#リプきた単語で三題噺 「緊縛」「深海」「幽霊」「希望」

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ネッシー @0ZaALZilA

「緊縛」「深海」「幽霊」「希望」投下するよ #リプきた単語で三題噺

2014-11-14 23:17:55
ネッシー @0ZaALZilA

「私としたことがドジったわね…」 私は今、個室で亀甲縛りされて閉じ込められてる。 この一行で、特殊なプレイだと思った奴は反省してほしい。 深海で亀甲縛りとか、特殊すぎるわよ。 そう、深海。私は潜水艦の中にいる。 お宝探しに来たはずなのに、訳も分からず船員に拘束されて。

2014-11-14 23:18:14
ネッシー @0ZaALZilA

「っていうか何で!こんな縛り方!」 恥ずかしいとかそういう問題ではない。 私以外の船員が屈強な男たちばかりで、かなりきつく縛られたのだ。 知識でしか知らないが、こういう場合うっ血とか、体組織の破壊とかが起こり得るとか。 あー、せめて刃物さえあれば… カラン、と、金属音。

2014-11-14 23:19:06
ネッシー @0ZaALZilA

「…ナイフ?」 何てご都合主義だろうと思いつつ、這ってナイフを拾い上げる。 ぶつん、と、縄を切り裂き、ようやく圧迫感から解放された。 しかし何だろう、この違和感。 このナイフ、滑っているし、赤いし、やたら鉄臭い。 だいたい、一体誰が投げ入れたんだろう。

2014-11-14 23:20:01
ネッシー @0ZaALZilA

扉には鍵がかかってたし、ナイフを投げ入れる隙間もない。 そして、部屋には私しかいないし、目の前にいる女の子なんか見たこともないし… 女の子? 『こんにちは、お姉さん』 「え…う、浮いてる!?あなた、一体…」 目の前に、金髪の少女。齢12か13と言ったところか。

2014-11-14 23:20:27
ネッシー @0ZaALZilA

でも、私と頭の高さが同じになるくらいには浮いてるし、透けてるし、普通じゃない。 『幽霊って奴?何で死んだかわかんないけど、大人はひどい奴らってことだけは覚えてる。だから、お宝目当てにやってきた大人を始末して回ってるんだー』 「で、でもあなた子供じゃない!始末ってどうやって」

2014-11-14 23:20:49
ネッシー @0ZaALZilA

『乗っ取るんだよっ、こーんな風にね』 すう、と、血の気が引くような感覚。 気付いた時には遅かった。 何一つ、指先一つさえ、私の意志が働かない。 「こうやって、男の人の体を乗っ取って、お姉さんを縛りあげたんだー」 『な、何これ!体が、動かな』

2014-11-14 23:21:22
ネッシー @0ZaALZilA

「無理無理、もう私の体だもん。女の人がここまで来るの珍しいし、しばらく借りるねっ」 『ちょっと!私の体から出ていきなさいよ!』 「へへっ、やーだよ」 鏡越しに、舌を出す私が見える。 縄が解けたと思ったら、今度は幽霊に乗っ取られるなんて。 縛られるなんて趣味じゃないのに。 ☆

2014-11-14 23:21:49
ネッシー @0ZaALZilA

地上に戻るや否や、スーツをキメたダンディがお出迎え。 (誰あのおっさん) 幽霊が直接脳内に語りかけてくる。気楽なものね。 こっちは彼に船員の死を誤魔化さなければならないってのに。 『スポンサーよ。お金出して取り分もらう人』 (えーっ、自分だけ楽な思いしようって奴なの!?)

2014-11-14 23:22:08
ネッシー @0ZaALZilA

『トレジャーハンターだって、趣味や道楽で宝探しできるわけじゃないのよ』 (大人の事情ってやつ?) 『そうね。とりあえず私に変わりなさい』 相手をするのが面倒と見たのか、あっさり憑依を解いてくれた。 案外チョロいわね。 「君一人かね?」

2014-11-14 23:23:06
ネッシー @0ZaALZilA

「ええ、他の船員はその…夢中でして。箱を開けるのに」 「箱…?」 ☆ 海底から拾い上げた、いかにも、な宝箱。 幽霊の襲撃前に回収されたものだが、閉じ込められてたので、私が目にするのは初めてだ。 幽霊が船員から盗み聞いた話では、見た目にはわからない鍵がかかっているようで。

2014-11-14 23:23:32
ネッシー @0ZaALZilA

「こーいうのは力ずくよねー」 『やめなさい!万が一中身が傷付いたら』 「しーらない」 スポンサー様がいなくなった途端にこれだ。 蓋の隙間にバールを差し込んで、豪快にてこの原理でこじ開けた。 それはもう、バキッと。ベキッと。 目に飛び込んできたのは、青白い少女。

