大倉の恋煩い（丸山さんと彼女シリーズ3）

∞すみれ∞ @magic88word

1 今日は久しぶりに早よ終われそう… そうメールしたら 『じゃあ待ってるね』って ご飯行って軽く飲みにも行けるかも めっちゃ頑張って仕事片付けて 彼女のいるフロアへ急ぐ "あっはっはっは〜！" 響く笑い声 …大倉…？ うちの部の大倉やん 彼女の机に腰かけて笑ろてる

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2 "〇〇ちゃんもカラオケ行こうやー また〇〇ちゃんのアイコ聴きたいわ" 『今日は用事があるから無理』 "えーっ！ひょっとしてデート⁈" 『そんなんじゃないよ』 "あやしーなぁ…彼氏できたん？" 『違うよー』 なんやねんこのラリー 聞いてられへん だいたいなんで大倉…

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3 営業部の大倉…俺の2コ下 あいつも関西出身やし 仕事もまあまあできて 結構可愛がってる後輩 社内恋愛は隠すのがルールやって 彼女が言うから 俺らが付き合ってんのは △△さんしか知らんねん 俺はみんなに知らせたいくらいやけど もうこいつ早よどっか行け ウロウロする俺…

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4 "あれ⁈先輩〜お疲れっす！ 今日内勤ですかー？" 「おー今から帰るとこや」 "先輩もカラオケ行きません⁈ 同期のやつらと行くんっすけどー あっ、この子同期の〇〇ちゃん 総務の…可愛いでしょ！" 知ってるし… 「俺ちょっと先約があんねん おまえ今日の報告書あげて帰れよ」

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5 "あっ！忘れてましたわ ちょっと書いてきます！ ほな〇〇ちゃん 気ぃ向いたらおいでや〜" やっと行きよった、おじゃま虫… 彼女に目配せして先に会社出る いつもんとこでな…♡ ちょっと離れた喫茶店で待っとく 遅いな…メール打ちかけたとき 彼女が店に駆け込んできた

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6 『ごめんなさい…ハァハァ』 「ええよ走ってきたん？」 『大倉くんにつかまっちゃって』 「ちっ、またか〜 あいついっつもああなんか？ 君に気ぃあるんやろ」 『へ？まさか〜』 「まさか〜ってわかるやろ ヘラヘラしてるから 勘違いされんねん」 はっと思った時には遅かった

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7 口をぎゅっと結んで下向く彼女 わゎ…ついいらんこと言うてもた 腹減ってイラついとってん 「ごめん…」 いちおー謝ってご飯行ったけど めっちゃ気まずいし 結局一軒だけで帰るって言うし 送ってったけど チューもさしてもらわれへんかった ラブラブな夜になるはずやったのに…

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8 次の日、大倉と同行する こいつのせいで昨日… 助手席でふて寝する "はあ〜" ランチに入った定食屋で 大げさに溜息つく大倉 「なんやねん」 "食欲ないんすよ、恋煩い…" 「はー？」 "昨日おったでしょ、総務の〇〇さん 全くなびいてくれへんくて… 自信なくすわー"

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9 「彼氏おるからやろ」 "今おらんらしいんです" 「どこ情報それ」 "△△さんが言うてたんっす" またあの子か…引っかき回すよな〜 "ずっとよう言わんかったんっすけど もう言うてもーたろかな？" あかんよ、言うても振られるで… ここでホンマのこと 白状したらよかった

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10 何日か後、外回りから帰ったら 大倉がデスクで分かり易くへこんでる 「なんや、どしてん？」 "もーあかん、嫌われました" 「え？」 "無理矢理…キスしてしもて… 〇〇さんに…殴られました" 「はあぁ〜⁈」 pic.twitter.com/f9gYui5XUp

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11 あ〜今日もやる気出えへんわぁ… 報告書も伝票も山ほどたまってる 俺としたことが恋煩いやて 喫煙室でぼんやり考える ○○ちゃん… 同期の子って友達みたいで 最初はなんも思わんかった かわいいけど そんな目立つタイプでもないし 俺も女の子に不自由してなかった

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12 あれはもう1年ぐらい前… 外回りの帰り 会社のそばのコンビニ寄ったら 昼休み中の彼女がおって いそいそ裏口の方へ回って行った なにしてんの？思て着いて行ったら 猫にエサやっとって ○○ちゃん！て声かけたら ビクッーなって イタズラして見つかった こどもみたいな顔で

