メディアによるヘイトスピーチ報道に望まれること 金明秀さんのツイートから
- gurugurian
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ノーコメントにしようと思っていたけど、この記事に対する違和感はやっぱり言語化しておこうかな。 / 古都に響くヘイトスピーチ 外国人排斥、身近なところに - 朝日新聞デジタル t.asahi.com/gp91
2014-12-10 10:43:31大前提として、記事化していただいたことはありがたいと思う。大きなスペースを割いてくれたことにも感謝したい。これからちょっと厳しいことを書くかもしれないけど、今後さらにいい記事を書いてほしいと応援する気持ちによるものだと理解していただければ幸いです。
2014-12-10 10:47:01第一に、たぶん編集の問題なんだろうけど、全体的に「つぎはぎだらけ」で、ロジックもストーリーもよくわからない記事になっている。それが、結果として、個々のエピソードの意味づけを不鮮明にしてしまっている。
2014-12-10 10:49:28例えば、物産店の男性の発言。おそらく、記者は、「排外主義はザイトクだけでなく日本社会に広く薄く支持されている」ぐらいのメッセージを込めたんだろう。でも、「現場では《どっちもどっち》だと感じている人もいたんだな」と解釈する人がいてもおかしくない。
2014-12-10 10:51:45かりに、「排外主義はザイトクだけでなく日本社会に広く薄く支持されている」というメッセージを込めたかったのだとすれば、なおのこと、排外主義を許容してしまう人々にこの発言がどう解釈される可能性があるか、もう少し考えてほしかった。
2014-12-10 10:53:33「たちまち「朝鮮人怖い」などの言葉とともに拡散されていった」というエピソードもそう。おそらく、「ザイトクだけが異常なのではなく、それを支える人々がネットに広がっている」といいたかったんだろう。でも、「必死に抗議活動をしたところで無意味だった」という叙述だと読み取ることもできる。
2014-12-10 10:56:15ヘイトスピーチは様々な立場から批判されている一方、記事も指摘している通り、ヘイトスピーチを許容してしまう背景もある。である以上、個々のエピソードの意味付けが明示されないかぎりは「ほらこんなにひどい状況です。多くを語らなくてもわかるでしょ」というわけにはいかない。
2014-12-10 11:00:49第二に、排外主義のひどさを強調するあまり、カウンター活動の功績についてはまったく言及されていない。排外主義を支持する立場は複数の語りを紹介しているにもかかわらず、カウンター参加者にはインタビューもない。先ほど挙げた2つのエピソードと合わせると、この問題はちょっと深刻かも。
2014-12-10 11:03:26カウンター活動があったからこそ被害は減ったし、社会的な関心を惹起することもできた。その功績は小さくない。にもかかわらず、カウンター活動は、しばしば、犠牲者非難といってもいい理不尽な批判にさらされてきた。《どっちもどっち》みたいなのはその典型。
2014-12-10 11:09:08関西の場合、カウンター活動への参加者は3割がた在日コリアンですよ。やつらのヘイトスピーチに身を切られる思いをしながら、この社会を守るためにあの現場で踏ん張っている。さらに犠牲者非難まで浴びながら、なんとか問題を訴えようとしてきた。そのことの重要性を記事はまったく拾えていない。
2014-12-10 11:12:23第三に、在日コリアンを「この社会の同じ構成員」あるいは「ヘイトスピーチからこの社会を守ろうとしている人々」としてではなく、「差別される人々」という観点からしか描写していない。言い換えると、「被害」の位置づけがどうもマジョリティ目線なんだよね。
2014-12-10 11:17:53刑法学者としてヘイトスピーチ問題の隋一の専門家である金尚均に話を聞いておいて、記事に使ったのは被害の語りだけ。まあ、ザイトクが目立つ一方で被害の語りは無視されがちなので、被害に注目すること自体は重要。でも、この社会を生きる主体としての在日コリアンが記事に登場しないのはちょっと…。
2014-12-10 11:22:01第四に、わざわざ樋口直人に取材しておきながら、「日本型排外主義」(在日コリアンは日韓外交摩擦のとばっちりを受けてきたという話)の説明を引き出せず、逆に、排外主義を日韓の外交に支障をきたす問題として取り上げてしまっている。いったい何のために彼に話を聞きに行ったのか。
2014-12-10 11:26:20第五に、ヘイトスピーチ・排外主義の起点を2006年に設定していることには大いに異論がある。いまの状況は、ヘイトクライムの典型といえるチマチョゴリ制服切り裂き事件(94年)、公人によるヘイトスピーチの典型といえる「三国人発言」(00年)など、15〜20年かけて醸成されてきたもの。
2014-12-10 11:33:16にもかかわらず、2006年を起点にとるということは、ザイトクが目立つ形で登場してくるまでは、それらによる被害なんて視野にも入っていなかったということだろうか、と思われても仕方がない。
2014-12-10 11:34:23樋口さんも「この数年、数はごく一部」であるかのように書いているが、関西での事実はまったく異なる。入試難易度を問わず、どこの大学でも1割程度はコアなネット右翼がいるし、リアクションペーパーに「ネットde真実」を書いてくる学生は10年前にはすでにいた。
2014-12-10 11:36:34正直、「ここ数年の問題」みたいに矮小化してほしくないんですよね。それって、ザイトクやネトウヨを「あぶないやつらだ」と他者化するだけで、それを許してきた(それどころか支えてきた)長年の状況を自省することにはつながらないから。
2014-12-10 11:39:31