- love_kamome
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《あの子のとなり》side-B 10 広い公園の桜は満開で、人でいっぱいで。 こんなに人がたくさん集まるとこにフツーにいて大丈夫なのかな。 今のとこ騒ぎになってないみたいだけど...。 あ。 だからか。
2015-01-20 22:31:23《あの子のとなり》side-B 11 ほんとはふたりでお花見したいけど、そんなの絶対できないからパーティにしたのか。 木は森に隠せ。 みたいな? なぁんだ。 ちょっと真剣に心配しちゃったじゃん。
2015-01-20 22:31:31《あの子のとなり》side-B 12 コンビニで、ビールの6缶パックとチューハイと、女の子用のカクテルと、あ、お水もあった方がいいのかな、アルコール分解にはグレープフルーツジュースが...とかやってたら結構な荷物になっちゃって。
2015-01-20 22:31:38《あの子のとなり》side-B 13 両手に重い袋を持ってフラフラ歩いてると、右手だけ急に軽くなって、見上げるとヨコヤマさんだった。 「大丈夫?」 「え、あ、すいません」 びっくりして固まってる私をよそに、ヨコヤマさんは私が左手に持ってた袋までぶんどると、スタスタ歩く。
2015-01-20 22:31:50《あの子のとなり》side-B 14 「あ...ありがとうございます」 慌てて追いかける。 「こんなん誰か男にやらせたらええのに。気ぃきかんヤツらやなぁ」 「みんな酔ってますから。しょーがないです」
2015-01-20 22:31:58《あの子のとなり》side-B 15 ヨコヤマさんは黒ぶちのメガネをかけてて、そのせいか誰にも声をかけられない。 「あんた、あいつの親友なんやろ?」 「...はい」 「聞きたいこと、あんねんけど」
2015-01-20 22:32:08《あの子のとなり》side-B 16 ヨコヤマさんはなんだか恥ずかしそうに、プレゼント何がええと思う?って言った。 もうすぐ付き合って1年が経つからって。 記念日...とか、ちゃんとやるんだ。 なんかかわいいな。 「あー、そーですねぇ...」
2015-01-21 22:30:22《あの子のとなり》side-B 17 こないだ、なんかどっかのブランドのバッグが欲しいとか言ってたような...。 曖昧な記憶を手繰り寄せてると、ヨコヤマさんが言う。 「なんか思い当たるもんあったら教えてくれへん?」 ヨコヤマさんは荷物を地面に置いてポケットをゴソゴソする。
2015-01-21 22:30:34《あの子のとなり》side-B 18 「あー、ケータイ向こう置いて来てもーた」 連絡先教えてもらえへんかなと思ってんけど。 「あ...じゃあ」 バッグから手帳を出して、メモをちぎって、名前と番号とLINEのIDを走り書きして渡した。
2015-01-21 22:30:44《あの子のとなり》side-B 19 「ありがとう。後で連絡するわ」 また荷物を持って歩き出す。 「あれやろ?幼馴染みたいなやつ?」 「あ...えぇ、まあ」 「あいつ、もてたやろ」 ええ、そりゃあもう。
2015-01-21 22:30:54《あの子のとなり》side-B 20 口から出そうになったのを、飲み込んだ。 ヨコヤマさんは降ってくる桜の花びらを首を振ってよけながら、歩く。 春だなぁ。 ぼんやり思いながら、突然思い出した。 昔のこと。
2015-01-21 22:31:02《あの子のとなり》side-B 21 16歳のとき、すごく好きなひとができた。 となりのクラスの、背が高くてメガネかけてて、物静かな彼。 でも、彼が好きだったのはあの子。 まあ、そんなのはいつものことで、またか、としか思わなかったけど。
2015-01-22 22:36:40《あの子のとなり》side-B 22 それでも私は、あの子にこっそり伝えた。 彼が好きだって。 いま思えば、牽制...のつもりだったのかもしれない。 あの子は「教えてくれてありがとう。応援する!」って言ってくれた。