2014-11-14 23:24:01
ネッシー @0ZaALZilA

『これ…あなた、よね』 海底から引き揚げられたのだ、脈も呼吸も無い。当然、死体。しかし、まるで標本のように整った状態だ。 「たぶんそうだね」 『絶対そうよ!ねえ、どうして…』 「罰、じゃないかな」 どういうことか問質しても、中身の確認をするだけで、まるで答えてくれなかった。

2014-11-14 23:24:36
ネッシー @0ZaALZilA

といっても、幽霊になる前の少女以外は、沢山の砂袋が詰まっているだけ。 「はぁ。これじゃお金になんないね」 『そうね…正直、金銭どうこうを考えられる精神状態じゃないんだけど』 「そうだ!死体の腹をかっさばいてよ」 『いきなり何言い出すの』

2014-11-14 23:25:21
ネッシー @0ZaALZilA

「思い出したの!真珠よ!私、真珠を盗もうとして見つかりそうになったから、急いで腹の中に隠したの!それを売れば…」 『価値つかないわよ、胃液に塗れた真珠なんて』 幽霊は露骨に凹んでいた。私の姿で。でも、私の予想が正しければ、この程度では済まない。だって、砂袋が詰まってたとなれば――

2014-11-14 23:26:20
ネッシー @0ZaALZilA

☆ 「残念ながら、中身に金銭的価値のあるものは見受けられませんでした」 幽霊に口止めされたので、死体については触れなかった。 私以外の誰かに見られたくなかったのだろうか。 「そうか…だが、周辺に同様の箱がある可能性は濃厚になった。

2014-11-14 23:28:12
ネッシー @0ZaALZilA

更に幸いなことに、解錠して尚、箱の状態が良い。底面に僅かな穴がある程度だ。知り合いの学者に箱が作成された年代の特定を急がせよう」 そうは言っても成果はゼロに等しい。期待はずれとばかりに退却するスポンサー様。 それを確認した途端、私に憑依する幽霊。 出たり入ったりと、忙しい子だ。

2014-11-14 23:29:00
ネッシー @0ZaALZilA

「ちぇー。お宝売って豪遊できると思ったんだけどなぁ」 『…残念がってるところ悪いけど、もうひとつショックな事実があるわ』 そう、彼女が気づいていない事実。きっと、彼女の過去を丸々否定するような、恐ろしいもの。

2014-11-14 23:29:28
ネッシー @0ZaALZilA

『貴方が大人を恨んでる理由はわかった。真珠を盗んで、その罰として海に沈められたから』 「…そうだよ。だから化けて出てやったの」 『逆よ。大人は貴女を救おうとした』 乗っ取られていても、幽霊がぽかんとしているのはわかった。

2014-11-14 23:29:54
ネッシー @0ZaALZilA

「何、それ」 『箱の底面に穴が開いてたって言ってたでしょう?でも、中の貴女はまるで濡れてなかった』 「どういうこと…?」 『こう考えればいい。箱は二重底になってて、下に空気が入っていた。何かの衝撃で穴が開いたんでしょうね』 「お姉さん、何が言いたいの?」

2014-11-14 23:30:16
ネッシー @0ZaALZilA

『そうすると、砂袋が入っていた理由もつく。女の子は軽過ぎて安定しないから、重さの調整として入れたわけ。そもそも、真珠泥棒の見せしめなら、箱に詰めるなんて効率が悪いわ』 「わかんない、お姉さんの言ってることわかんないよ!」

2014-11-14 23:31:13
ネッシー @0ZaALZilA

『聞きなさい。もともと、ここの宝探しは過去に難破船が多かったって情報があったから始めたことなの。実際、海が荒れやすくて、航海には危険が伴った』 「…」 『決定的なのは、箱が開かなかった理由よ。内側から鍵を掛ける構造だったから』 重苦しい沈黙。それでも、突きつけなければならない。

2014-11-14 23:31:43
ネッシー @0ZaALZilA

『貴女は避難民として海に放られたの。あの箱は浮く構造だった――言わば救命ボートよ』 「そんな…私は真珠を盗んだのに…どうして」 『大人が気付かなかったとか、そういうことじゃない。貴女は…船員の希望だったからよ』 ☆ 幽霊の記憶が蘇る。幽霊を通して、私にもその記憶が流れ込んでくる。

2014-11-14 23:32:29
ネッシー @0ZaALZilA

密航者として、船に忍び込み、真珠を懐に忍ばせる少女。 雷雨、強風。 海が荒れ、唸り、全てを呑みこまんとうねる。 船員を目撃する。 足に箱がのしかかり、重傷を負った船員。 姿を見られてしまったと、慌てて、真珠を呑みこんだ。 船員は、最後の力を振り絞って。

2014-11-14 23:33:00
ネッシー @0ZaALZilA

無理矢理、怯える少女を箱に詰めた。 「お前だけでも、生き残れ」と、言い残し。 ☆ 「う…嘘だよ…」 『女の子を見捨てるほど、悪い奴ばっかりじゃないのよ、世の中は』 「じゃあ、あたし、何のために…」 『全て…誤解だったのよ』 「う…うぅっ」

2014-11-14 23:34:03