宮廷歌手小森輝彦さんのツイートまとめ第7回「ガブリエル・フェルツ氏との思い出」

日本人初ドイツ宮廷歌手、小森輝彦さんのツイートまとめです。
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小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

仙台フィルの2015年度定期演奏会のラインナップが発表になっているようです。 bit.ly/1HB0Fwl 僕は2016年1月にメンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」でお世話になります。楽しみです。 あと、僕的に注目は11月の大地の歌です。フェルツ日本に初上陸!

2015-03-11 20:37:48
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

ガブリエル・フェルツは僕のドイツ劇場生活での最初のGMD(音楽総監督)。ドン・ジョヴァンニに始まり、死の都、オランダ人、フィレンツェの悲劇、そして「指輪」のハイライト・・・共演した作品は枚挙に暇がありません。 ガブリエルを日本に呼んでくれた仙台フィルには本当に感謝です。

2015-03-11 20:42:05
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

ミュンヘンの夏の風物詩であるオペラフィスティヴァルにもオランダ人で登場。現ポストはドルトムントの劇場GMDですが、ヨーロッパ中の劇場、オケで振っています。先日、新国立劇場のオランダ人を歌ったトーマス=ヨハネス・マイヤー氏もガブリエルのことは絶賛していました。

2015-03-11 20:44:21
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

僕がいまでも良く思い出すのは、彼のピットでの、舞台に対してオープンな様子と眼差しです。舞台での歌手の体調や呼吸に合わせて微妙に音楽の流れを変えていく。 僕が体調不良だと知るとさりげなくテンポを上げて喉への負担を軽減してくれた、なんてことは何度もあった。

2015-03-11 20:46:20
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

こんなこと緻密にコントロールされた日本の劇場ではあまりないけど、連絡が行き届かなくてガブリエルが開演前のアナウンスで僕の不調を知ったことがあった。舞台監督に「好きなテンポで歌え」と伝言を残してピットへ降りていく彼。それでも彼の音楽はその事情の犠牲にならないのです。これが不思議。

2015-03-11 20:48:29
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

ガブリエルはテンポを上げた方が喉への負担減と良く知っているので、早めにオケを進める。 でも僕も頑固なところがあって不調でも速くしたくない箇所があると、しばらくのせめぎ合いの後、ガブリエルの「じゃあいいよ、それでも」と肩をすくめる仕草が入り、いつものテンポに戻る、なんてことも。

2015-03-11 20:51:40
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

あー懐かしいなぁ。色々思い出す。ドン・ジョヴァンニのプレミエで。あれは本当に僕が悪かったのだけど、ずっと2幕頭の3重唱が歌いにくかったのだった。音楽的にちょっと複雑なところで(レポレッロに真似をさせつつ歌うところ)斜め後ろのエルヴィーラに向けて歌う必要があり、棒が見にくかった

2015-03-11 20:54:20
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

で、悩んだあげくGP終了後にガブリエルに、「3重唱を本番で6つ振りにしてもらえないだろうか」と頼んだ。彼も考え込んで「それは本当にGP前に言うべきだったね」と言ったが承諾してくれて、オケ全員に行き渡るように各プルトに「15番の3重唱は6つ振りに変更」とメモを置いてくれた。

2015-03-11 20:57:30
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

彼はそんなことする必要は全然無かったわけです。歌手が振り方を変えてくれってGPの後に言い出して。「そんなの今更無理」と拒絶すれば済んだはず。これはガブリエルにとってGMDとして最初のプレミエで批評家は手ぐすね引いて待っている。歌手のわがままのためにリスクを冒す必要は無いはず。

2015-03-11 20:58:51
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

でも、彼はそれをやってくれた。そして僕はプレミエで、斜め後ろのエルヴィーラにかける芝居をしながらもオケとずれる心配をせずに3重唱を歌えた。僕はいまだにこの事で彼に感謝しているし、彼のプロ根性を見せつけられた瞬間を心に刻んでいる。僕もこういう音楽家でありたい、と思った。

2015-03-11 21:00:54
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

彼がシュトゥットガルトフィルハーモニーの音楽監督に就任してゲラの劇場から去ったとき、劇場のオケは心から彼を惜しんだ。「任期を終えた時に惜しまれて去る指揮者を初めて見る」と同僚が言っていた。 だって、彼が振る定期演奏会は常にブラボーの嵐だったし、誰よりオケがそれを楽しんでいたのだ

2015-03-11 21:04:08