第1回東方慶庵郷140字ss大会

満足ひろpon @mnzk_pon

ふわり、と頬を撫でる風だけが彼女を認めていた。 何者にもなれなかった少女は、何者にも気づかれることなく、 独り、身を漂わせる。 閉ざした瞳で閉ざした心で、視えるものは感じるものは きっとそれは幻でーー それでも、私は、瞳の前に広がる醜くも美しい世界に恋していたい、とそう願うのだ。

白愁 @yuyachyan

柔らかな月、灯篭の明かり。 筆が和紙を擦る音だけが静かに室内に響く。 時に悲しみを。時に楽しさを。そして、貴女と過ごせた日々への感謝を。 筆は思いを載せて言葉を紡ぐ。 私が貴女の本に残した言葉は、きっと貴女と共に。 私が消えても、言葉に私は居るでしょう。 阿礼の娘の、愛した人へ。

白愁 @yuyachyan

#k_an_140 あきくちに 閉じる定めと 紅牡丹 友を恋しく 啼くな鈴虫 あきくち→空き口、秋口 牡丹→夏季語、阿求 鈴虫→秋季語、小鈴