ドラゴンキッドから見たタイガー

樽屋 @yddy_yssm

【再掲】 僕のデビューは大きなトンネルの中の事故だった。足元に流れる赤い液体に反応できずただ呆然としていた「お前さんの能力はここじゃまずい。救助者を渡したらそのまま後方支援にまわるんだ」タイガーは瓦礫のしたから助けた人を僕に預た

樽屋 @yddy_yssm

タイガーに変わって意識が朦朧として居る救助者に肩を貸す「この人の名前を聞き出して話しかけろ。名前を呼ぶだけでも良い。兎に角声をかけて」僕はろくに返事もできなかった。トンネルの出口を目指し、よろよろと歩き出す。救助者が小さく呻いたのを聞いてはっとして言われたとおり話しかけ続けた

樽屋 @yddy_yssm

「…なんで？」 散々なデビューの後タイガーと話せたのは数週間後だった。あの時の救助ポイントはタイガーではなく僕に加算された。テレビに映らないとポイントにならないと言うことはこう言うことなのかと驚いた。「なんで名前を聞けって言ったの？」謝らなくちゃと思ったけど出てきたのは別の事

樽屋 @yddy_yssm

「…意識を失っていても人は自分の名前には反応するんだよ」「そ、うなんだ？」内心ものすごく緊張した。仕事をして居る時は気にするほどの余裕がなかったけど、彼は、アジア系で最も長くヒーローを勤めている同じアジア系にとっての英雄で僕の目標だった。でも僕の会社の人はそれをよく思っていなくて

樽屋 @yddy_yssm

アジア系で初のヒーローかどちらか迷いながら

樽屋 @yddy_yssm

ナターシャが言うには「オデュッセウスコミュニケーションは新しさを打ち出したい。でもそのマスコットのドラゴンキッドが古き良きヒーローの代名詞であるタイガーを目標にしていると言うのは都合が悪い」らしい。広報とか戦略とか色々あるんだろう。

樽屋 @yddy_yssm

「名前を糸口に意識さえ繋げておけば後は医者がなんとかしてくれる。…ま、言霊とか真名とかそういう願掛けみたいなもんもあるけどな」 名前にはそういう力が有るんだと、だから大事にしろよとタイガーは小さく笑って古びた貨物自動車を改良したトランポに帰って行った。

樽屋 @yddy_yssm

「…ここで終わりかよ、バニーちゃん」 タイガーの言うとおり名前には力が有る 記憶を操作された僕たちをビルの屋上に呼び出した時、タイガーが僕らの本当の名前を読んでいたら 「バーナビーさんみたいに絶対思い出したのに…」 なんだか凄く悔しいんだ

樽屋 @yddy_yssm

「テレビにうつってたからな〜流石にヒーローの本名呼ぶのは…まずいだろ？」あやすように僕の頭を撫でる大きな手。「…タイガーは優しいね」優しくて強い。僕もそうありたい。