加賀さん観察日記 Part20

キタユキ @k_t_y_k

メロンのまとめて配送全く関係ないけど宣伝します 【C87新刊】加賀さん観察日記2.0 パイロット版 | キタユキ #pixiv pixiv.net/member_illust.…

キタユキ @k_t_y_k

ビスマルクに連れられてどれ程経っただろうか。数分のようにも思えるし、数時間、数日、数年にも感じられる。その間、延々と瑞雲の道を歩いていた。緑の翼で空を切り、日の丸の残像を残していく瑞雲。伊勢が見ればさぞ喜ぶだろう。もしかしたらここは、伊勢の夢なのかもしれない。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

ようやく、玄関先に出た。ひしめく緑にブーツが分け入ると、鳩を散らすように瑞雲達が飛び立っていく。ビスマルクは何も言わず前を進み、扉の手を捻る。重く蝶番の軋む音を伴い、二枚板は外へと開け放たれた。 向こうでは、灰色の軍港が、しんしんと雪に埋もれていた。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

これがどこでもドア……つよい。 剣術の城めいた感想を零すも、ビスマルクは鼻で笑いすらしない。ざくざくと雪を踵で切り、停泊する一隻の船へ進んでいった。 「太郎！」 いつの間にか彼女は着衣装甲でなく、長裾のコートを羽織っていた。黒一色に金髪は初冬の枯野を思い出す。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「太郎！起きなさい。仕事よ」 腕組みの仁王立ちで、ビスマルクは船に呼びかける。だが船は彼女を見やりもせず、ただ悠々と波を感じているだけだ。 「太郎！」 返事はない。只の船のようだ。乗組員もいないらしい。黙々と雪は降りつづけ、装甲を白に染める。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「Prinz Eugen!!」 「ふぁい！」 痺れを切らしたビスマルクが声を張ると、間の抜けた幼い声が頭上から降り注いだ。波に揺られていた船体が、一際大きく浮き沈みする。まるで焦っているかのように。 「ぼさっとしてないで、出る準備しなさい」 「ふぁーい」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

間延びした返事を一つ返し、船は再び黙り込んだ。本当に船が話していたのな、と問われると非現実的だが、瑞雲塗れの鎮守府の先に見知らぬ軍港があるのだから現象の辻褄をどうこう言うのは野暮だろう。二人以外には船しかない。しかし今、プリンツオイゲンって言ったよな。本人か。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

お前、オイゲン太郎か。 「あーっアドミラール！ワタシですよー」 船から嬉しそうな声。よく見れば船体の白まだらは雪の塗装でなく、元から塗られているものだ。オイゲンの着衣装甲も、確か似たような胡麻斑だった。恐らくこれが、本来のヒッパー級三番艦としての姿なのだろう。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

しかしまたなんで今更思い出したように船の姿を。 「ふぇ？ ダメなんですかぁ？」 顔があれば、オイゲンはキョトンとした表情でこちらを見ているであろう。それはいいけど、いきなり船はビックリする。ビスマルクに聞こうとしたが、彼女は既にタラップを登り初めていた。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「早く乗りなさい、置いていくから」 ビスマルクは階段からこちらを一瞥する。色々と聞きたいところだが、一つだけ教えて欲しい。一体何処へ行くのか。 「何言ってるの。戻るのよ、鎮守府に。どうせ知らないでしょうけど、誘拐されかけてたんだから」 また話がややこしい予感。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

プリンツ・オイゲンの船内に通される。軍艦なんか初めて乗ったと思ったが、去年加賀を連れて三笠の中に入ったのを忘れていた。 しかしなんだ、中が異様に狭い……というか、外観の大きさと内部のスケールが合致しない。明らかに一室しかないし、四畳半だ。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「不満そうね。何。文句あんの」 ファイバー編みのサイバネティック・タタミ畳の上、ビスマルクはブーツのまま胡座をかいている。文句はないが、ドイツ重巡の中身が四畳半の畳部屋だと普通の人は面食らう。 「しょうがないじゃない。再現に割くリソースなんかないんだから」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

