#完全ノープラン艦これ与太話 【ヒロイック・テスティモニィ】#1～#2

春魔解丼 @vespiking

漆黒の闇に閉ざされた秩序の門は、明朝の開門時間まで決して開かれる事はない。絶対正義の砦、サセイボ鎮守府の外壁には機銃、マウザーカノン、カボチャ型超電導カカシ、据え置き型ロック戦闘機、最終波動砲といった舶来の防衛兵器が並び、侵入者を49通りの方法で自動処刑する。 #KZNPLN

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門の周囲には「テツヤ禁止」「早寝早起」「しよう」「我々はハンパしない」といった威圧的な警告カンバンがヴラド串刺し処刑場じみて立ち並び、フライング整列行為を厳しく諌め、闇夜の静寂を監視する。だが、おお、見よ！誰もいない筈の闇に並ぶ、幾人かの影を！ #KZNPLN

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「ヤスイダ＝サン。到着です」「ムッハハハハ！久しぶりの日本だ！しかし、ここは物騒だな。あんな重火器を客人に向けるとは、日本人の奥ゆかしさが薄れている」「ハイ、とてもいけないと思います！」「ムハハハハ！よくできた若人だ！」カネモチ妖精はSPをはべらせ、門へ歩く。 #KZNPLN

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『警告するデチ。門への時間外侵入は処刑対象デチ。我々は誰の挑戦も受けるデチ』合成ゴーヤ音声が無慈悲な警告を行う。「ウルサイ！開門まで待てばいいんだろ！私は一番がいいんだ！」「そうだ！」カネモチ妖精、ヤスイダの罵倒にSP妖精が続く。『テツヤ行為も禁止されているデチ』 #KZNPLN

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「おい、お前。我々はなぜ、こんな時間に並んでいるんだ？」「ハイ！礼儀知らずのカイガイカンや深海棲艦が、列を乱さないよう先に列を作るためです！」SPが答えた。「そうだ。我々はテツヤしてまで、日本の愛すべき奥ゆかしさを守らねばならん。順番を守る！日本人の美徳だ！」 #KZNPLN

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『テツヤは禁止デチ。マナーを守って楽しく入国審査！』「やかましい！我々はルールを守るために並んでいるんだ！もっと奥ゆかしさを重点しなさい！しかも我々は客人だぞ！客人とは何だ？」「ほとんどブッダです！」「そう！しかも、あれは自動兵器だろう。待っていれば撃たれない！」 #KZNPLN

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日本文化に明るくない読者諸氏にも解説しよう。妖精ヤスイダはキョートの資産家である。彼女は日本的な奥ゆかしさを重点し、テツヤ整列を美徳とするステロタイプ日本人的な価値観を持っている。日本人は列を作って並ぶことを美徳とし、一列に並んで何日も待つ奥ゆかしい国民性がある。 #KZNPLN

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彼女のような日本人にとっては整列こそが唯一絶対ルールであり、それを邪魔するルールはすべて後付けの悪法、従うのが背徳と解釈するのだ。「テツヤ禁止などといって、きっと何か……こう、暗黒のマネーとかが政府に流れているんだ！そのシステムの一端なんだ！私は騙されないぞ！」 #KZNPLN

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悪法に虐げられる奥ゆかしさの聖戦士となったヤスイダは更にヒートアップし、その場でハナミ用セットを広げてSPとオーガニック缶ビールを飲み交わし、空き缶を「ポイ捨て厳禁」のカンバンに投げつけ始めた！「きっとあのカンバンも悪法に違いない！正さねば！」さらに投げる！ #KZNPLN

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投げた空き缶のひとつが、不可思議にも空中で跳ねた。「アイエ？」「ワッツ？」SPらは訝しんだ。だが空き缶は空中で跳ねたのではない。闇の中に潜む、艦艇にぶつかって跳ね返ったのだ。闇に溶ける紫装束の艦艇に。「ア？痛ェな」「誰だッコラーッ！クセモノダー！クセモアバッ」 #KZNPLN

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賊を警戒したSP妖精の首が消えた。「エ？」ヤスイダは困惑した。ひと呼吸遅れ、噴出した血液が青いハナミ用シートを赤く染めた。「エ？エ？」「よう、ドーモ」ツカツカと、闇の中から1隻の軽巡洋艦が現れた。「だ……誰だッコラー！お前！私は資産家のヤスイダだぞ！シツレイだ！」 #KZNPLN

