#艦隊コレクター吹雪ちゃん【艦これSS】

艦隊これくしょんアニメ化に因んで、つい出来心でやらかしてしまいました。 @本作は二次創作であり、原作およびアニメ版の設定・構成などとは一切関係ございません。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん
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紅吏珠名 @chrishna_c2

弾みで倒れこんだ私は慌ててめくれあがったスカートの裾を正す。 やだ、私の地味な柄の下着、見られちゃったかな。恥ずかしい……なんて思いながら、私は相手の方にちらりと視線を向けた。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:21:41
紅吏珠名 @chrishna_c2

……あれ? 見間違いかな? そこには、漫画やアニメで出てくる妖精さんみたいな人影が立っているような気がする。 それが一人や二人なんてものじゃなくて、何人も。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:24:11
紅吏珠名 @chrishna_c2

「あらあら大変。病院に連れて行ってあげなきゃ。ささ、はやく車に乗って!」 人懐っこそうな口ぶりの妖精たちの群れが、そう言って私のほうに一斉に駆け寄ってくると、変な薬品がしみ込んだ布を口元にあてられ、わけがわからないまま、私は意識を手放したのでした。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:25:47
紅吏珠名 @chrishna_c2

「あ、あれ、なにここ……?」 次に私が目を覚ましたのは、ギシギシと音の鳴る、古びたパイプベッドの上だった。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:30:12
紅吏珠名 @chrishna_c2

「やぁ初めまして。君はあれから3日間くらい眠っていたんだよ」 ……誰だろう? ぼーっとした頭で、そんなことを考える。 「ごめんね。薬の量は考えて使えって指示しておいたのに。あの子達って加減を知らないからさ。ハハハ」 全然謝る気の無さそうな軽い話し方。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:31:46
紅吏珠名 @chrishna_c2

「少々手荒なやり方になってしまったことは謝罪するよ。現状この場所のことを内調やCIAあたりに嗅ぎつけられると厄介なんだ」 え? なになに。ここなんかヤバいところなの? #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:33:13
紅吏珠名 @chrishna_c2

「ここは鎮守府。奴らから地上を守るための、最後の絶対防衛線だ」 「あ、それはご親切にどうも」 寝ぼけ半分の私は、そんな間の抜けた返事を返すしかなかった。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:38:08
紅吏珠名 @chrishna_c2

「初めましての挨拶を交わしたばかりで恐縮だけど。単刀直入にお願いがある」 白い肌に真っ赤な色をした、つぶらな小動物めいた目。 そっと手を伸ばして。 「僕と契約して、艦娘になってよ!」 目を覚ましたそこには、テレビで見たような謎の白い物体がいました。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:39:59
紅吏珠名 @chrishna_c2

「僕の名前はキュ、そうだな……いまは親しみを籠めて提督と呼んでくれると嬉しいな。君がこれから練度を高め、正式に契約を結ばせてもらうその時がやってきたなら、僕の本当の名を明かそう」 よくわからない謎の白い物体は、ただ提督とだけ自己紹介してきたのだった。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:40:57
紅吏珠名 @chrishna_c2

うさんくさい。 それが、私がこの提督さんに対して最初に抱いた嘘偽りのない気持ちのすべてでした。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:42:20
紅吏珠名 @chrishna_c2

「その艦娘になったら、私をお家に帰してくれるの?」 「そうだね。僕のお願いを聞いてくれたら、すぐにでもお家に帰してあげるよ」 「お願い?」 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:44:26
紅吏珠名 @chrishna_c2

帰りたい。もうすぐにでもこんな変な所から帰りたい。 でも抱きしめたいくらい可愛らしいこの物体から話を聞いてしまったら、そのままズルズルなし崩し的に深みにはまって後戻りできなくなるような気がして。 そんな葛藤の中で、私はおそるおそる訊ねてみた。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:45:34
紅吏珠名 @chrishna_c2

「君には艦娘として、僕たちと一緒に戦ってほしいんだ」 かんむす? それは初めて聞いたような。でもいつか夢の中で聞いた、ような、そんな不思議な言葉だった。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:46:54
紅吏珠名 @chrishna_c2

