんな愚痴がもれるのも仕方のないことだ、と神通ですら思う 「・・・提督もまだ、気持ちの整理がつかないのよ」 #プリズムの色

2014-12-03 17:57:58
深海さかな @dzurablk_kai

部屋の片隅に備え付けられた仏具の隣にいまだ残る、姉の訓練物品につい目が行ってしまう 「もうあれ、私たちで片付けちゃおうよ」 確かに、何ヶ月も置きっ放しにしていてよいものではない 隊の備品管理としても、また遺された者の精神衛生上としても・・・ #プリズムの色

2014-12-03 18:01:48
深海さかな @dzurablk_kai

「でも、提督に整理してほしいって言うのが、姉さんの遺言だから・・・」 「だってさー・・・」 ・・・今は、待つしかなかった 提督が姉の死を受け入れ乗り越える、その時を・・・ #プリズムの色

2014-12-03 18:02:37
深海さかな @dzurablk_kai

川内が死んだのは、半年かそのくらい前のこと 死因は恋愛小説によくあるような、急性の白血病だった 事実、艦娘には艤装の特性なのか、白血病で急死する者も少なくない だが真実というのは小説よりも残酷なもので、物語のように二人の愛を確かめ合う間もなく冷たくなっていった #プリズムの色

2014-12-03 18:06:01
深海さかな @dzurablk_kai

それ以降だった、提督は神通や那珂に対する態度を変えたのは それまでは実の妹のように可愛がっていたのが、いまでは自分からは一言も会話をしないどころかまるで憎んでいるかのような眼差しを向ける そんな提督の豹変振りには、かつては懐いていた水雷戦隊の駆逐艦達も距離を置いた #プリズムの色

2014-12-03 18:09:33
深海さかな @dzurablk_kai

もとより、戦艦や空母の充実した大規模な艦隊ではない ・・・いまや提督は、一人ぼっちも同然だった かろうじて義務感から秘書艦を勤める那珂と提督を心配げに見守る神通のほかは、誰も提督に近づこうとはしない 「・・・本当に、姉さんがいないと大変ね・・・」 #プリズムの色

2014-12-03 18:12:44