『ビスマルクねえさまー、寒くないですか？床暖房つけます？それか下ファーにしますけど』 「いいわ、別に。それより早く出発して。あと温まってきたらお湯沸かしといて頂戴。コーヒー入れるから」 『ふぁーい』 オイゲンの声に続き、ごうごうとエンジンが駆動する。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

あの、出発ってどこに。 「コーヒー入れるけど、砂糖ないから」 あの、目的地。 「何？人のコーヒーが飲めないっていうの？」 アッハイ、ブラックでいいです。 ビスマルクに聞こえたかは定かでないが、彼女は入口脇の通路でコーヒーを入れ始める。 大丈夫かこれ。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

コーヒーを待っていると、ごうごうの音が強まっていく。そろそろ出発のようだ。どこに連れて行かれるのかは知らない。『誘拐されかけてた』というビスマルクの言葉が引っかかるが……まあまたどうせめんどくさい事情に巻き込まれたのだろう。いらんわこんなクリスマスプレゼント。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

振動でコーヒー豆が転がってきたが拾おうとしたら怒られた。理不尽な。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「まずあなたの知ってる情報を整理するわ。いい？ちゃんと聞きなさいよ。 ①自分は神経細胞に蓄積された記憶信号のシグナルパターンをアウトライン化したものにすぎない ②Kan-Colleシステムは複数の近似可能性空間に接続することができる ③気づいたら違う所にいた」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「あなた、どうせ何も解ってないでしょうね。 妹に内臓移植したわよね？ その内臓に残った情報の残りカスがあなた。ここまでは大丈夫かしら。で、この前その残りカスを母体、妹から切り離して独立したカスの集合体として、Kan-Colle接続先に留める措置をした。」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「言い方が悪かったわね。今までは肉体からシグナルパターンを読み取っていたのを、別の箱に移し替えたってことよ。何、その顔。私の説明に不満があるっていうの？ は？ 信号だけで構成されてると思ってた？ 馬鹿ね、そんなことできるわけないじゃないの。箱がないと無理よ。」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「ああ、潜水艦のネッツワーク・トーヒェンね。あれはあなたとはまた別よ。できないでしょう、端末無しでアプリから話しかけたりするの。あなたは単にソフトを入れているハードウェアを移し替えただけよ。それに潜水艦の生体ルーターの理屈は今知るべき情報じゃないでしょう」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「で、あなたの置かれてる状況だけど。 単刀直入に言うと、盗まれたの。入れ物の箱ごとね。観測のログから逆探知されて、物理的に持ち出されたといった方がいいかしら。で、あの気持ち悪い瑞雲まみれのアレは、盗んだ人間がデータを吸い出すために作った仮想空間になるわ」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「それを私がわざわざ迎えにきてやったの。簡単に言ってるけど信号パターンのコピーね。面倒くさいのよ、これ。あの潜水艦にロック解除させようとしたら死んじゃうとかどうのこうの喚くし、転送にそっちのポート使おうにも機能してないし。あなたね、自分の脱出装置ぐらい管理…」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「……ポートがわからない？ あなた次郎は持ってるわよね？ は？ 次郎がわからない？ 喧嘩売ってるの？ どうして私が太郎を持ってるかも？ もしかして何で自分が接続されてるかも知らない？ ほんっと夕暮は何にも説明してないのね。いや、説明責任を問うならあいつに……」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

【C87新刊】加賀さん観察日記2.0 パイロット版 | キタユキ #pixiv pixiv.net/member_illust.… 冬コミの頒布物はこれです。既刊は体力に余裕があればもっていきます

キタユキ @k_t_y_k

日向「提督にミニスカサンタを着せよう」 那智「また貴様はつまらんことを」 最上「二人とも喧嘩しちゃダメだよー」 日向「まあ、ミニスカ瑞雲よりはマシだろう」 那智「それもそうだな」 最上「えっどういう基準なのそれ」 #横須賀アサイラム