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ＢＬＡＴＴＡＴＡＴＴＡＴＡ！SP妖精は一斉にアンタイ艦艇機銃を斉射！「クセモノダー！」「コロセーッ！」だが！「お、ほ！なかなかやるじゃん。イヤーッ！」「アババーッ！」ナムアミダブツ！銃弾はすべてカタナで弾かれ、続けざまにSPの首を切断！即死！「アイエエエエ！？」 #KZNPLN

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「アイサツ中にアンブッシュとはシツレイな連中だなァ。インガオホーさ」紫装束の軽巡洋艦は不吉な艦底色で塗られたカタナの血を払い、不敵にアイサツした。「ドーモ、プライヴァティアです。フフフ、怖いか？」「ア………アイエエエ！こ、コロセー！」「ザッケンナアバーッ！」 #KZNPLN

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SPがアンタイ艦艇ライフルを構えるより先んじて、プライヴァティアの投擲した鉄製の武器がSPの額を貫く！即死！「プライヴァティア（私掠船）だと！？フザけた名前を！殺……アイエ？」ヤスイダはSPの額を見た。ナイフめいた鉄製武器。これは……。「エッ？クナイ・ダート？」 #KZNPLN

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ナムサン……ヤスイダはこれと同じ物を、スミソニアン博物館で見た事がある。これを使うのは、ニン……「ニンジャ！？ニンジャナンデ！？」ヤスイダは失禁！重度のＮＲＳ症状だ！「そうだよ。残念だがおれはニンジャだ。悪いな」「アバーッ！」狙撃SPをカタナで殺す！サツバツ！ #KZNPLN

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「ナンデ……？私はカネモチで、奥ゆかしくルールを守る日本人なのに……ニンジャ？ナンデ？」ヤスイダは泣き叫んだ。「そうだな、あんたは善良な日本人だな。まあ、運が悪かったと思え。カネモチが不幸にも海賊に鉢合わせ、金品を奪われ殺された。日本じゃチャメシ・インシデントさ」 #KZNPLN

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ニンジャ軽巡、プライヴァティアはその後なんの苦労もなくヤスイダを殺害し、所持していた金品を奪った。「チッ。大して持ってねェな。資産はどこかの銀行か……」「アラ、ご苦労様」「ア？」プライヴァティアの背後から、声。「ドーモ、プライヴァティア＝サン。磯風です」 #KZNPLN

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「アー、ドーモ」プライヴァティアはオジギを返した。「今回も、後始末は任せていいんだろ？」「当然だ。全くいい身分だな、お前は自由で」長髪の駆逐艦、磯風はIRC端末を適当に操作した。夜が明ける前に、なんらかの隠蔽が行われるだろう。「自由？冗談キツいぜ。窮屈でならねェ」 #KZNPLN

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「なら何故、我々に従った？」磯風は挑発的に嗤う。「アー、海賊も不景気なンだよ。特によ、こうデカい監視の目があるとな」「お褒めに預かり光栄だ」プライヴァティアはクルクルとカタナを回し、鞘に納めた。「しかし、面白いテーマだな。荒潮に提案するか」「ア？」「こちらの話さ」 #KZNPLN

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「ではシツレイする。精々、ボロを出さんよう気遣えよ」足早にその場を去る磯風を、プライヴァティアは忌々しげに見送った。 #KZNPLN

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「アラぁ、磯風＝サン。ゴブサタですわぁ」「昨日会ったばかりだろう」「アラ、アラ！18時間もお逢いできなかったのに！」茶髪の駆逐艦は事務所の椅子に腰掛け、人を食った態度でアイサツした。「首尾はどうだ荒潮＝サン」「アラ？不調だとお思い？」「否」「ザンネン！不調でぇす」 #KZNPLN

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磯風は苛立ちながら、話を進めようとした。この女にとりあうのは時間の無駄だ。「……原因を聞こう」「アラアラぁ、私のジョーク、滑りました？」「原因を聞こう」「あまり乗り気になってくれないのよぉ、女優様がね？」荒潮は事務所の隅を指差した。黒髪の軽空母が不遜に座っていた。 #KZNPLN

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