「なに。リスクの少ない仕事さ。艦娘の能力に目覚めてフルパワー全開になったからといって、身体能力の一部をカミサマの供物に差し出せなんてことにはならないし、うまく任務を全うできれば五体満足でお家に帰ることだってできるはず」 「そうなんだ。よかった」 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:48:18
紅吏珠名 @chrishna_c2

「ただ記憶の一部が失われるだけだよ」 「全然よくないじゃん!」 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:48:54
紅吏珠名 @chrishna_c2

「大丈夫。仮に君自身が頑なに拒否しようと全部イエスだから。手筈はすべて整っている」 なにか恐ろしいことを口走ってるよこの物体。 どうせ変な夢を見てるだけだろうし。夢から覚めたら全部元通り。なにもかもなかったことになって、私はいつも通りの日常に戻れる。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:51:53
紅吏珠名 @chrishna_c2

こんな変な夢から覚めたかったから、私は大声で叫んでみることにする。 「そんなことより私。早く学校に行かないと大遅刻だよ!」 「それについても大丈夫だ。君が通う学校にはすでに転校手続きを済ませてある」 「手回し早ッッ!」 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:52:45
紅吏珠名 @chrishna_c2

最低。最低すぎるわ。この提督って名乗る謎の白い物体。 でもどうせ夢の中での話なんだ。目が覚めたら全部元通りだから。 そんな軽い気持ちで、私は提督からの申し出にしぶしぶOKと答えることにした。 ……後々このことを思い返してみたら、あぁ私ってホントバカ。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:53:52
紅吏珠名 @chrishna_c2

> 個体名:xxxx AGE:xx > 艦種適性:駆逐艦・吹雪型の適性ありと認む > > ――ヒラガシステム起動。流体ナノマシンの起動及び当該個体への注入開始。 > 体内におけるナノマシンの正常な循環を確認。身体機能の各数値に異常なし。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:57:22
紅吏珠名 @chrishna_c2

> 管理サーバーより『吹雪型一番艦・吹雪』のダウンロードを開始。 > 艦娘システム、インストール作業安定継続中。 > ……。 > 境界線誤差修正0.00001%未満を確認。 > フィジカル、メンタルの状態、ともに極めて良好を維持。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:58:37
紅吏珠名 @chrishna_c2

> ……。 > システム、オールクリア。 > 駆逐艦・吹雪。インストールは正常に完了しました。 > 以後、当該個体を『吹雪』と呼称。 > > 引き続き、『吹雪』のエージング作業に移行します。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-06 23:59:29
紅吏珠名 @chrishna_c2

「おめでとう。君には吹雪型としての適性が認められたようだ」 「それはどうも」 なんか頭が重くてクラクラする。頭の中に変な物を無理矢理入れられたような。 「空っぽの脳みそに大量の情報を詰めこんだからだね。大丈夫慣れればすぐおさまる」 「余計なお世話よ」 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-07 00:01:43
紅吏珠名 @chrishna_c2

「じゃあ順を追って説明しよう。君の頭痛の正体は、艤装をインストールしたことによるものだ。吹雪型ネームシップ。これが君の持つ適性。これから君が名乗ることになる君自身の名前でもある。かつて実在した軍艦の概念と君たち人類でいう“魂”を詰めこませてもらった」 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-07 00:03:11
紅吏珠名 @chrishna_c2

「大丈夫。君がこれから艦娘としての自覚を心がけ、訓練と実戦によって練度を高めていけば、自然に馴染んでいくようにできてる。これは元々そういうもの。いわば魔法の力のようなものだ」 「魔法の力……?」 そう言われると、どこかで安心できてしまう私がいた。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-07 00:04:27
紅吏珠名 @chrishna_c2

「いまので不思議と安心できたんじゃないかな。普遍的な呼称をつけてそう呼んでみせることで、君たち人類は未知の領域から新たな概念を獲得する生き物なんだろう?」 もうやだ、帰りたい。 それが私の、なにひとつ嘘偽りのない本音だった。 #艦隊コレクター吹雪ちゃん

2015-01-07 00:05:25
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