記憶が首を絞める話。

イフ@文字喰い @20wor

キト「……どう思う？」 ヤシ「なにが」 キト「…………。ロジがいなくなって、今更、思い出したんだよ。ここに来る、前のこと。キトのこと。ロジのこと。」 ヤシ「おっさんが死んだから思い出したんやろ？」 キト「…………」 #廃都東都

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キト「どう……思う……？」 ヤシ「俺に聞くくらいやったらやめてまい」 キト「……つぐみみたいなことを言う」 ヤシ「俺はキトちゃんがロジのおっさんと別れてから、何ひとつキトちゃんのことは応援してないで」 キト「……うん」 #廃都東都

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ヤシ「俺になんて言ってほしいん」 キト「…………」 ヤシ「慰めやったら彼氏にしてもらいーや」 キト「キトは……どうしてこうなったんだろうね……」 ヤシ「…………」 キト「間違えたのかな、キトは」 #廃都東都

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ヤシ「……慰めへんで、俺は。叱りもせん」 キト「……うん」 ヤシ「死人は生き返らん。時間は巻き戻らん。言うたってしゃーないことや」 キト「……うん」 ヤシ「…………。そんな顔すんなや」 #廃都東都

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キト「キトは……ここに来なければ……、一生ロジと添い遂げたのかもしれない」 ヤシ「せやな」 キト「結婚して、子供が出来て」 ヤシ「うん」 キト「……キトは、……私は、ロジを捨てたんだ」 ヤシ「……そうやで」 #廃都東都

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ヤシ「…………。後悔、してるんか」 キト「……何度やり直せるとしても、キトは今と同じ道を辿るよ。キトはティートが好きなの」 ヤシ「……自分に言い聞かせるんはええけどな」 キト「…………」 ヤシ「キトちゃんのそれが『病気』やとして、しょうがないことやとして、それで？」 #廃都東都

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ヤシ「だからって、許されると思う？」 キト「…………」 ヤシ「俺やったらいい気分はせんけどなあ。自分の恋人が、他の男とこないなところで逢瀬」 キト「…………」 ヤシ「しかもその男とは、過去に肉体関係がありました、って」 キト「…………」 #廃都東都

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ヤシ「俺その相手のことはよう知らんけど。……よう、そんなんでそいつのこと好きとか言うよな」 キト「好きだよ。嘘じゃない」 ヤシ「好きなのは嘘じゃない。でも他の男としたいのも嘘じゃない。そういうこと？」 キト「そんな言い方……」 ヤシ「事実やろ」 #廃都東都

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キト「キトは……だって……」 ヤシ「『今』が欲しいんやろ？　せやったらうじうじ言いなや。好きなことしたらええやん。嫌になったら別れればいいし」 キト「！」 ヤシ「殴るか？　ええよ、その手で、殴り。気が済むんなら、どうぞ好きなだけ」 #廃都東都

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キト「…………」 ヤシ「…………」 キト「……じゃあ、どうすればいいの……」 ヤシ「…………。俺に聞くなや」 キト「ヤシなら、どうする？」 ヤシ「……、……恋人と、ちゃんと話し合う」 キト「…………」 #廃都東都

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キト「……別れ話、ってこと？」 ヤシ「……その思考回路が既に……。まあ、好きにしたらええけど」 キト「キト、別れたくないよ。嫌われたく、ない」 ヤシ「じゃあそれも相手に言い」 キト「…………」 ヤシ「……キトちゃんって」 #廃都東都

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キト「……なに？」 ヤシ「…………。実は全然明るくないよな。じめじめしてる」 キト「ここに来る前はずっとそうだったよ」 ヤシ「ふうん」 キト「……話し合う、ね」 #廃都東都