2015-01-22 22:36:51《あの子のとなり》side-B 23 しばらく経った頃。 ちょうど今日みたいな春の日の、土曜日の午後。 放課後の教室で、ブラスバンドの音階練習が響いてたの、よく覚えてる。 「あのね、多分、すぐわかっちゃうと思うから、言うね」
2015-01-22 22:36:58《あの子のとなり》side-B 24 そう言ってあの子は教えてくれた。 彼に告白されたって。 「あ、でも安心して。ちゃんと断ったから。親友の好きなひととは付き合えないって」 .........。 「私なんかより、もっとすご〜くいい子だからって言っといたから」
2015-01-22 22:37:06《あの子のとなり》side-B 25 ...え...。 ねぇ。 ちょっと...待って? それって...私の気持ち、彼はもう知ってるってこと...? 「ねー、クレープ食べて帰ろ?」 動揺してる私をよそに、あの子は楽しそうに、確かそう言ったんだった。
2015-01-22 22:37:18《あの子のとなり》side-B 26 「どうかしたん?」 ヨコヤマさんの声が聞こえてハッとする。 「これ、結構したんちゃうの。ちゃんと請求したほうがええで」 いいひとなんだなぁ。 そんなことまで心配してくれるなんて。
2015-01-22 22:37:26《あの子のとなり》side-B 27 そんなひとにあの子は愛されてるんだ。 いいなぁ...。 みんなの輪の中に戻ったヨコヤマさんをぼんやり眺めてそんなことを思ってると、スマホが震えて飛び上がるほど驚いた。 ーよこやまです それだけのメッセージが、画面の真ん中にあったから。
2015-01-22 22:37:39《あの子のとなり》side-B 28 ヨコヤマさんの隣にはにこにこ笑ってるあの子がいる。 どきっとした。 ヨコヤマさんは目が合うと唇を片方だけ上げて、ニヤっと笑って軽く会釈する。
2015-01-22 22:37:49《あの子のとなり》side-B 29 なんだかいけないことをしてるみたいで...。 なにも始まってないのに。 ............。 始まってない? いったい何が? 私...どうかしてる。
2015-01-22 22:37:56《あの子のとなり》side-B 30 何のためらいもなく堂々と人生の主役を張れるひとっていうのがいて、あの子はそういうひとだと思う。 子どもの頃からクラスでいちばんかわいいのはあの子だったし、スポーツも勉強も良くできたし、大人はみんなあの子を見て目を細めた。
2015-01-23 22:17:38《あの子のとなり》side-B 31 ものごとはだいたい自分の思った通り進む。 特別やラッキーは、当たり前。 そんな無邪気で悪気のない傲慢さは、ポジティブっていう魅力になる。 私は気づいたときにはもう、あの子に告白する男の子のスケジュールを調整するハメになってた。
2015-01-23 22:17:47《あの子のとなり》side-B 32 「今日の放課後は無理じゃないかなぁ。お昼休みか明日の朝なら平気だと思う」 「お前...マネージャーかよ」 私だって、別にブスじゃない。と思う。 告白されたことだってあるし、彼氏だって普通にいた。
2015-01-23 22:17:55《あの子のとなり》side-B 33 でも、そーゆー問題じゃない。 私の人生のはずなのにな。 いつも脇役だ、私。 あの子は高校に入るとティーン雑誌の読モを始めて、ますます垢抜けた。 だから、そーゆー誘いもあったみたいだけど、芸能人になる気はさらさらなくて。
2015-01-23 22:18:15《あの子のとなり》side-B 34 「あんな不安定な職業、絶対に嫌。今くらいの感じがいちばん楽しいし」 あの子は私にだけ、こっそりそんな本音を話してくれて、私はきっと優越感を感じてたんだと思う。 私は、みんなが憧れるこの子の親友なんだって。
2015-01-23 22:18:22