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13 "野良猫？" 『うん…ここに捨てられてて 店長さんに無理言って 置いてもらってる』 コンビニのバイトの子や 常連客に可愛がられて ここを住処にしてるらしい "ぷっそれにしてもコイツでぶ…" 『最初はこーんな小さかったんだよ』 両手で円を作って見せる 笑顔にやられた

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14 もう1年も片想いかー 信じられへん… そのとき彼女が通りかかる 慌てて飛び出したら 腕にいっぱい書類積み上げてる "どこ持って行くん、手伝うで" 『え、いいのー？上の会議室』 俺に書類手渡しながら 肩でエレベーターのボタン 押してるから ずっと手触れたまま…

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15 手ぐらいでドキドキしてるて 俺中学生みたいやな "机も並べよか？" 『うん、今日はついてるな〜』 ほんまや… 思いもかけずふたりきりなれて 神様がコクれって言うてるんかも 彼女が色々話してんのもうわの空… 切り出すタイミングがわからん わー、なんて言うたらええ？

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16 『大倉くんどう思うー？聞いてる？』 え？ 急に首かしげてのぞき込んでくるから たまらんくなってキスしてもうた "…好きや…" 両肩をつかんで唇を押しつけた 嫌がる頬を両手ではさんで続けたら グーで思っ切り殴られた… 『か、彼氏がいるの！』 走って出て行く後ろ姿…

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17 "殴られて、彼氏おるて もうダブルパンチで… 立ち直れません…" 「おい、それいつの話や」 "もう1時間ぐらい前です…" 丸山先輩がどっかに電話をかける 「…でーへん…」 「…大倉…あいつの彼氏て俺やねん」 "は？…えー⁈"

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18 "な、なんて?!" 「俺ら付き合うてんねん」 "マジっすか？ほななんで…" 「悪かった…早よ言うたらよかった」 "ほんまや！ひどいですやん俺…！" 「ごめんて！せやけど… キスしたとかほんまにおまえは！」 "知らんかったんやもん！" 先輩にまで殴られそうな勢い

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19 「とにかく心配やから探してくる」 先輩が慌てて出て行く はーもうあかん… "大倉くんどうしたの？暗ーい" △△ちゃんか、おまえが言うなや "ねえ、〇〇知らない？" "え、帰ったんちゃうの？" "私物置いたままだもん 会議の準備しに行ったきり 見当たらないの"

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20 帰ってないて、社内におるんか？ どこおんねん… 俺の電話なんか出るわけないしな… あ…！ふと思いついて走った… やっぱり… "風邪ひくでー" 『あ…』 "先輩、心配して探してんで" 『…うん』 "俺知らんかったから言うてもうた" 『…ん、メール入ってた』

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21 "さっきはホンマごめん…" 『私も…痛かった？」 でぶネコを抱っこして立ち上がる "ええパンチやったわ〜KOや" 『ごめんなさい』 "謝らんといてや…俺いきなりあんな …サイテーなことして 先輩探してるからもう帰り…" あー今だけでええから あのネコになりたいな

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22 "な、こいつのこと先輩知らんの？" 『そういえば言ったことない…かも』 "あの人、動物大好きやで ペットOKのとこ 引っ越してくれるかもしれんぐらい" 『…ありがと…私…帰るね』 俺なんか1年も前から知ってたし… 早よ気持ち伝えてたら違ったんかな

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23 "無理矢理キスしてしまいました…" なんやて⁈ 全身の血が逆流する感じ 俺のせいや 大倉の気持ち知ってたのに ほんまのこと言えへんくて 彼女も大倉もふたりとも傷つけた とにかく彼女が気にかかる 電話にも出てくれへん どこ行った？ 情けないけど心当たりもない

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24 社内を探して回ったら もう行くとこがない 家に行って待っとこか 「大倉から聞いた、どこにおんの？」 メールも既読になるだけ なんでキスすんねん なんで他のやつにキスされてんねん 俺かてまだキスどまりやのに… イラついてるんは嫉妬のせいで 自分にいちばん腹が立つ

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25 部屋の前で丸山さんが待ってた 『ごめんなさい』 「なんで謝んの、中入ってええ？」 『…はい』 部屋に入るなり 後ろから抱きしめられた 『ちょっ…待っ…』 「待たへん…たまらんかってん… 探してる間ずっと… 電話出てくれへんし」 『大倉くん殴っちゃって…それで』